9.依頼元は……
「鳳凰宮に?」
十妖老首席は「朱雀流」という山城にある流派である。最古の流派の一つであり、古くは「鳳凰宮」と名乗っていた。
それが時代の推移に伴い、今の流派名となったが、元の名前は統帥の別称として未だに残っている。
郁乃はその「鳳凰宮」の一人息子であり、いずれは同じ地位に納まる立場だった。
「本部にいる、うちの門下生から情報があったんだよね」
「お前のところって、本部に何人出してんの?」
「えーっと、十人ぐらいかな? 情報を提供したのは、経理局にいる局員」
「あぁ、予算とか組んでるところか」
「うん。俺も本部の内情ってあまり知らないんだけど、経理局ってお金を扱う都合上、結構セキュリティの高い部屋になっているらしいんだ」
「だろうな」
青也は頭は悪いが、そのぐらいは理解出来る。
自身の流派にも経理担当はいて、金銭の類は常に厳重な金庫の中に入れている。大事なものは大切に。それは妖魔士であるか否かとは別問題である。
「それがある日、セキュリティシステムが突然壊れちゃったんだ。といってもプログラムエラーとかじゃないよ。出入り口にある、自動施錠装置が破壊されていたんだ」
「破壊って? 誰かがぶっ壊したのか?」
「最初は皆、そう思っていたらしいよ。でも出入り口の鍵が壊されていたのに、局内に侵入した痕跡はなかったんだ。おかしいと思って、うちの門下生がその装置を調べたら」
郁乃は辺りを警戒しながら、小声でその続きを口にした。
「妖気で破壊された痕跡が見つかったんだよ」
「……なぁ、確か此処って」
「うん。本部の中では俺達は妖気を使えないことになっている」
妖魔士が誰しも所有する妖気は、人によって所有量や性質が異なる。
連盟本部は複数の流派の人間が集まることから、不要な争いや警戒を持たせないために、敷地内に特殊な「式」を張って、妖気が使えないようにしている。
つまり、その妖気は人間でない可能性が高い。
「勿論、マシラも入れないように対策はしてあるよ。でもそれは所詮、外から来た場合の話。歪みが発生すれば、マシラはどこでも現れる」
「つまり、本部内にマシラが出る原因があるってことか? でもそれなら内部で処理出来るんじゃねぇの?」
「当然うちの門下生もそう考えて、局長を通じて上層部に報告をした。それに対しての回答は……」
――経理局の装置が破損した件に関しては、装置の不具合とする。
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