第10話 遅刻

「やぁ。」


「やぁ、じゃないだろ!」


「ごめん、ごめん、ちょっと出るときに問題

が起こってしまってさ、悪気はないんだ。そ

う怒らないでよ。」


 本当にすまなさそうに謝るので私は少し許

す気になった。ただ、遅刻するとどうなるの

かは、いつも十分説明している筈だった。


「今日が何の日か判っているだろう、ただの

遅刻では済まされないんだぞ。」


「だから、判っているって。遅れているんだ

から早速始めようよ。」


「仕方ない、始めるとしようか。では、いく

ぞ、ジャンケン・ポン」


 私がパーを出した。彼の者はグーだ。


「私の勝ちだな。」


「あ~、また負けた。最近負けが続いている

よなぁ。君、強すぎない?」


「時の運だと諦めるのだな。では、今回は私

の勝った歴史になるよう調整させてもらう。」


「そういう約束だからね。よおし、次は負け

ないぞ。ところで、いつも思うんだけど君っ

て旧神くんって呼んでるけどちゃんとした名

前は無いの?」


「私は固有名詞で呼ばれる存在であって個別

の名前のようなものは無い。創造主とも呼ば

れたりするがな。」


「創造主かぁ、ちょっとカッコいいね。でも、

僕も万物の王とかの二つ名があるんだけど実

際にはなんか全然偉くないんだよなぁ。」


「お前が勝った時に創った宇宙ではお前が創

造主になるのだろうに。」


「それはそうなんだけどねぇ。あんまり勝て

ないし。」



「ところで、出るときに問題が起こったとい

うのは何が起こったというのだ?」


「ああ、それね。出かけるときに上下のコー

ディネートがちょっと気に入らなかったもの

だから選び直していたの。」


「そ、そんなことで。。。。。」


「カラーコーディネートは大切なんだよ、間

違っちゃうと一日ブルーになるんだ。」



 私が勝ったのでこの宇宙では知性を奪って

白痴の王とも呼ばれる存在にするのだが、こ

いつは最初から知性を持ち合わせていないの

ではないか、と訝しがる旧神だった。

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