第33話 護衛任務
「おっか~をこ~え~いこ~うよ~。
シューッ!←(吹けてない)
シューッ!←(吹けてない)」
「…新しい
ナバルのキツいツッコミを無視してオレたちは輸送車の護衛をしていた。
…
数時間前に
「これが輸送車の獣車か!スゲェなぁ!」
オレたちの目の前には銀色に輝く立派な獣車が3台停まっている。
「あなた方が納品してくれたサソリが大変助かりましたよ」
ギルマスがご機嫌で言ってきた。
「オレらも高額で買い取ってもらえたからなぁ」
そんな話をしていると同じ任務に就く冒険者のパーティが集まってきた。
今日、オレたちは軍の補給物資の運搬警護の依頼を受けた。集まった冒険者と打ち合わせを終えた後に早速出発した。
…
……
………
「はぁっ!はぁっ!あんな化け物が居るなんて!」
俺は今、魔の森を死に物狂いで駆け出している。そもそもなんでこんな所にいるんだったか…
…
「なあ、アレじゃね?」
「ホントだ。前に来たときはショボい村だったのに」
「ショボいとか言うんじゃねぇよ!俺の故郷だっつってんだろ!」
「「…しょっぱい村だったのに」」
「
俺は昔この村に住んでいた。ほんとに何にもないんだけどな。
「おいおい、お約束の可愛い《幼馴染み》とかいねぇの?」
「…
「「使えねー」」
なんでこんなバカ野郎共を連れてきたんだろう。
「そういやナバルのヤツはまだ居るんかねぇ」
ガキの頃によく遊んだ悪ガキ仲間だ。っつってもアイツ確か…
妹の面倒をよくみてたなぁ
「そういやナナイちゃんはおっきくなんたんかなぁ」
俺がそう
「女か?美人か?」
「うるせぇよ!別れた時はまだ相手3歳だ」
「「使えねー」」
だんだんウザくなってきたな。
親父のやつが「ベルク領で新しい村の開拓があるらしい!今度は俺たち畑が持てるぞ!」なんて息巻いて
親父たちは別れの酒盛りやったらしいが。次の
そんなことを思い出しながら宿を探している時だった。変なガキに呼び止められて
「
そう言ってきた。
「なあテリオ、ちゃさい子供ならあがらずに喋れんじゃねぇか?」
爆笑しながらバカ2が俺の肩を叩きながら言ってくる。
「うるせぇよ!マリーさんの前だけだ!緊張したのは!」
くっそ!コイツらまだ酒場のマリーさんの事を持ち出すか!
何があったかなんて思い出したくねぇ。
「ちょっと
少女は苛立ちながら俺たちを睨み付ける。が、すぐに薄気味悪い笑みを浮かべて
「でもそれくらいがちょうど良いかも」
と言った。そして
「綺麗でしょう?これには魔物避けの効果が符呪されてますのよ」
そう言って俺たちの前を照らした。
…
…
あれ?なんか頭が
「フフフッ…あの森が見えるかしら。
あそこには遺跡がありましてね。そこには素敵な財宝があるかもしれませんのよ。貴方たち…財宝がほしいのよね?」
…財宝かぁ…良いなぁ…。
「…良いなぁ」
「お宝…良いよなぁ」
「ではこのランタンを持っていきなさい。さあ」
俺はランタンを受けとると森に入った。魔の森に入っちまったんだ。
森の中で魔物に会うことはなかった。
しばらく歩くと遺跡が見えた。あの少女が言ってた遺跡だ。
遺跡に入るとランタンからどす黒いモヤが出始めた。それと同時に俺たちは正気になった。
「…あれ?ここ
「確かガキがやって来て…」
二人は思い出そうとしているが…
「ヤバイ!お前ら、ここから出るぞ!」
「なんだよ…ここ」
「ここは魔の森だ!」
「「!!!」」
一瞬、頭の中が真っ白になるがこんなところでモタモタしてたらそれこそ殺してくれって言ってるようなものだ。
町に向かって歩こうとしたとき…
『グヮァァァァァァ!!』
俺たちの後ろには人の3倍はあろうかという
一瞬で冷えつく思考。
無条件で震える手足。
(((殺される!!)))
そこからはただひたすら逃げた。
そして、気がつけば俺は一人になってた。
(アイツらどこにいった?)
不安になって振り返ると熊が
「あ、あ、あぁぁぁぁ…」
…
……
『ぎゃぁぁぁ!』
人の悲鳴だ!
警戒する冒険者と怯える獣車の獣たち。
「なんだこの気配!おい!でかいのが来るぞ!」
「兄さん、来ます!…うそ、速い!」
森をかき分け現れたのは巨体な黒い熊だった。
「
熊の前には誰かが走っていた。ソイツは俺たちの前に倒れ込む。
「こ、今度は魔族!」
今にも泣きそうなソイツは後ろを振り返りガタガタ震えている。そりゃ怖いわなぁ
「あの野郎は俺たちが押さえ込む!アンタらはソイツを連れて先に行ってくれ!」
抜刀するナバルとオレたち。
「すまん!援護を呼んでくる!」
駆け出す獣車。
この
巨大な剣爪と曲刀が交差する。
その脇をオレとホルンで強襲をかける。
『ゴォォォ!』
右からはホルンのボディーブロー、左からはオレの剣爪による斬撃で悶絶する
「アイシクル・エッジ!」
ナバルが後ろに下がったのと同時にナナイの氷の刃が熊の足を貫ぬ…けず破片(はへん)が足に絡まり固定される。
「やっぱり皮膚は堅いですね」
「こいつがヤバイって実感するなぁ」
言葉とは裏腹にナバルは悪い笑顔を浮かべてる。この子いつからバトルマニアになっちゃったの?なんかデジャビュを感じるなぁ。後ろでナナイが心配そうにしてる。
「兄さん、前に出すぎないでくださいよ、危ないです」
そう言いながらもナナイの氷の刃は雨のように降り注ぐ。…うわぁ。
「あはは、ワリイ」
ナナイの魔術に若干顔を引きつらしたナバルは曲刀と小太刀を構える。
曲刀は氷の剣へ、小太刀は風を…ん?
小太刀からは若干光が走る。おい、まさか!
「面白れぇもん見せてやるよ。一撃で倒れんじゃねぇぞ!」
悪い笑顔のナバルは突撃する。氷の剣の斬撃そして、小太刀は雷の剣へ変化していた。
ズドォォン!!
熊を中心に閃光が
ナナイとナバルの氷の攻撃により動きを封じられた熊は雷撃を回避できずまともに喰らう。
『グゥゥ…』
氷の拘束は弾けたものの後ずさりする
「マジかよ。加減無しの一撃なんだけどな」
そう言うナバル君。嬉しそうだった。
バトルマニアは自重しろ。
囲うように構えるオレたち。不利と感じたのか
「どうする?追うか?」
「…いや、警戒しつつ獣車を追おう。向こうに行かれたら厄介だ」
ナバルのいう通りオレたちは獣車を追う事にした。バカみたいに突っ込んでくれたら楽なのに…
でもこれは長い1日の始まりに過ぎなかった。
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