第2話 魔女の実験結果
「どう間違ったのかねえ」
魔女と呼ばれて数百年、あらゆる知識を得たと思っていたけどこの世は本当に不可解で面白いね。
つれ合いに先立たれて数十年、さすがに老いた体はこたえるものだ。
小間使いのつもりでキメラを作り始めたものの、こんなところにも凝り性の自分を再確認することになるとは。
型式違いを2体も製作してしまった。面白かったがね。
予定の一体目は戦士風の男だ。性能を上げるために最上位の魔物、
二体目は格闘戦、魔術に精通した女。こちらも最上位の魔物、
人間の死体など使おうものなら能力ダウンに加え生前の残留思念なんぞが混じったら暴走の危険が大きい。…そもそも趣味じゃないんでね。めんどうは御免だよ。
納得のいくボディが出来たから後は起動を残すのみだ。精霊を降臨させるか悪魔を憑依させるか、どちらも興味深い。
その日は妙な天気だった。強い魔力を乗せた魔風はときたま起きるがこんな嵐は初めてだ。魔風はあらゆる物に影響を及ぼす。強力な魔物はより強く、弱い魔物は魔力に耐えられなくなり爆散する。ろくなもんじゃないね。
それでもキメラの起動式が勝手に起きるほどの魔風など前代未聞。正直「死」を覚悟したもんさ。
どれほどの凶悪な魔人が出来てもおかしくはない。この二体はあの『魔の嵐』を吸収し尽くしたのだから。
対人戦用高火力の攻撃魔法を即時展開、いつでも迎撃できるように準備をする。それがどうだい、予想は外れるもんだね。
目の前にいるのは『凶悪な魔人』とは似ても似つかない白銀のネコ耳幼女と騒がしいクマのぬいぐるみなのだから。
今思えば無防備だとは思うが興味が勝るのはしかたないだろ?
クマのぬいぐるみは不安そうにきょろきょろ見渡してアタシの隣にある姿鏡で自分の姿を見た瞬間
「人ですらねえ!!!!」
と叫んだらひざを着いて泣き出しちまったよ。
そんな大声あげたら案の定、ネコ娘のほうも起きだしたよ。だけどこちらは様子が違う。
きょとんとした顔をしたら赤ん坊のように泣き出した。まだ自我が芽生えてない?
クマのほうはそれに驚き
「お、おいどうした?」
おろおろしながらもネコ娘をあやし始めた。自分より弱そうな固体に気を使い面倒を見る。
悪くないね。良識があると見るべきだろう。むしろ掘り出し物か?そういえば名づけがまだだねえ。思案するとあの人が好きで集めた楽器が目にはいる。
「そうさね、クマを『トラン』、娘を『ホルン』にするかね。
トラン、ホルンを面倒みてやりな」
これからおもしろくなりそうだねえ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます