第12話 魔族と魔獣
「クマ助!そっち行ったぞ!」
「クマ助言うなや!」
トランです。ゴメン今狩りの途中で忙しい。
ナバルと一緒に狩り真っ最中、師匠のシゴキの成果がこんなとこでわかる辺り皮肉だよね。
今日の標的はコマ猪っていう1m50cm位のデップりとした猪だ。昨日の稽古の時、師匠がやたら旨かったって言ってたから気になっちゃったんだよね。
「アイスクラッシュ!」
ナバルの斬撃が首に決まると、猪は徐々に凍り始め、最後は巨大な氷の中に閉じ込められる。これで生きてる奴はいないだろう。
「切り落とすんじゃなく氷で閉じ込めちまうってよく考えたな。」
「まあな (どや顔)。冬の日とか食べ物もつだろ?だから凍らせたらいつでも食えるかなって思ったんだ」
「まあ、解体の手間考えると微妙だけどな」
「うっ!…他の技もあるんだぜ。幾つか思いついてるんだ。」
こんな感じでナバルも充実してるみたいでなによりだわ。…二人の方が楽だしな(ニヤリ)
獲物をリュックにしまうと(リュックはバアちゃんお手製マジックアイテム)なにやら騒がしい声が聞こえてきた。
「なあトラン、あっちから叫び声が聞こえね?」
「…ああ、急ぐぞ!」
オレとナバルは駆け出した。この森は魔物が凶悪で有名らしい。普段は誰も入ってこないんだが稀に子供や初めてきた旅人なんかが紛れ込むことがある。
声の元まで来ると複数の屍喰らいが子供達?を襲うとこだった。
主に人間の死体が魔力の影響で魔物化し、生き物を襲う。見た目は皮膚がないゾンビみたいだが、これがなかなか素早いんだわ。森じゃそんなに珍しくない魔物で、その死体を残したままだとまた復活するというたちの悪い性質を持つから普通は焼いたりして復活防止するのが基本である。
ナバルは氷の剣を炎の剣に切り替えた。…便利な魔法だなぁ。
俺は火の魔法は使えないから十の剣爪に魔力を走らせブーストをかける。剣爪は黒と紫のオーラに包まれる。死体が残って復活するなら跡形もなく消し去れば良いわけであって、その為のブーストである。どういうことかというと…
「はあっ!」
ナバルの斬撃が一体の屍喰らいを袈裟斬りにする。燃え果て崩れ落ちる後ろから2体目が襲いかかる…が、難なく回避、すれ違い様に2体目を横凪ぎに切り伏せていた。ほんとに強くなっただろ?コイツの成長速度は俺も驚いてる。おっと、俺の方にも来やがった。
「どっせーい!」
右手の5本の剣爪が縦横無尽に切り刻み、切られた屍喰らいは魔力崩壊を起こし灰になる。
魔力崩壊
魔族や高位の魔獣なんかも使うこの技は自信の魔力を武器に纏わせ切りつけたりすることにより相手の魔力と細胞をボロッボロに崩す攻撃方法だ。勿論防ぐこともできるぜ?
むしろ上級者の戦いは魔力崩壊と
屍喰らいを倒し尽くしたあとのナバルの第一声が
「なぁ、『どっせーい!』は無いんじゃないか?」
なんて言いやがった。くそう、この間も…
…
……
「うーむ、トランよ。…なんというかお主の掛け声、オッサン臭くないか?」
先日の稽古の時だ、師匠は手を止めそんなことを言ってきた。
なんか可哀想な子を見る目をして
「ぐぐっ!!」
そんな会話を聴いていた奴がいた。
魔王だ。バアちゃんとこでくつろぎまくってる。優雅に茶なんぞ飲みおって…
魔王は爆笑しならこっちに来て俺の肩に手をおくと
「プクク…トラン君、泣いても良いんだぜ (キリッ)」
(怒) お前は帰って仕事しろ!
……
…
はっ!いかんいかん。確か襲われてた奴らがいたな。怪我はないかな?
彼らをみた瞬間、俺の時間は止まった。
恐らく子供だ、顔にあどけなさが残ってる。服装はそこらの村人のような格好だ。ただ彼ら?は人間じゃなかった……
「ゴブリン?…どゆこと??」
俺の呟きに真っ先に反応したのはナバルだ。あれ、コイツ落ち着いてね?
「ああ、服着てるってことは…お前ら『ゴブリング』だな?怪我ないか?」
ちょっとまて!ゴブリングってなんぞや!パニクってる俺をよそに会話は続いてる。
「助かった~ありがとよぉ。」
「ビビったね、さっきはギリだった」
「オラ食われるかと思ったお」
それぞれに感謝してるようだったが…
「見たところお前ら子供だろ?なんで森に出てきてんだ?」
「母ちゃんが病気でよぉ、薬草取りに来たんだよ」
「町の外なら沢山あるらしいからな」
「…心配だお」
状況はわかった。とりあえずナバル君は知ってることを教えてくだされ
「あれ、トランは知らねぇの?」
聞かされたのは魔族と魔物の違いだった。と、いってもぶっちゃけ知性と自我があるのが魔族、無いのが魔物って認識したけど実際はもっと明確な違いがあると思う。暇になったらバアちゃんに聞いてみよう。
「で?君らは魔族の国から来たのかね?」
「…クマがしゃべった!」
「クマの魔族なんていたっけ?」
「…ちっちゃいお」
「もうそのネタはいいっちゅーねん」
「「「???」」」
ここにいても危ねぇからバアちゃん家に行くことにした。
「なあナバルよお、なんで魔族とかに詳しいんだ?」
「そんな詳しく無いけど…
…
……
家に着くと捕獲したコマ猪を取り出した。どうやって解体するかなぁ。
ガッチガチのコマ猪に爪を当てたら…
ツーって切れた。あ~俺の爪、鋭いんだった忘れてたよ。でも血抜きくらいはしたいから1度解凍しないとな。そんな俺を3匹のゴブリングはビビってみてた。
なんで?
「黒いクマに白い剣の爪って…」
「兄ちゃん、ヤバイよ…」
「猪旨そうだお」
一人だけ反応おかしいが気にせず作業にはいる。ナバルは彼らが持ってきた薬草を並べて手に取ってた。
「なぁ、お前らが持ってきた薬草だけど効果がバラバラだぞ?」
「え?!じゃあ母ちゃんに効かないのか?」
「せっかくとったのに」
「ガッカリだお…」
「いやいや、効かないっていうか…1度医者にみせてから薬草を使った方がいいな。俺じゃお前らの母ちゃんの症状わかんねぇもん。とりあえず種類別に分けたから見てもらえよ」
「うおぉぉ!ありがとうアニキ!」
「ナバルのアニキすげぇ!」
「ナバルにい凄いお」
「あ、アニキ?え?」
なんか凄いことになってる(笑)
「とりあえず自己紹介しとこうか。
オレはトラン、
「にぐ!キメラぁぁ!」
「アワアワアワ」
「食い納めたいお」
え?え?何この反応。俺は魔物じゃないのよ?そんな怖がるなよ…
「そんなびびんなくても良いぞ?ただの変なクマだから(笑)」
「…変は余計じゃボケ」
そんな会話をする俺たちを最初はビビリまくってた彼らは次第に安心したらしい。お陰で彼らから話を聞けた。
キメラ
魔術師から造り出された魔法生物。
材料になる生物の性能と組み合わせの相性、そして何より造り出す魔術師の技量でキメラの強さは変わるらしい。
最高の食材があっても作り手がアレだと結果も変わるだろ?こっちはさらにシビアで、二流の魔術師が最強のキメラを造ったら制御不能の暴走状態であっさり食われた、なんて事もあるらしい。だからおいそれとは造らないとか。
…アレ?バアちゃんってスゲェ魔術師なんかな?魔王とも知り合いだし。
とりあえずここらでお開きになった。夜の森はヤバイからな、早めに帰った方がいい。
「トラン、俺はコイツらと町に帰るわ」
「あいよ。アレ?今日はナナイちゃん見てないな」
「来てないぞ?あっちで留守番してる」
「大丈夫か?たまにさ、スゲェ寂しそうな顔するときあるんだよな、あの子」
「…ありがとな (ぼそり)
大丈夫だろ。バアちゃんやホルンちゃんもいるし」
「…は?バアちゃん達、町にいるの?」
え?と固まるナバル。そういえば机にメモがあったな。なになに
『ホルンをつれて町に買い出しにいってくるよ。2、3日もすれば帰るけど留守番頼んだよ』
「俺だけ留守番かよぉぉぉ!」
俺も魔族の町に行きたかったよチクショウ!!
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