第28話 魔族たちの宴9 魔王と呪い
「アダマンタイトは物理的な性能に優れていてオリハルコンは魔法反応に優れているからねぇ、混ぜると普通は両者の性能が潰しあってしまうんだよ」
ボードゥさんに鎧について相談しに来たわけだが。
「じゃあ普通は混ぜねぇの?」
「と、言うより混ぜられない。どちらも素材が高価だからリスクが大き過ぎてね」
ハァ、行けると思ったんだけどなぁ。
「でも…」
ん?オレとナバルは顔を見合わせるとボードゥさんは真剣な顔で聞かせてくれた。
「魔王陛下の
なるほどな、それだけ難しいのか…
そして…
仮に出来てもこの人はそれはしたがらないだろうな。どうする?ナナイとホルンは「「いいよ」ニャ」と笑顔で了承してくれた。勿論オレもだ。いいんじゃないかとナバルを見る。そうしたらナバルは嬉しそうにボードゥさんに言った。
「ボードゥさん、オレが大人になったらボードゥさんが作ってくれた『最高の鎧』を着たい。だから何年かかっても構わねぇ。…むしろすぐ出来たら困る。だからこれ全部預けるよ。」
そう言って大量のオリハルコンとアダマンタイト、それに幾つかの鉱石の入った魔法袋を袋ごと渡した。200個近いインゴットとか置くところ無いもんなぁ。ちなみに鉱石は精製済みだぜ、魔術ってスゲェよな。
「良いのかい?!…わかったよ。君に最高の鎧を作るよ!」
ボードゥさんは決意を秘めた目でナバルと固い約束してた。
…
……
オレたちは残りを交換しにギルドに来た。ギルドの隣に専用の受付けスペースがあってそこで交換するらしい。昨日来たときは人だかりで見えなかったわ。
「相変わらず凄い人だな」
オレの呟きに頷く3人。すると冊子を持ってギルドの職員が近寄ってきた。
「君たちも冒険者だね?これが素材とポイントの交換表です。みんなで相談して選んでね」
そう言うと職員は他の冒険者の元へ行く。悪いね。相談終わってるんだわ。ナバルたちも気まずそうに顔を見合わせる。
オレらの番になった。アレ?順番来るの早くない?
「これ全部です。よろしくお願いします。あ、獣車もギルドの借り物なんで一緒に返品手続きお願いします」
受付の横には獣車が停められるようになっている。それが5つもあるからずいぶん広く作ってるよな。まあいいや。
「はい。確かにお預かりします。鑑定に時間が掛かりますのでこちらの番号札をどうぞ。鑑定が終わりましたらあちら右の掲示板でご報告します」
右を見ると確かに若い番号が張り出されてる。それまでは時間潰すか?一旦離れるオレら。どうするよと思ってるとバアちゃんがこっちに歩いてきた。
「おや早いね。ああ、鑑定待ちかい?」
「そうなんだよ。時間余っちゃってさ」
「ならせっかくだ。トラン、皆を連れて屋台巡りでもしてきな」
なん…だと!!
バアちゃんはオレたちに小遣いをくれた。
「無茶するんじゃないよ」
「バアちゃんは来ないのかニャ?」
「バアちゃんと一緒に行きたいです」
少女二人のお願いに「仕方ないね」と言って来ることになった。…ちょっと困ったような笑顔を浮かべて。
「屋台、出店、なんて素敵な響きなんだ!」
「コレがいたねぇ。確かに心配だねぇ」
素直じゃないね(笑)
オレをダシにしてくれて構わないぜ!オレってば心がデカいクマだからね♪これから祭りじゃあ!
…
……
「陛下、
魔王城のテラスから城下を見てるとリアリー君が心配そうに訪ねてきた。
「大丈夫だよ。彼の目的は
…
先日の小熊といいこの森には化物がゴロゴロしている。
「君、ずいぶん珍しい『存在』だね。
突如現れた男はそう言ってきた。
流れるような銀の長髪、女神のような顔立ち、しかし溢れる魔力は魔神そのもの。男が次を話そうとしたとき、新たな魔獣が集まってきた。…気になるのはいずれもが『この辺にはいないはずの』大型の魔獣が多いことだが…
…なるほど、召喚術か。
「やれやれ、小細工だけは立派だな」
男は邪悪に笑うと
「すまないね。礼儀知らずな客のお陰で君との語らいはしばし待ってもらえるかな?」
「…いや、『俺の客』かもしれん」
「では双方の客としておこうか」
最後の言葉を合図に俺は一瞬で魔獣の距離を詰め一撃で潰す。以前なら手こずっていたかもしれん相手だがこの森に来てから自身の成長には驚くばかりだ。男の方をちらりと見るが…
常人ではあり得ないほどの数の斬撃が魔獣を襲う。一体何回斬り込んでいるのやら。アレはオレでも避けきれない。上には上がいるのだな。
俺は更なる高みに上るため魔獣を殲滅した。
…
「いや~終わった終わった。君強いね」
「アンタの化け物じみた強さを見せつけられてはな」
「ハッハッハッ世辞でも嬉しいよ」
「それに…」
「?」
「アンタの後ろの女もかなりのものだった」
「ほう、彼女に気づいたかい。君はやっぱり凄いね」
そう、男の後ろには一人の女がいた。気配を完全に消しているため普通は気づかないだろう。だが俺には精霊様の加護がある。そこに『存在』する限り俺に察知出来ないものはない。
…それもこの森の修行の成果だが。
俺が『いるであろう』方を見ていると女が現れ礼をした。
「挨拶が遅れたね私はウィル。彼女は友達のリアリー君だよ」
「ご紹介にあずかりましたリアリーと申します」
「…カースだ」
簡単な挨拶を済ますと男は俺に向いて
「何か訳ありかな?よければ相談に乗るよ」
…この男と女。おそらく魔族であることに間違いないだろう。
そしてエトとヤヨを拐った奴等、アレは人間だった。裏にいるのが『人間』か『魔族』かはわからんが
「今も続いているか知らんが幼い子供を拐う事件は知っているか?」
俺の問いかけに男は一瞬怒りを発した、がすぐに収まり
「…そうか、あの事件か。知っているよ。と、言うより知り合いが巻き込まれかけた。大事には至らなかったけどね」
奴等は魔族にまで目をつけたのか?命知らずな。
「知っている事があれば教えて欲しい」
男は『う~ん』と唸ると
「そんなに大したことは知らないんだよ。最近は鳴りを潜めたのか『表では』起きていないしね。聖教会の一部過激派ってのが有力らしいよ?何せ『実行していたのは全員殺された』らしいからね」
ほう、そこまで知れ渡っているのか…
「首謀者が教皇の可能性は?」
「それは無いだろね。あのじいさんは事件で頭を悩ませることはあっても自分でするほど腐ってはいないよ。
…彼が変わっていなければ、だけどね」
魔族が教皇の
「そうか。感謝する」
俺はそういい立ち去った。男は陽気に手を振って俺を送り出した。
…女が男を呆れ顔で見ているのが不思議に思ったが。
今すぐ聖教会に乗り込みたいところだが今の俺では太刀打ちできまい。あの男に出会ってよくわかった。更なる力をつけるため、俺は修行を続けるとしよう。
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