第32話 期待と不安
「ようやく出来たよ。久々に作ると楽しいねぇ」
バアちゃんに渡されたのは6年前の
「
呆れて言うオレに
「そうさね。半端は嫌いでね。ただ
笑いながらそんなことを言ってきた。
オレにはベルト。
ナバルにはゴツイ腕輪。
ホルンは首につけるチョーカー。
ナナイはイヤリング。
「どんな効果があるんだ?」
興味津々でナバルが聞く。ホルンやナナイは早速つけて見せ合いっこしてるし。
「まずはナバルだね。アンタのは《
はあ?!半分の魔力で倍以上とか完全にチートじゃん!ナバルはフリーズしてた。本人が一番ビビってるし。…オレもビビってます。
「ナナイは《
連続魔術とでも言うのかな。あの極太レーザーの2発同時撃ちとかどこのゼロカス○ムだよ。
「ホルンは《
ホルンの動きは特に速いんだわ。それの分身多重攻撃とかオレが相手にするなら泣くね。
「トラン、アンタのは《
あ~ステータスアップね…アレ?
「なあバアちゃん、オレだけ地味じゃね?説明もやっつけ臭いし」
バアちゃんは何とも言えない顔をして
「トラン、アンタには封印めいた扉モドキがいくつかあるんだよ。アタシも覚えのないね。ソイツを
!!
なにそれ!オレに未知の力が!そう思うオレにバアちゃんは言い放った。
「ただ暴走するだけかもしれないから周りには誰もいないところで使いな」
「それただの
そんなオレを無視して
「いいかい?それらは全て《魔力》を消費して発動するタイプだよ。そして能力の発動は《
オレだけ頭パッパラパーで暴れるとか…トホホ
焼き上がった鉄サソリを旨そうに頬張(ほおば)るナバル。
「うっめぇ~」
いいよね
まあいいや、オレも食うか
「うめ~!」
…
……
「
ギルドマスターはスタッフと共に『
「ナバル坊たちでさぁ。アイツらも何だかんだで強くなりましたよ」
そうオヤっさんがいう。オヤっさんはギルドの結成前から付き合いのあるドワーフと獣人のハーフだ。豪快で面倒見の良いおっさんだ、私も何度も助けられている。
「オヤっさんも彼らを何だかんだと気にしてますね」
「そりゃあなぁ。あんなちいせぇ頃から見てりゃあ気にもなるさ」
彼らが
「それとよぉ、ギルマスの言う《魔動炉》って言ったか?アレの試作品が出来たからちょっと見てくれ」
「おお!もうですか!仕事が早いですね」
「ハッハッハ!仕組みさえ言ってくれれば何とでもなるさ。…にしてもよく思いつくな。俺にしてみればそっちの方がすげぇよ」
「
…まさか『異世界から転生』してきたとも言えるわけもなく適当にごまかした。
(でも、ようやくですか)
これから出来るであろう《新たな物》に私は期待を膨らませたのだった。
…
……
………
魔の森の南、森の入り口に隣接する人間の町、ある意味人間と魔族の境界線ともいえるその町は、数年前までは小さな村だった。
とある貴族の領地になってから発展の一途をたどっている。
その町には貴族の寄付により大きな教会が建てられていて、その最上階の屋根の上にローブで頭から身体をすっぽり隠した少女が立っていた。
「あのいけすかない公爵も、こういう才能はあるのね」
彼女は立派になった町を
「でもやっぱり駄目ね。全然ダメ。そもそもなんで壁を作らないのよ。いくら千年間、手出ししてこなかったからって。しょせん《魔族》じゃない」
森との間には小さな柵が敷かれていて、その途中には魔物避けの結界の
「でも良いわ。今あそこで『面白いこと』が起きてるし。ちょっとだけ遊んであげる」
そう言い残し少女の姿は跡形もなく消え去った。
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