第21話 魔族たちの宴2冒険者ギルドとナバルの鎧

 ギルドに入ると凄い人だかりだった。ここは酒場も兼用で、かなり広いんだけどなぁ。

初めて入ったナナイやホルンも大はしゃぎだ。


「兄ちゃん、凄いね!」

「ワクワクが止まらないニャ!」

「大したもんだねぇ」


 バアちゃんも感心してた。

なんとか受付に着くと


「すみません、ギルドマスターに『トランが来た』って伝えてもらえません?」


 何時いつものリリンさんじゃないからギルドカードを造るなんて無理。ましてやホルンはオレ並みにヤバいカテゴリーだしね。


 しばらくしたら美人秘書さんが迎えに来てくれた。ギルマスの部屋をノックして部屋に入るオレら。

ギルマスの風体に (今日はキチンとした服を着てる)流石にビビる二人の少女。アイツ顔は怖いけど良いヤツよ?…

ダメだ!アイツは変態だった!


 ギルマスはオレに気づくと『ようこそ』と声をかけたがバアちゃんを見ると固まった。アレ?美人秘書さんもいつもと雰囲気ちがくね?


「あ、あの、つかぬことをうかがいますが…そちらの方は『深緑の魔女』

キャリバンヌ・ノーチェス様では…」


ギルマスが緊張してるだと!


「ああ、そうだよ。噂の切れ者ギルドマスターにこうして会えて光栄さね」


ギルマスは照れて


「いや、こちらこそ、良くおいでくださいました。」


 居住たたずまいを正すと

「改めまして私、ベルゼイ・ファウストと申します。そして隣にいる女性は秘書で我が妻のエリナ・ファウストです」

「ご紹介いただきましたエリナ・ファウストと申します。ノーチェス様とお会いできて光栄ですわ」


 何時いつも冷静な美人秘書さんがほほを赤らめてる、だと!


「エリナ?もしかして『チェザーリオ・グレイウッド』の子かい?」

「ええ!そうです!私たちの事などご存じでしたか。大変に光栄ですわ!」


 秘書さんはスゲェ笑顔で答えた。

 笑顔も素敵だった。

 …なんでこんな美人が変態へんたいの奥さんなんだろ…後で問い詰めよう。


 挨拶あいさつも一通りすんで話が脱線する前にオレは3人のギルドカードを作ってもらえないか頼んでみた。


「勿論ですぞトラン殿、特にノーチェス様が一般受付で作られましたらちょっとした…いえ、かなりの騒ぎが予想されます。むしろこちらに良く来てくださいました。我々としても助かりますよ」


 かもなぁ、さっきの秘書さんの姿を見れば確かにヤバいかも…


▪ ▪ ▪ ▪


名前 ;ホルン

種族 ;最上位キメラ

モデル;白闘虎アルベドラタイガー


戦闘能力;B-(変動アリ)

保有魔力;A(変動アリ)

保有能力;捕食型魔力崩壊

    魔力抵抗(変化の兆しあり)

    白虎王の加護

    風魔法、水魔法


称号 ;魔女の守護者

   ;白虎王の後継者

   ;熊の盟友


▪ ▪ ▪ ▪


名前 ;ナナイ・グラディス

種族 ;人間ヒューマン


戦闘能力;D-

保有魔力;A+

保有能力;精霊魔法

    属性障壁

    


称号 ;測定不能

   ;測定不能

   ;精霊術士見習い


▪ ▪ ▪ ▪


名前 ;キャリバンヌ・ノーチェス

種族 ;人間ヒューマン


戦闘能力;C-

保有魔力;測定不能

保有能力;全属性魔法

    次元支配

    神具錬成


称号 ;深緑の魔女

   ;永遠の書庫

   ;時代を超えし者(弱体化)


▪ ▪ ▪ ▪


この町の一般の冒険者の能力がC+だから全員十分すぎる能力だな

(バアちゃんは規格外)。


「にしても良くできてるねぇ」


 バアちゃんは書いてる中身よりギルドカード本体に興味を引かれてた。


「このカードは『世界』が認識した情報を書き込んでるのかねぇ」


スッゲ!一発で当ててるし。


 ギルマスもスケジュールがたて込んでるだろうから後日改めてくると言ってギルドをあとにした。

 ギルマスも秘書さんもスゲェ名残惜しそうだったよ。バアちゃんスゲェな。


 事前に貰った『ポイント交換リスト表』は、なんとビックリ写真付き。その中身も戦闘に関係無いものも以外と多くて更にビックリした。まぁ、だから大きさが週刊少年誌 くらいの大きさになってるんだけど。


 で、中身の方はだいぶ省くけどこんな感じ


▪ ▪ ▪ ▪


P=ポイント


100000P

紅蓮剣フラームブラッド

魔断斧アビスウォー

魔追槍ゲールボルケーノ

血戦鎧ブラッドスケイル


10000P

オリハルコンの鎧

オリハルコンの片手剣と短剣

オリハルコンの槍

オリハルコンの戦斧

オリハルコンの大剣



【省略】



100P

中級ポーション

火釜戸 (火属性のオーブン)

50P

マジックドロップ (魔力回復薬)

魔法具用魔石(小)

鉄火板(コンロ)

10P

初級ポーション

隔離筒 (保温出来る水筒)


1P

手帳

万能筆 (まんまサインペン)


▪ ▪ ▪ ▪


 って10万P ヤバいな!絶対1品ものだろ!ってかオリハルコンとか聞いてないぞ!そう思ってるとギルド内も


「スゲェ!マジかよ!!」

「魔王城が後ろ楯ってマジらしいな」

「手帳って…上質な紙だなぁオイ!」

「万能筆ねぇ、呪符じゅふ書くのにも使えるのかなぁ」

「俺!10万P貯めるわ!」

「お前そのナマクラで十分じゃね?」


 いゃあ、完全にお祭り状態だわ。

 オレらの方もナバルだけじゃなくホルンやナナイも興奮してた。二人は欲しいのあったのかな?


「トラン~、ポイント集めたらこれが貰えるのかニャ?」


 ホルンが指差したのは白銀色のケープだった。どうやら糸状のミスリル銀が多数織り込まれてる一品で性能もかなり優秀なようだ。ポイント見ると…

2000P!わりとデカいな。


「貰えるぞ。でもたくさん集めなきゃな」


ホルンは「がんばるニャ!」と気合いを入れてた。よっぽど欲しいんだな。

 ナナイもソワソワして


「トラン君、ナナイにこれ似合うかな?」


それは金でふちどられた星の形をしたブローチだった。ポイントを見ると…

3000!高っか!!なんで!!

どうやら精霊石っていう上位の魔石が使われてるらしい。


「うん、ナナイにぴったりだと思うぞ。でも無理はするなよ?怪我したらオレもホルンも悲しいからな」


「うん!…ありがとね」

何故だか照れるな。


「それにきっとナバルなんか泣き出すんじゃないか?『ヴオーーン』って」

 …茶化した。ナバルからは「クマうぜぇ」を頂きました。


「で、ナバルはやっぱり10万P貯めちゃったりするのか?」

「アレか?確かにスゲェけど…オレはこれが欲しいな」


 ナバルが指差したのは曲刀のファルシオンだった。たまに市販されてるヤツだな。ポイント見ると1500P… 普通か?


「マジか?オリハルコンじゃなくてもミスリル製は来ると思ったんだがな」

「ミスリルは確かに良いよなぁ。オレも憧れる。でもこの形が良いんだよなぁ」


 あ~、曲刀が良いのか。あれ?待てよ?オレはページをめくり


「ならこっちはどうだ?ミスリル製の曲刀『ムーランルージュ』。まぁ、6000 ポイントとミスリル製じゃダントツで高いけどな」


 そう、ミスリル製の武具は基本2000 ~5000P が普通だった。ムーランルージュは頭1つとび抜けてる。

「おお!かっけぇなぁ!」

 ストライクゾーンだったようだ。スゲェ気合い入ってるし。


「でよ、トランは何が欲しいんだよ」

「オレはこのチュニックだな。ミスリル銀の糸が織り込まれて防御もあるし格好いいし」


 オレの答えに、ナバルは期待はずれと言わんばかりに、


「なんだ、てっきり火釜戸か水筒かと思ったよ」

「!!」


オレはマジで驚いたね。だってそれ…


「何故わかった…」


オレが本気で欲しいものだったから。


……


 ギルドをあとにしたオレたちが最初に行ったのはこないだの果実店だ。ここのフルーツジュースを飲ませたくて来たんだけど…今日はおばちゃんではなく若い娘さんだった。


「すみませーん。このドリンク5個 くださいな」

「はーい!あら?」


 娘さんはオレを見ると優しく微笑んだ。


「お嬢さん、オレに惚れると火傷するぜ」(キリッ)

娘さんは何故か大爆笑して

「聞いてた通りだぁ!ホントに面白いクマちゃんね」


 …おかしいな?笑うところか?

まあ、いいや、イタタタタ!!

耳に激痛が走り、気がつけばホルンが後ろから抱きついてオレの耳をかじってた。


何故なぜ?!ホルン君!ホワァイ?」

「…なんかイラッときたニャ」


 ゴメン意味わかんない!

バアちゃんは「ハァ」とため息ついて、ナナイは面白そうにオレらを見てる。ナバルはオレをスルーしてドリンク飲んでるし。

なんとかホルンをなだめてみんなで飲んだけど、やっぱり旨いな。ホルンはだむくれてるからフルーツの串(イチゴ?やメロン?なんかを串で刺して売ってる)を人数分たのんだ。勿論オレの奢りですよ。トホホ。


 何だかんだで鍛冶屋に着いたよ。

ちょうどボードゥさんが店の中から出てくるところだった。


「やあ、二人とも。今日はやけに大所帯だね…どしたの?」

「何でもねぇ。ところでナバルの鎧はどお?」


 誤魔化すように話を変えるとボードゥさんは奥の部屋に戻り皮袋を持ってくる。


「最近見ない素材だから気合い入れてしまったよ」


 嬉しそうに言うボードゥさん。ナバルは彼の薦めで店内で試着しに行った。オレらもゾロゾロ入ると武器や防具が所狭ところせましと飾られている。そういえば店内でじっくり見るのは初めてだな。そんな感じで見て回ってるとカーテンで仕切られた中からナバルが出てきた。


それは、一言で言えば


『鋼鉄のバトルスーツ』だった。


 縦の詰襟つめえりが特徴的なそれは黒鉄色のチェーンが基本に、繋ぎあわせは黒革で補強されている。補強部分もデザインになってるのが憎らしい(誉め言葉)。

 腰回りは左右非対称のプレートがしつらえており、刀剣やマジックポーチなどのオプションが付けれるように工夫されている。

 腕やすねは黒鉄色の鉄板で補強された小手や具足で全体のフォルムが統一されている。


 ハッキリ言って超オレ好みだった。


「かっけぇなぁオイ!」

「兄ちゃん似合ってるよ!」

「強そうだニャァ」

さまになってるじゃないかい」


 みんな大絶賛。これ向こうで売ったら絶対売れるわ!…マニアに。でもこんなデザインこっちにもあったんだぁ、そう思ったら


「ナバル君にデザインしてもらったのを見て衝撃が走ったよ」

「へへっ、『こんなのがあったらなぁ』って書いていくうちにイメージがまとまったんだよね」


 なんとビックリナバル考案とは!


 ボードゥさんは奥から何か取り出した。ショートソード?鞘から抜かれたそれは『小太刀』だった。


「素材が余ったからね。これも使うと良い」

ナバルは嬉しそうに礼を言うと腰に差した。似合うじゃねぇか。


「鎧もそうだけど剣も全体が黒っぽいんだね。これは色を塗ったの?」

「違うよ。アダマンタイトの特徴なんだよ。魔力を浴びせながら鍛えていくと変化するのさ」


 そんな説明も何のその、ナバルはソワソワしてる。


「慌てるなよ。どうせミリなんたらで試せるだろ?」

「お、おう。そうだな」


 分かりやすいね(笑)

 始めの頃は『まだ要らない』なんて言ってても、やっぱり本心は欲しかったんだろなぁ。

あれ?オレはなんも買ってねぇ…








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る