店長登場!


『兄さん?』


その娘は突然そんな事を言って来た。どういう事だ?ここがシスターバーだからそういう設定なのか?


「ど、どういうことかなぁ〜。そういう設定なのかな〜?」


「とぼけないで。兄さんも薄々気づいてるんでしょ?」


落ち着け御堂一希!こんなに可愛い子があの死んだ妹なんてことは無い!断じて信じない!

吹きでる冷汗をぬぐった。


「全然分からない。俺の妹は二年前に死んだ。だから、そんな妹に会えることはない。うん、ない。ゼッタイに無い!」


「!? に、兄さんなんて大ッ嫌い!」


「お、おい!……行っちまった」


俺の妹を名乗る少女は目に涙を浮かべ、この店の二階に猛ダッシュで逃げていった。


「うーん、まずいことしたかな。ん?こ、これは……」


あの娘が大声を出したせいで、周りの客の視線が痛い……

俺が一体何したっていうんだ。


「す、すいません!うちの|妹(シスター)が!」


さっきまで割れた皿を片付けていたが謝罪をしながら歩いてきた。身なりからしてここの店長ぽい。


「いや、大丈夫です。多少びっくりしましたが」


「ありがとうございます。私はここの店長のマリスです。今回の事は謹んでお詫び申し上げます」


「全然気にしないで下さい。僕も気にしないの

で……」


そう言うと店長ことマリスは笑顔を浮かべる。

そして、周りの視線に気づいたのか俺に笑いかけたまま言った。


「お客様、シスターとの生き別れサービスをご利用頂きありがとうございます!」


マリスは大きな声で言った。多分周りの客に聞こえるようにわざと大きく言ったんだろう。それが聞こえたのか周りの客は「サービスかよ!」「イイなぁ〜」「俺もやりたい、やりたい・・・」

最後やばい声が聞こえたが気にしないでおこう。そんな事があって今の店はさっきまでの雰囲気に戻った。


「ありがとうございます。おかげで助かりました」


「いえ、こちらは来ていただいた以上「」の幸せを守らないと行けませんので」


兄さんを強調する辺り、なんか怒っているらしい。顔を見ても俺と目を合わせようとしない。でも俺は完全被害者だろ?何で俺が怒られるんだ。


「じゃあ取り敢えずお会計で」


「いいんですか?お料理をまだ食べてないですが?」


ハッキリってこんな状況で食べる気にはなれない。


「良いですよ。それで金額は?」


「五百円になります」


「え?もう一回言って?」


「五百円になります」


この世界の硬貨はどうやら日本と同じらしい。なるほどここは日本人が住みやすようだな。ちょっとは見直したぜジジイ

ジジイじゃないわ!とあの世でジジイが言ってる気がするが気のせいだろう。今はこの店長に金を払わないといけない。そうして、俺は自分のズボンのポケットを探る…………ない。ない、ない、ない、ない〜!

と言うか今考えれば分かることだ。この異世界に来て早2時間、そんな俺が金を持ってるわけが無いのだ。


必死になってあるはずも無い金を探しているとマリスが顔を少し近ずけて耳元で囁いてきた。


「兄さん、お金が無いのでしたら払わなくて結構です。今回は私達のシスターが失礼しました。もし宜しかったらまた来て下さい。……今日の夜ぐらいにでも」


「ありがとうございます。今日の夜ですか?良いですけどそれならこの店に泊めてくださいね。俺家ないので……あとアイツとキャラ被るんで兄さんいうな」


「はい、宜しいですよ。あと兄さんはあなたをいじめる為なので辞めません」


なんだこの性根が腐ってる女は、俺この子嫌い


そうして、俺は店を後にしてこの街を見て回ることにした。金を使わないように


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る