豪結ー12
連れてこられた先は、倉庫だった。
その間も、
松島の仲間が作ったという、あの発電機のような物はかなりの高性能のようで、堰神を刺したあの場からどこかへ運んだあとでも、その効力は続いていた。
「ビックリしたかい?」
不意に前を歩く松島から声をかけられた。
「あんな物を持っているとは思わなかった。どこから手に入れたんだ?」
「話したいのは山々だが、それを話すと私は責任を取らなければいけなくなるんだ」
――つまり、政府のお偉いさんから貰った物、ということか。もしかしたら、あの機械の性能を確認するために、一時的に貸与された物の可能性がある。
「それで――聞きたいんだけど」
「何でも聞いてくれ。君は、私たちの仲間なんだから」
「ありがとうございます。正直、まだあまり信じられないけど、そう言って貰えると助かります」
あまり気のない返事だったからか、松島はやや落胆したように「ふむ……」と小さく息を吐いた、
「どうすれば、君に信じてもらえるんだろうか……。そもそも、君は、我々のことを信じようとしているんだよね?」
「もちろん――と言いたいところですけど、実際、今まで貴方たちではありませんが、色々とやられているので信じたくとも、手放しで信じることが出来ないんですよ」
「なるほど、一理あるな。では、こちらから手の内を明かすとしよう」
そういうと、松島は携帯を操作してそれを俺に渡して来た。
「これは?」
渡された携帯に映っていたのは、俺たちの
その機械の名は、『ピースメイカー』というらしい。拳銃でも同じ名前のモデルがあるが、こちらは人を殺せないぶん、いくらばかりか平和的だった。
「申し訳ありませんが、こんなものを見せられても俺は高校生なもんで理解できないんですけど」
見る人が見れば理解できることなんだろうけど、あいにく、こちとらただの高校生だ。できることには限度がある。
確かに、手の内を見せてくれはしているんだろうけど、いささか高度な話過ぎてついて行けない。
「理解できるとは思っていない。私だって、そんな機械のことなんて理解していない」
「
「じゃあ、こんな物を貰っても信用は――」
「設計者の欄に目を通してくれ」
言われるがまま、設計図の右下にある設計者の名前までスクロールして拡大する。
「なっ!?」
そこに書かれていた名前を見て驚愕する。
「協力者の名だ。我々には、疑似核研究所の人間も手を取り合い目標に向かい邁進している」
これが、松島の俺から信頼を得るという自信だろう。
その設計者の名の欄には、直筆で『宮前幸子』と――父さんの部下で俺の神器を作ってくれた宮前さんの名前が書かれていた。
「もちろん、彼女は最後までこの機械を使うことに反対していた。これを使うと、神器の核やその使用者――神器遣いにもかなりの負担をかけてしまう。きちんと話し合いで解決するように、と話があったが君が神代学園の序列1位と共にここへ来てしまったからね」
――とすると、大前提が狂ってしまう。
まさか、身内に竜と太陽の神話会が居るとは思っていなかったからだ。なら、先ほどの行動は無意味――。
ガチャッ、と通路からこの部屋に続く扉が開かれると、大柄な強化素体に身を包んだ男に小突かれながら、赤と白のおめでたいカラーリングの
堰神は何も言うことなく、俺を睨んだ。
「――これは、驚いたな。獅童さんもなかなかなもんだと思っていたが、さすがそのご子息といったところだろうか? なかなかに抜け目ない」
松島から発せられる声色は明るいが、目が笑っていなかった。
そりゃそうだ。松島たちの仲間になるために、俺は堰神を
「面白い武器を持っているんだねぇ」
部下から渡されたのは、俺が堰神を刺した半ばから溶け切れた実剣の刀だ。それを松島は手でくるくると回して手遊びをする。
「それで、これはどちらの指示かな?」
笑顔。あくまで笑顔で松島は俺たちを見る。
「俺だ」
「私よ」
ほぼ同時に、声を発した。その瞬間、互いに見合い、「何を言っているんだ」と視線だけで会話した。
「なるほど。どちらも、自分の手柄だと言いたいわけだね」
「違う。発案は俺だ。あの時、
俺の話に被せるように、堰神が口を開こうとしたが、堰神を掴む強化素体の男に腕を捻られ声が出せないでいた。
「まぁ、その線が妥当だろうね。まさか、刀が途中で切れているとは……」
コト、と松島は堰神の切れた刀をテーブルの上に置くと、俺に近づいてきた。
「我々は、真実を話した。君を仲間に入れたいと思う気持ちも本当だ。しかし、君は嘘を吐いた」
静かに俺の肩に松島は手を置いた。
「敵が多い我々は、信頼により強固なつながりを持っている。嘘には罰が必要だ」
「そうは思わないか?」と子供に言い聞かせるような、今までと同じ声色――しかし、やや平坦な音で囁く。
「分かってる。何があっても対処できるようにするのは神器遣いの常だけど、先に嘘を吐いたのは俺だ」
「うん。それでこそ、獅童さんの息子だ」
言い終わると同時に、肩に置いていた松島の手に力が一気に強くなり、次の瞬間には室内に鈍い音が響いた。
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