第27話 魔族たちの宴8 戦利品

 魔王都ギルドランに着くと、門の向こうは屋台の嵐だった。


「すっげぇ!」

「わあ…」

「わくわくだニャァ」


 3人ともそわそわしてる(笑)

やっぱり子供だねぇ。

オレ?決まってるだろ



 屋台まわりてぇ!!


 はっ!まてまて、今はポイント交換だ。

「ナバル!すぐにポイント交換行くべ!」

「あ!そうだな」

 俺たちは大急ぎでギルドに向かう。


 …みんな考えることは同じだよね。

そこは獣車でごった返してた。


「「「「うわぁ…」」」ニャ」


 唖然あぜんとするオレら。そこへ


「やっと帰ってきたね」

バアちゃんだ。なんか帰ってきたって感じがするな。


「バアちゃんただいまニャ!」

「ただいまです」

「うッス」

「おかえりなさい」←(トラン)

「バカは変わってないね。」

 間髪入れずツッコミもらったわ。


「バッサリ来たね。だってめだよオレ。なんかボケなきゃって思うじゃん」

「そんなこと考えるのはアンタだけだよ。ここじゃなんだ、宿をとったからついてきな」


 ハァ、とため息つくとバアちゃんは先頭を歩き出した。

「バアちゃん、まだ素材交換してないけど良かったのか?」

「むしろ選別せんべつしてからの方が良くないかい?アレが落とすのは貴重なものばかりさね。交換するより手元においておく方が良いこともあるからねぇ」


 なるほどなぁ。その点うちはバアちゃんがいる。バアちゃんが鑑定してくれるなら最高だわ。

そうして宿についたわけだが…


「宿もデケェなぁ」

 冒険者ギルド程ではないがそれでもデカイ。宿と言うよりホテルだな。

 ホテルに着くとバアちゃんは裏手に回った。ついてく俺たち。

そこには幾つもの獣車が止めてあり間には敷居がされていた。


「あそこにいる獣車の人たちって…」

「アンタたちと同じさね。ここで振り分けて納品するものとに分けてるんだろうさ」


へえ、よく見ると彼らは希少種きしょうしゅ戦の時にいた人たちだ。所謂いわゆる上級冒険者になるのかな。

よく見ると彼らは『3つ』に分けていた。人数分か?


「なあ、コイツはどうする?」

「う~ん、とりあえず『保留』の中で良いんじゃね?」


 なるほどなぁ。『いるもの』『納品するもの』『保留』の3つなのね。参考にしよう。

 よし!オレらも仕分け始めますかね。


……


「ギルドマスター、おかえりなさいませ」

「うむ、これから忙しくなるが頼んだぞ」


 受付の者たちは慌ただしく交換処理に奔走している。彼らには悪いが一休みさせてもらおう。流石さすがに疲れた。

 執務室に入ると妻が冷たいお茶を用意してくれた。

ふーぅ、生き返る。


「エリナさん、何か問題はありましたか?」

「いいえ、こちらは何も。あの砲撃以外はこれといって問題ないわよ」


 正直アレは焦った。全て終わったと思ったよ。それ以外は問題なしか、ノーチェス様にも感謝せねばな。


「そうか。良かった」

「陛下の方も『予想外の助っ人』が来たらしくむしろ暴れ足りなかったとぼやいていたわ」


 口元を押さえ笑う。ああ、可憐だ。

…一日中眺めていられるがそれをすると怒られてしまう。


「オホン、そう言えば『ウィルさん』には新人の冒険者が一人ひとり着いてたよね」

「ええ、リアリーさんね」


 たびたび陛下から聞く名だな。そうか、彼女だったか。

「君から見てどうだった?」

「…相当強いわね」


 私も1度拝見したが…純血のヴァンパイア、それも古参…と言うと見目麗しい女性に失礼だな。

 確かに強者の風格だった。カード作成時もわざと弱体化してたのだろうが体捌きを見ればわかる。

 装備も見事だったなぁ。純白の革鎧。素材は、おそらく高位の魔獣だろう。ミスリルの装飾も美しかった。正に『彼女のための鎧』なのだろう。

 それ以上に…あの腰の細剣…


「エリナさん、彼女の剣、アレは相当の業物かい?」

「…流石ね。アレは七神具セブンマイスズよ。たしか名は…

夕闇ノワール業火フランム

「なるほど。ガド殿と同じ『伝説』か」


 納得なっとくだ。では彼女は…止めよう。これ以上は興味本意で踏み込んではいけない気がする。


「そう言えば予想外の助っ人って言ったね。彼女以外で、だよね?」

「ええ、なんでも人間ヒューマンだそうよ」


 まれに人間が迷い混むと言うが、こんな時に来なくても…

「それはまた…ん?助っ人と言うことは戦力になったのかい?」

「そのようね。こちらで言うところのAランク相当の腕前らしいわ」


 強すぎる…何処『どこ』かの組織の者か?ともかく、それほどの猛者なら名前はわかるだろう。

「どこの何者かわかっているかい?」

「いいえ。武道家風の大男で『素手』で魔物を相手にしていたらしいわね」

「武器による『自身の名』を隠すためか…」

「それが『彼』なのか」


 A級クラスで格闘技を主体にする戦士…聞いたことないな。そもそも情報が少なすぎる。

 ただ、助っ人なら《現時点・・・》で敵では無いとは思えるが…

「その男には注意するよう通達しておこう」

「そうね、名乗った名前も偽名でしょうし」

「へぇ、なんて?」


カースい、だそうよ」


……


「参ったね」

「ああ…」

「兄ちゃん…」

「ニャァ」


 仕分けした結果、殆どの物が『いるもの』になってしまった。


「何やってんだい」


 ため息をつくバアちゃん。

仕方ないやん!新しい装備に使えそうなんだもん!

というのも獲得したものが…


▪ ▪ ▪ ▪


グーツ鉱(こちらで言うタングステン)

ミスリル銀

オリハルコン

アダマンタイト


聖霊石(光属性) それも上位

幻魔げんま石(闇属性) それも上位

魔石(上質)


サファイア

ルビー

ダイアモンド


等々…


▪ ▪ ▪ ▪


 こんなのがゴロゴロあった。っていうか『きたねぇ石』が磨いたらレアアイテムでした。ってのばっかなんだもんよぉ。


「そうさね、ポイントで『交換できない装備の素材』以外は交換しちまいな。そうでもしないと何時までたっても終わらないよ」

ですよねー。


今夜はここで一泊だわ。そう思うと背中をツンツンつつかれた。


「どした?ホルン」


「パンケーキが食べたいニャ」

「あ」

この宿にはキッチンもあるらしい。珍しいね。

「いっちょ作りますか」

「そうだね。待ち遠しかったよ」


 魔王ウィルが皿にフォーク持って待機たいきしてた。やっぱり来やがった。


「ノーチェス様、本当に申し訳ありません」


 ウィルの隣にいる綺麗なお姉様が申し訳なさそうにバアちゃんに非礼を詫びる。ってかこの人誰や?


「ウィルさんや、そちらのお姉様はどなたかね?」


 なかば怒気どきを含んだ声でオレが訪ねると何時いつもの笑顔にやけがお


「ハッハッ、トラン君、彼女は友達だよ」


・トラン脳内変換・


綺麗な女性の友達

   ↓

英語でガールフレンド

   ↓

彼女または予備軍

   ↓

リア充爆発しろ


「帰れ!!」

 オレは叫んだ。

 クソッ!視界がにじんでやがる。


「ちょ!!リアリー君は『友達』だってば!」


 慌てる魔王。

ん?リアリー?どこかで…

 ああ、ギルマスと初めて会った時に出た名前だ。たしかあの時は…


「あの『下着漁ったら』って言ったあの?」


 オレの一言にお姉様の雰囲気が変わった?

アレ?冷房効いてね?


「は?…『ウィルさん』あとでお話ししましょう」


 顔を青くする魔王。あれ?オレなんか間違えた?


「ちょ!トラン君!誤解ごかいまねく発言は止めてくれたまえ!!」


 面白いからほっとこう。

「ちょっと!誤解なんだよぉぉ!!」


「ほら、もう一枚やるからいじけるなよ」

「…今の僕の心の傷はカルカナ渓谷より深いんだよ」


 ほったらかしすぎていじけた魔王ウィルに多めにパンケーキを焼いてやった。…カルカナ渓谷がどんなんか知らんが。

 トッピングにミルクを風魔法とバアちゃんの氷(水魔法)で作ったアイスクリームは大好評だった。


リアリーさんは

「ここは天国ですか?」

 なんて言ってた。『天国』って概念がいねんこの世界にもあるのね。


「とりあえずさ、ポイント以外でみんなが欲しい装備が何かリストアップしようぜ」

 一息ついた俺たちはそろそろ先に行こうと決めたわけだが…


 ナバルは武器以外となると…小手や具足は鎧とセットで造ってもらってる。

そうすると…


「ナナイやホルンは何か無いか?」

「う~ん、じいちゃんの鎧あるから無いニャ」

 ですよね~。アレは凄まじかった。身体能力がアップしてんじゃなかろうか。


「ナナイは?杖とかあったら良さそうだよな」

 そう、ナナイが今着ているローブは昔バアちゃんが着ていたらしい。だから性能が怪物クラスなんだとか。ってなると杖しかないよなぁ。

「ナナイ…兄ちゃんが昔使ってた木剣が欲しいな」

「別にいいけど…ナナイも剣を覚えるのか?」

「ううん、違うの。それでね、杖を作りたいなって思ったの」

「ああ、なるほど。でもこれ、すっげぇ固くなっちゃったぞ?」

ナバルの木剣は度重なる魔力の付与により硬質に変化していた。

「問題ないよ。そういうことならアタシとウィルで造ってあげるよ。いいねウィルや」


 バアちゃんが嬉しそうにウィルに話を振る。当のウィルといえば…


「んぐんぐ、もごごもご」

訳; (いいよ、まかせてね)


 リアリーさんがめっちゃ睨んでる。そっと目を反らす魔王ウィル


 でもどうするかな。殆んど必要ないぞ?勿体ねぇ。

「仕方ないね。ナバルは明日、鍛冶屋で今の鎧の強化に必要なものを聞いてきな。アンタは成長期だ、鎧を新しく作るかサイズを変更するかは相談するんだね」

「わかったよバアちゃん」

「アタシはアンタら用の装飾品でも作ろうかねぇ」


 マジかぁ!たしかバアちゃんは『神具錬成』とかいう能力持ってたはずだ!

「バアちゃんマジでありがとう!」

「ありがとニャ!」

「ありがとです!」

「なんかすまねぇ」


 みんなそれぞれ感謝しまくり。ナバルだけ申し訳なさそうだけど、この子、変なところで遠慮するんだよなぁ。

 まあいいや、後は明日だな。



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