第15話「禁断の力」
逆立つ髪は長く伸びて、まるで燃え盛る炎だ。
レヴィール・ファルトゥリムと
脳裏に響くレヴィールの声が、操を宙へと
『操、心せよ……今までのようにはいかぬ。ワシがいかに最強であろうとも、シングル・ナンバーズとの戦い、
「レヴィールさん……でも僕、やってみます!」
空中で操は、不敵な笑みを浮かべるセイスに
彼女は、鼻で笑って肩を
「おいおい、おふくろよぉ……まさか融合してその強さとか、マジでありえねーんだけど。でもっ、オレは手を抜かねえ! 手加減無用……来いっ! 我が魂の
セイスが振り上げた両手が、中空に巨大な魔法陣を浮かび上がらせる。
「レヴィールさんっ! あ、あれは……ゲームや漫画で見たことありますっ! あれは!」
『
「わかってるよ、レヴィールさん。僕はただの人間で、あれはきっと伝説の魔獣……でも!」
不機嫌そうに
巨大な翼を広げる、
それは操には、どこか悲鳴のようにも聴こえた。
「るせぇな、さっさとオレを受け入れな! おう、ナナ! 邪魔が入らねえように見張ってな……オレは今日こそ、おふくろを超えるっ! いくぜっ、融合……オラァ!」
同時に、グリフォンの姿が震えて全身の毛を逆立てる。もう一人のシングル・ナンバーズ、ナナが見守る中で……
グリフォンの首が徐々に、姿を変えてゆく。
そこには、裸体を羽毛で
上はセイス、下はグリフォン……まるで神話の時代のスフィンクスである。
「ハッ!
「なんて人だ、凄い悪役っぽい……それも、よくある2クールアニメの中盤で出て来る、訳知り顔な四天王とか五人衆とかの
「……なに言ってるかわかんねえが、バカにしてんのは感じるぜ。覚悟しやがれっ!」
セイスがたちまち風となる。
目に追えぬその影が、まるで点から点への瞬間移動のように
当然だが、操は全くその動きについていけない。
追いかけ空を飛ぶことでやっとなのだ。その身に招いた強大な魔力を、全く使い切れていない。制御するので手一杯である。帝国の王宮上空で戦った時もそうだった。だが、あの時は内なるレヴィールと共に
今は違う……本当に力を結集し、それを使う技と知恵が必要だった。
『イメージじゃ、操! ワシとお
「イメージ……想像して……レヴィールさん!」
『なんじゃ!』
「やっぱり、スタイル抜群です! 胸もお尻も、こんなに」
『このっ、あほう! 当たり前のことを言うでない。来るぞっ!』
鋭い真空の刃が、無数に放たれた。
魔法の
ギリギリで避けるも、遅れてたなびく髪の毛先が細切れになる。
圧倒的な機動力と攻撃力に
「レヴィールさんっ! 魔法処女は確か、高い魔法防御力を持っていると」
『そうじゃ、そして高レベルの者ほど強力な
「レヴィールさんの力、伝説……その結界! 信じてみますっ!」
先日、日常で触れ合う
操は見えない大地を蹴るようにして、光の尾を引きセイスを追った。
たちまち操は、鋭い風の刃を無数に浴びた。
周囲で結界の光が魔法と打ち消し合う。
だが、自ら飛び込むことで徐々にセイスへと肉薄してゆく。
「へえ、バカじゃねえんだな。おふくろの結界は
「常に攻撃に向かっていけば、その先にお前がいる
操が突き出す両手から、
セイスが避けた背後へ突き抜け、そのまま遠くで雲が消し飛んだ。
威力を解放しても、当たらない。
ならばと操は、頭の中で叫ぶレヴィールの言葉に従う。
威力を絞って、速射力をあげた火炎が無数にバラ
だが、面での
だが、セイスは退屈そうに天空に止まると、操を見下ろし笑った。
「そんな威力じゃ、オレの結界は抜けねえ! 威力を上げると数は撃てないよなあ? それがお前の重魂の弱さ、キャパシティの小ささなんだよ」
「そうか……つまり、水量と
「そういうこった。でも、まあ……高レベルの魔法処女同士が
セイスはゆっくり、操の前に降りてくる。
そして、ニヤリと口元を
「おふくろよぉ……ここは一つ、
「神代……禁術?」
すぐにレヴィールの言葉が
説明してくれる声は、
『神代禁術とは、高レベルの魔法処女だけが使える太古の魔法……旧世紀の言語を圧縮した呪文の
「強過ぎる禁じ手ってこと?」
『ワシが生まれてより六百年、未だに実戦では数十回しか使用されておらん。そして、神代禁術同士をぶつければ、どちらかは必ずこの世から消滅する。そういう魔法じゃ』
魔法処女同士の一騎打ちでは、時として力が
それは、選ばれし者のみが行使できる最強魔法。
魔法処女が魔力を振るうのとは、全く違う破壊の力だ。
かつてこの世を支配した神々が残した、巨大なシステム……
高い魔力を持つ魔法処女が、同じく高レベルの重魂を得て初めて可能になる必殺技である。
「っしゃあ、行くぜっ! オレの
周囲の空気が一変して、あっという間に異界のような雰囲気に飲み込まれてゆく。
セイスを中心に、肌を震わす
操は自分の中で叫ぶレヴィールの言葉をそのまま口にする。
遠くに浮いている人影は、操の言葉にビクリと固くなった。
「えっと、ナナさん!」
「はっ、はいぃ! ……な、なんでしょうかぁ」
「レヴィールさんが、神代禁術を使うから……この村を結界で守って欲しいって。神代禁術同士をぶつけ合えば、世界の一部が消えてしまうことだってあるから」
「う、うんっ! わかったよぉ、ママ!」
不気味な鳴動と共に、セイスの全身から発する闘気が満ち満ちてゆく。
晴れ渡る空でさえ、暗雲が垂れこめる中で光を失っていった。
操の不安を、心の中のレヴィールが
彼女の力を信じ、その力を表現するために操も気持ちを奮い立たせた。
そして……神話の時代に全てを滅ぼした、
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