第26話 魔族たちの宴7 戦い終わって

トンカントンカン


 あっちでも、こっちでも冒険者たちは嬉しそうに魔獣の素材を獣車に乗せる。その中で見なれた3人組ゴブリングたちの姿があった。


「あれ?お前らも来てたの?」


「おお!トランの旦那ぁ!」

「凄かったっすよ!トドメの突撃!」

「ケツから黒いの出てたお」


 …最後の表現やめてくれない?

「まあ、お前らも無事で何よりだな」


 彼らも俺たちと同じようにレンタルした獣車に溢れるほど沢山乗せていた。…リュックの中も大量だぜグフフ。

 3人組が採取に戻ると、入れ替わるようにドワーフのガットがやって来た。


「ガハハ!大量だぜ!ようクマスケ。」

「お疲れ、おっちゃん。ホントに良い腕してるよなぁ」


 はなった矢がビームに見えるヤツ、オレは知らない。


「そうか?…でもまあ、これでボードゥが良い武具造ればウチも繁盛するからな」

 ガハハと笑い去っていく。暇(ひま)が出来たらまた来いと付け加えて。


(…さすがに今回は疲れたぜ)

 オレは近くの切り株に腰を掛けると一息ついた。獣車のそばに張ったテントでナナイとホルンはオヤスミ中だ。

(いつの間に強くなってたんだよ)

 全然気づかなかったね。成長してくのは嬉しいんだけど、教えることが無くなるのって寂しく感じるんだな。生前じゃ、そんなこと思わなかったなぁ。相手もいなかったけど。

 そんなことを考えてたら師匠が来た。


「トラン、今回は見事だったぞ」

 誉められた。

「へへっ、でもトドメさしたのナバルと師匠って聞きましたよ?」

「お主とほぼ同じであるな。ナバルもナナイ、ホルンも見事であった」

 嬉しそうな顔をしたあと、少し困ったような笑顔を浮かべ

「しかし…教えることが無くなるのは、寂しくもあるな」


 そう言った。…さっきのオレとおんなじことを言われたよ。

「イヤイヤ、オレらまだまだッス。これからもよろしくお願いします」

 オレは切り株からから立ち上がり、まっすぐ礼をした。師匠はポカンとしたあと


「…ハッハッハッ。そうだな。

これからもビシビシいくゆえ着いてこいよ?トラン」


 スゲェ笑顔で言われた。たまには手を抜いても良いんでっせ?


……


「ノーチェスさま、お見事でしたわ」

そう言い、カップを用意するエリナ。

希少種きしょうしゅだったときは流石さすがに驚いたねぇ」


 それこそ前回の勇者、500年前以来じゃないかい?まあ、魔力崩壊や闇属性を持つこの町の住人だから相手出来るわけだけど。後は獣人、龍人族ドラグーン、エルフやドワーフなんかの亜人。後は高位の魔術師かねぇ。エリナが注いでくれたお茶を飲む。


「まあ、普通は光属性の魔物なんぞいないからねぇ」

「ええ、町の壁にも結界があるのは存じてますがヒヤリとしました」


 …あれほどの出力だとこっちが壊れる可能性があるね。そろそろ魔王(ウィル)と結界の強化について話すとするかね。


「でもまぁ、これでこっちは一段落ついたね。」

「はい。先ほど負傷者はいるものの、戦死者は無しと報告が入りましたわ」

「そうかい…」


 あの少女たちは戦闘の場数が圧倒的に少なかった。ゆえにその報告を聞いたときは心底ほっとした。

「ええ。後は…」

「…まあ、ウィルが出てんだ。心配ないさね」

 そう言うと魔女は何事もなかったようにお茶を一口飲んだ。


……


「なあ、トラン。俺たちもそろそろ戻るか?」

オレは切り株に座って水筒に口付けてるトランに言った。


「…だな。ホルンたちが起きたらいくか?」

 そんな話をしてたら二人はちょうど起きてきた。


「ははっ、タイミング良いな。ナナイ、そろそろ帰るぞ」

「…うん、兄ちゃん」


 まだ寝ぼけてる。ホルンもボーッとしてる。そこへトランが

「なあ、ホルン。帰ったら何が食べたい?」

「うニャ…トランのパンケーキが食べたいニャ!」


 ホルンの頭を撫でながら

「よし、バアちゃんとみんなで食べような。じゃあ一緒に片付けるか」

「片付けるニャ!」


 …上手いな。二人が寝てたテントがみるみるうちに片付いていく。

「パンケーキ、ニャ!パンケーキ、ニャ!」

 ホルンはスゲェハイテンションになってる。

…まあ、気持ちはわかるな。トランが作る飯はどれも旨いんだよ。見るとナナイも、もじもじしてる。それを見たトランは、


「ナナイはパンケーキに何かける?」

「…ナナイも良いの?」

「勿論よ!兄ちゃんと一緒に来なYO」


 後半変な発音してたが…俺も気合い入れて片付けるかな。



「ウィルも来るよなぁ、絶対。」



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