第14話「シングル・ナンバーズと呼ばれた娘達」
彼が
そして、立ち尽くすレヴィールの目の前に……巨大なクレーターが形成されていた。そこにあったであろう、村の家々は
その中心で、ゆっくりと人影が立ち上がる。
それは、全裸の少女だ。
豊かな起伏の長身とは裏腹に、短く切りそろえたブラウンの髪は少年のようだ。
明らかに
「よぉ……会いたかったぜえ? おふくろ!」
操は耳を疑った。
レヴィールが、おふくろ……母親?
だが、肩越しに振り返るレヴィールは口早に説明してくれる。心なしかその顔は赤かった。声音もどこか、弁明と言い訳の色に
「操、これは、あれじゃ! その……ええい、
「ま、まあ……レヴィールさんは六百年も生きてるんだ、娘さんの一人や二人は」
「たわけがっ! ワシはまだ処女じゃ! 魔法処女は皆、純潔の
たわわな胸の実りを揺らして、ゆっくりとセイスは歩み寄ってくる。
見事に
彼女はクレーターから出てくると、レヴィールの前で肩を
「オレ達シングルナンバーズは、全員あんたから……おふくろから生まれた。通常の魔法処女と違って、おふくろの体組織から
「なっ、なぜ僕の名を」
「おふくろの
操はレヴィールの力を解放させるための重魂……
だが、すぐにレヴィールが声を張り上げる。
「操への
「おふくろ、そんなチンチクリンのなにがいいんだぁ?」
「……ワシにもわからぬ」
「ははっ、
「違う、ワシはわからぬのじゃ。だが、ワシは操を選んでよいかったと思うておる!
操は改めて衝撃を受けた。
ただ戦って負けるために選ばれた、あらゆる世界で最弱な存在……それが
だが、レヴィールはそんな操を受け入れてくれた。
そして、今は負けるためではなく、二人で生きるために操を重魂として認めてくれている。
急いで操はレヴィールの隣に駆け寄り、声を張り上げた。
「ええと、セイスさん? レヴィールさんのことは見逃してくださいっ! どうしてもと言うなら……僕はレヴィールさんと一緒に、戦わなければならない!」
「はぁ? お前が? おいおい、冗談きついぜ。……なに、おふくろとマジでデキてんの?」
「まだできません! 健全な男女交際は、まず交換日記から始めるべきと思いますから!」
「……たりぃな、クソが。おーい、ナナ! さっさと始めようぜ、手伝えよ!」
不意にセイスは、空を見上げて叫ぶ。
その視線の先へと首を巡らせ、操は絶句した。
空には、もう一人の少女が浮かんでいた。
やたらとレースとフリルが小うるさいエプロンドレスを着ている。間違いなく魔法処女……恐らくシングル・ナンバーズだ。
彼女を見詰めて、隣のレヴィールも目元を険しくする。
「……シリアル№000000007、ナナ。お主も来ておったか」
ナナと呼ばれた少女は、不安げな表情で宙を
不思議と敵意は感じない。
どこかおどおどした表情で、長い長い
「あっ、ああ、あのね、ママ……えとね、んと……お、おはようございますっ!」
突然、ナナは上空で見を正すと……ペコリと頭を下げた。
突然のことに、操は肩透かしを食らったように目を丸くする。
だが、形良い
「
「うんっ! ナナもだよ、ママ……それでね、えと……帝都に、帰ろう? 迎えに来たの。ナナが会いに行くって言ったら、セイスがついてきちゃって」
セイスは
やはり、ナナもレヴィールのことを母親と認識しているらしい。
しかし、セイスと違って戦う意志も態度も見せようとしなかった。
そして、レヴィールはこの状況でも優雅な余裕を取り戻す。
「わかったわかった、ナナ。しばしそこで待っておれ。して……セイス。ここでなにをした……この村に、なにを。ここにおった者達を、お主まさか」
「ああ? 決まってんじゃん。一瞬だったぜ? 重魂と一つになるまでもねえ」
「……帝国の
「なに言ってんだ、おふくろが悪いんだぜ? なんでオレ達から、帝国から逃げんだよ。……それはさあ! オレには勝ち逃げなんだよ! ムカつくぜっ!」
セイスの全身から覇気が
強い光を灯す瞳は、まっすぐにセイスを射抜いていた。
荒れ狂う濁流とかした大気の中で、銀色の髪が乱れて広がる。
「セイス、ワシはもう魔法処女は嫌じゃと思ったし、操の手を借りて負けようと思った。だが、操はそんなワシに女としての生き方を教えてくれるのじゃ」
「……ほんで?」
「ワシはもう、シリアル・オーナインと呼ばれた祖銀の魔女ではいられぬ。じゃが……帝国の臣民を脅かす者に
セイスが片眉を跳ね上げ、一歩下がる。
操も初めて見る……こんなにもレヴィールが怒るのを。
すぐに彼女は、空を見上げて叫んだ。
「ナナ! お主の力で村を守れ。ワシはこれからセイスと戦う……周囲に被害が出ぬよう、お主がこの村を力で覆うのじゃ!」
「う、うんっ! わかったよママ。ナナ、頑張るっ! ……それでね、んとね」
「わかっておる、お主のことを怒りはせん。皇帝に、キルシュレイラに言われて来たのであろ? ワシとて帝国の魔法処女、承知のこと。お主が
「ママ……で、でも……ううん、わかったよぉ! 今はこの村、ナナが守るねっ!」
不意にレヴィールは、操の手を握ってくる。
操もまた、彼女の手を握り返した。
本気の力を解放するレヴィールを前に、セイスが歯ぎしりに叫ぶ。
「へへっ、百年前の借りを返してやる……もう手前ぇの時代は終わったんだよ、おふくろ! オレが、オレ達シングルナンバーズが終わらせてやるっ!」
「
レヴィールは、握る操の手を自らの胸に招く。
布越しに柔らかな質量のたわわさに触れた時……操は再び融合の時を迎える。最強の魔法処女と、最弱の重魂。その二人が一つになる戦いが始まろうとしていた。
ゆっくりと操の身体が、レヴィールのように美しい少女へと
レヴィールはどこか
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