第11話
小学校時代のアルバムを一人見ながら、改めて葉野君との事を考えた。
接点などなかった私達。唯一の思い出は六年生の時、授業で作ったコマの事だ。
コマ回しのコマ……。
木を削り一から作るのだが、不器用な私。上手くコマが回らない。
『回らないの? 貸してみて。 絶対回る様にするから』
『え? いいよ。 別に……』
『貸してみて』
私からコマを取り、本体から棒を取り出し、短く切った。
何をいきなり……。
そう思いつつ、また本体に棒をさした。
そしてヒモを巻き回す。
『回った……。 ありがとう』
些細な事だが嬉しかった。
何故葉野君がそんな事をしたのかは分からないし、もう忘れただろう。
けれど私は今でも覚えている。
好きな人にそんな事をしてもらったのだから。
大した思い出などないけれど、小学校時代の思い出を共有できる存在。
"思い出の共有"
葉野君の言葉だ。
確かに接点など余りなかった私達。
けれど当時の思い出を共有できる人に変わりない。
だからこそ今更ながらもあの頃の私が顔を出すのだ。
唯の友達でもいい。あの頃を語れる存在でもいい。
会って話がしたい。そんな事を願った。
友達と言うより、単なる同級生なのだから、友達からやり直したい。
それさえも叶わぬ夢なのだろか。
かたおもい。だけど友達。
それ以上望むのは欲張りな話。
私はアルバムをめくりながらそんな事を思った。
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