第12話
葉野君は優しい人だ。それに明るく前向きに物事を考える。
そんな人と一緒に人生を歩めたらどんなにいいか……。
だけど、そんな優しさが時にはあだになるんだよ?分かるかな。
私は友達になれればそれでいい。それ以上は望ましい。
密かにそう決めたけど。好きな気持ちはそのままに、胸の奥にしまう。
葉野君の離婚はやはり進まない……。
奥さんだってやり直したいのだろう。
けれど時折くる電話で、私の事を想っていると言ってくれる。
それが切なく悲しい。
私の叶わぬ片想い。それ以上望まないと決めた。
『葉野君さ。 家族を大事にしなよ。 私達は同級生で友達。 それ以上になったらいけないんだよ……。 葉野君と友達でいられるだけで、 私は十分だよ』
『……それでいいの? 本当にいいの?』
『欲張りになったらいけないよ。 だから……。 ね?』
好きだからこそ、それ以上を望まない。
大切だからこそ、傷つけたくない。
二十年後の私の片想い。私の好きな人。
幸せでいてほしい。
それが願いだ。
『離婚しても、 一緒になれない?』
『奥さんは望んでないよ?』
『オレの気持ちは?』
『家庭を大切にして』
『とにかく……。 まだ結論出さないでよ……』
無駄だよ。きっと。離婚はしない。
今ならまだ大丈夫だから。
ねっとりとした暑い夏の始まり。
あんまりドロドロしたくはないな。
『葉野君の気持ちは嬉しいよ? だけど私は友達になれればいいだけだから。 だから……』
これ以上何かを期待したくない。
私の気持ち揺らぎたくないから。
『話し合いしてるから。 待っててよ』
葉野君の気持ち……。嬉しいけど、誰かを傷付けてまで、何かを犠牲にしてまで離婚する意味があるのだろうか。
ぼんやり窓の外に目を見やる。
白い雲がモクモクしていて、隙間から太陽の陽射しが差し込んでいた。
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