第18話
葉野君には、離婚せずに奥さんとやり直して欲しいと思った。前を向いて……。
けれどやっぱり二十年後も葉野君への気持ちが消えない。
葉野君の決意の別居、私もきちんとしなければ。
『申し訳ないけれど、貴方とはやっぱりやり直せない。私は私の人生を歩きたいから。子供達とはこれからも変わらず会って下さい。』
夫へのメール。私のケジメだ。
夫は子供達の父親に変わりないから、会う事は拒まない。けれどもう一度家族にはどうしてもなれない。
結婚が失敗だったとは思わないけれど、相性は良くなかったのかな。
スマホをテーブルの上に置き、子供達のおやつを作った。
母としての手は抜きたくない。だけど女としてもう一度生きたい。今、そう思った。
葉野君の奥さんの事も解決できないけれど、二十年後のかたおもいを叶えたい自分がいる。身勝手かも知れないけれど。
『もしもし葉野君? うん。 いつ会えるかなと思って……』
葉野君への電話は、私をドキドキさせる。忘れていた気持ちを思い出させる。
心地良い想いが胸に宿って。
これから先解決していかなければならない物はあるけれど、一つ一つクリアしていこう。
夕飯の時、メールが鳴った。
『オレは納得できないけど、子供の父親だから、今まで通りにする。 考え変わったら直ぐ言って欲しい』
夫はまだ完全に納得していない様だ。
しかしこればっかりは仕方ない……。
「旦那さん諦めてないの? より戻したいって」
久しぶりに葉野君とお酒を飲んだ。
「まぁなんとなくの納得かな? 分からないけど。 あっちも彼女いるしね」
「保険て事?」
「子供可愛いさじゃない?」
「確かに子供は可愛いけどさ。 やり直したいまで言わないでしょ?」
「かなぁ。 彼女いるしね」
「結婚って言われて嫌になったか、 大原が恋しくなったか……」
「あり得ない。 恋しいとか」
ビールを一口飲んで笑った。
「しかしまぁもう言わないで欲しいね、 本当に……」
「何で?」
「新しい人生歩めないから」
真面目な顔をしてそう言った。
「新しい人生……」
「そう新しい人生。 一緒に歩こう」
「できたらいいね」
素直にそう思った。諦めるとか何だとかはいらない。二人の気持ちが重なったなら、それでいい。
繋がる想い。重なる影。ぼんやり見つめる私の好きな人……。
「まだ色々あるけどなぁ」
葉野君はビールをぐっと飲んでため息ついた。
……本当にそうだ。この先を思うとブルーになるが、今日はこの瞬間を楽しもう。
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