第10話

葉野君の離婚は、結局ないのだろうか。

中途半端な私の気持ち。どうしてくれる……。


『ごめん……としか言えない』


『もういいよ? 離婚やめなよ』


『いや、 でも……』



全く口先ばっかりじゃない。離婚進まないまま、半月が経った。


確かにそういうのは時間がかかる。お互い納得してれば協議離婚、いわゆる普通の離婚で済むのだが、どちらかが弁護士など入りれたりすると、話し合いに時間がかかる。

浮気だなんだに及べば尚更だ。


私の場合は協議離婚だったが、後から色々こじれた。

浮気相手と旦那の証拠集めなど。慰謝料変わるしね。相手からも立証されれば幾らか取れる。


葉野君の奥さんだって、慰謝料多く貰いたのかも。だから浮気してるとか言ったり……。


でも中々立証は難しいし、時間もかかる。

私はメール復元、着信履歴、会社の人の証言など駆使した。


相手の親にも言ったし。

虚しいだけだったけど。夫が戻る訳でもないから。でも、子供を育てていく上ではやはり必要な事だ。


だから分かる気がする……。


けど、ありもしない事を言われてもねぇ。


気持ちが傾いたは浮気にならない。相手あって初めて浮気になる。

だから、いくら私に言っても無駄なのだ。


葉野君に気持ちはない訳ではない。むしろある。でも精神的なだけだから。気持ちの上だけだから。


人を好きだと思ってしまうのを浮気と言われても困るのだ。



『少し会えないかな?』


ずっと会っていなかった私達。でも今会うのは不利になる……。


『ダメだよ。 今は』



一度会いたいと思ってしまったら、もっと会いたいってなるから。本気なら今はダメ……。


会えない時間が辛いけど。




そんなある日。仕事帰りの最寄り駅で見知らぬ女の人に呼び止められた。


「大原さん、 ですか……」


「どちら様でしょう?」


「葉野の家内です。 ごめんなさい。 急に……」



ドキリとした。何故こんな所に?それに何故私だって……。


「アルバム見ました。 面影あったから」


「そうですか……。 で、 何か?」


「こんな事言いたくないんですが、 以前もお話した通り、 私は主人と別れたくないんです。 分かりますよね? だから、 もう主人と連絡しないで欲しいと……」



着信履歴請求か。

今は余りしないけど、以前私もした。履歴の請求。弁護士通せばできる……。



「私と葉野君は単なる同級生です。 同窓会でお話して懐かしくなっただけです。 何の感情もありません」


「随分頻繁にお電話してるから」


「ああ。 当時の担任の先生が色々心配したんですよ。 葉野君の事。 だから私に様子を訊いたりして……」


「ご自分ですればいいのに」


「先生、 ちょっと気まずくなったらしくて。 詳しくは分からないけど自分では話せないらしくて。 私は単なる連絡係ですので……」



そう言って別れた。


侮れないな。あの奥さん……。


ひとまず落ち着くまでやっぱり連絡控えよう。いや、やめよう。


やめるしかない……。


私の気持ち。かたおもい。二十年間後も実らない。



『やっぱり電話やめておこうよ。 奥さん手強い……』


『そうか……。 時間かかるけど仕方ないな』



結局電話も無しにした。メールなどはもってのほかだ。


仕方ないと自分に何度言い聞かせても、会いたいと思ってしまうまでになった私の気持ち……。



「こんな筈じゃなかったんだけどなぁ」


一人呟く言葉は、虚しさに変わる。


やはり鵜呑みにしなきゃ良かったんだ。

再会なんてやめれば良かったんだ。


今更ながらに落ち込んだ。

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