第20話 ザ・フライング・ダイナソー

『ザ・フライング・ダイナソー』

                綾野祐介


 大阪市此花区にあるUSJは今や押しも押

されぬテーマパークの雄だ。


 最近では、プテラノドンに背中を掴まれた

ような態勢で空を駆け巡る「ザ・フライング

・ダイナソー」が人気になって長蛇の列がで

きている。


 私は絶叫物は苦手なので、その手のものは

避けて別のアトラクションを楽しんでいた。


 ふと、頭上で音がしたので見てみると「ザ

・フライング・ダイナソー」が通過したのだ

が乗客が見当たらなかった。


「なんだ、誰も乗せてないな。」


 一緒に行った友人に声をかけると、その友

人も同じものを見上げていたが何も言わず黙

っていた。


 一通り楽しんでの帰り道。ふと友人が話し

始めた。


「さっき、誰も乗ってないコースターが動い

てたろ?」


「ああ、あれ変だったよな。」


「実は乗ってたんだよ。」


「えっ?」


「だから、乗ってたの。」


「誰が?」


「俺みたいな者にしか見えない人が。」


 それ以上は聞けなかった。





 

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