フルル、我が道をゆく
弱酸性
それは、突然消えた
ペンギンアイドルユニットPPP(ペパプ)の初ライブが、かばんちゃんとサーバルの協力により無事成功し、マーゲイをマネージャーとして迎えて次回のライブまでの準備をしてる時に事件は起きた。
『ライブも成功したことだし、次回のライブの場所や内容も決めないといけないから一旦レッスンはお休みにしましょう』
PPPメンバーのロイヤルがそう提案すると、
『おぉ、イイぜー』『そうだな』『わかりました』
と他のメンバーも賛成してくれた。ただ、一人のメンバーを除いては。
そのメンバーとはフンボルトペンギンのフルルである。彼女は何故ロイヤルの提案に返答をしなかったのか。答えは明白である。彼女は提案を、そもそも聞いていなかったのだ。
ロイヤルが休みの提案をした時、フルルはあるものに気を取られていた。
『あっ、ちょうちょ』
そう彼女は、周りを飛んでいた蝶に視線を奪われてしまっていた。こうなってしまっては誰の声も届かない。フルルは蝶に導かれるままにPPPの楽屋から飛び出し、そして消えた。
それからしばらく経ち、
『あの~、すみません』
マネージャーになったばかりのマーゲイが休みに何をするか盛り上がっているPPPメンバーに申し訳なさそうに声をかけた。
『どうしたの?』
『先程からフルルさんが見当たらないのですが...』
その報告を聞きPPPメンバーは一度驚きはしたものの、特に取り乱しはしなかった。
『またね』『またかよ』『まただな』『またですね』
マーゲイが心配そうにしていたが、メンバーによるとフルルはマイペースで突然いなくなるのは日常茶飯事であり、お腹が空けば戻ってくるとのことだった。
マーゲイもその説明を受け安心し、直ぐに次のライブ案を提案し始めた。メンバーもそれに聞き入り、誰もがフルルの心配をしなくなった。
フルルは数日戻って来なかった...
突然いなくなっても心配されないフリーダムなフルルは蝶を追ってどこに行ったのか。
彼女は何故か「じゃぱりとしょかん」に着いていた。
『あれはPPPのメンバーですね。どうしたのでしょうか?』
『そうですね、博士。何かライブでトラブルでもあったのでしょうか?』
「じゃぱりとしょかん」の中からフルルを見つけた博士と助手は驚いていた。彼女の突然の来訪は島の主を自称する二人をも不安にさせた。
『突然現れてどうしたのですか?』
『ライブで何かありましたか?』
とフルルに近づき、矢継ぎ早に質問する二人。
『あっ、博士と助手だぁ』
と質問に返答しないフルル。悪気はない、ただ蝶に集中しているだけである。
そして、また蝶を追って何処に消えた。
『何だったのですか、あれは。賢い我々でも理解不能なのです』
『行動の訳がわからなかったですね』
嵐のように現れ、嵐のように去る。博士と助手は頭を抱えていたが、フルルにとって訪れたことに特に理由もない。ただ、気になった蝶を追っていただけなのだから。
二人に余計な心配事を増やさせたフルルはその足取りで「へいげん」に向かっていた。「へいげん」では、
フレンズ達が楽しむ球体を蹴る遊びのルールを無視して、手で持ち運び、何度注意しても直さない傍若無人さをヘラジカだけに感心された。
そこから「こはん」へ。「こはん」では、
『いきなり、家に入ってきてどうしたんすか?何の御用ですか?答えて下さい』
と不安性なビーバーを案の定不安にさせ、
『はじめましてであります。あいさつさせてもらうのであります』
と熱烈なプレーリードッグの歓迎を気にせず受け入れ、更にビーバーを不安から恐怖に落とし込み、去って行った。
次に向かったのは「さばくちほー」であった。ここでもフリーダムな個性を発揮し、遺跡を偶然にも知り合ったフリーダムなスナネコと駆け回り、ツチノコを困らせて、ゴール手前のタイミングで二人とも興味が別のものに移り、勝手に解散した。
『今度はPPPのみんなとくるねー。』
『お前はいらん!』
と別れ際に言われたそうだ。
その後は「じゃんぐるちほー」に赴いた。途中「こうざん」があったはずだが、飛べない鳥なのでカフェには気づかなかった。
「じゃんぐるちほー」では河で遊ぶコツメカワウソを発見し、一緒に壊れた橋の残骸スライダーを数時間楽しんだ。
その光景を見たジャガーは
『何がそんなに楽しいのが、何故あんなに長い時間あそべるのか、全然わからん』
と言われてしまった。
この間、時々は見失いながらも蝶は追い続けていた。その集中力をライブのパフォーマンスに生かさないフルルは省エネである。
「じゃんぐるちほー」の次は「さばんなちほー」である。比較的温暖な環境が得意なフルルでも流石に暑くて疲れたが、何故か定期的に親切なカバが偶然現れ、じゃぱりまんと水を提供してくれた。
『あの子、本当に大丈夫かしら。不安だわ』
「さばんなちほー」を後にするフルルの背中にカバはそう呟いた。
さばんなちほーから出たフルルは環境の変化から調子が良くなり、元気一杯だった。
途中セルリアンと出くわしたが、高速ラッシュを繰り出し、その手数で圧倒した。それを見ていたセルリアンハンター3人がスカウトしたほどである。
そんなお誘いも『PPPだから』や『アイドルなので』と断らず、蝶に気を取られていつの間にかいなくなるというフルルはやっぱりフリーダムである。
ここまで不眠不休で歩き続けたフルルにも疲れが目に見えてきた。そのような時にちょうど「ろっじ」を見つけたので、泊まることに。
ここでは、泊まっていたアミメキリンに
『その白色に黒斑点。あなた、牛のフレンズね!』
と見当違いの指摘をされるが
『そうだったんだ。わかった。フルルー。ウシー』
と受け入れる優しい一面も見せる。もちろん、このあとこの自己紹介をライブで行い会場をざわつかせたのは言うまでもない。
また「ろっじ」の夕食に満足せず、夜中に起きてじゃぱりまんを食べまくったのも言うまでもない。
「ろっじ」に泊まって気づいたと思われるが、もう蝶はどこかに飛んでいなくなっている。この時点でフルルの追うものが無くなったはずなのだが、フルルは気にしていない。彼女は言う、
『さぁ、かえろう』
フルルは自分の元いた場所に帰っていった。途中「ゆきやまちほー」の寒さに心が折れかけたが、親切なキツネ達に温泉に入れさしてもらえた。
『ほゎ~、あったかい!』
思わず出た言葉だった。
そんなこんなでフルルが周りをドッタンバッタン大騒ぎさせた旅は終わりを告げ、皆のいる楽屋に戻れた。
『あれ?いつ帰ってきてたのよ?』『自由かよ』『大丈夫か?』『ケガないですか、フルルさん』
フルルの数日間の行動が気になっていたコウテイは質問した、
『フルル、ここ数日何処に行ってたんだ?心配したぞ』
『ごめんなさい。島をまわってたんだよぉ』
その答えにコウテイは笑いだし、
『島は凄い広いんだよ。相変わらず、フルルは嘘が上手いな。』
と信じなかった。
『ほんとうなんだけどなぁ。まぁ、いいか。そうだ!』
フルルは目一杯の大きな声を出し皆に提案した、
『ゆうえんちでライブしたいー!』
『『え~~~~~~~!?』』
フルルの突然の提案に驚いているとマーゲイがボスを抱えてきて楽屋に飛び込んできた。
『皆さん、大変です!かばんちゃんたちのピンチです!!』
フルルは直ぐに言った。
『みんなたすけにいこうよ。ともだちをまもるのもアイドルのしごとだよぉ。』
フルルは、マイペースながらやるときはやる子なのです。
フルル、我が道をゆく 弱酸性 @kana704
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
下書きフレンズ/ふせんさん
★0 二次創作:けものフレンズ 連載中 7話
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます