第21話 雨の日

 いつからだっただろうか、雨が降らなくな

ってしまったのは。


 暫らくは「異常気象」だとか「何十年ぶり

の」とかの言葉がニュースで並んでいたがそ

れが1か月を超えたあたりから、本当にただ

事ではない事態だと誰もが認識し始めた。


 水不足で各地のダムが貯水率ゼロになり、

川も底が見えてしまう箇所がどんどん増えて

いった。


 川の底が露出し出すと別のニュースも流れ

出した。今まで発見されなかった遺体があち

らこちらで白骨となってみつかったのだ。そ

れにより、今まで「失踪」として認識されて

いた人が「殺人事件」もしくは「自殺」とし

て処理されていった。ただ捜査は進まなかっ

た。空前絶後の異常気象でそれどころではな

かったのだ。


 湧き水も全く枯れてしまった。日本に『乾

季』ができた、とみんなが認識しなければな

らなくなってしまった。


 飲料水の輸入が始まった。海水から真水を

作る浄水器もどんでもなく売れに売れまくっ

て生産が追い付かずにプレミアがつき高額で

闇取引が横行してしまった。


 政府も全く機能していなかった。台風も梅

雨も来ない。行政は無策だった。世間はパニ

ック状態になっていた。


 そして、雨が降らなくなってから四か月が

すぎたあの日。なんの前ぶりもなく雨が降り

出した。


 政府はこの日を「雨の日」として祝日にし

たのは言うまでもない。


 降り出してから、今度は数週間降り続き大

雨による災害が多発したし、次の年からは乾

季は来なかった。


 今となっては「雨の日」が何の祝日なのか

知る人は少ない。 

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