第5話 投稿

 中学生の頃から小説家になることが夢だっ

た。当時は推理小説に嵌っていたのでトリッ

クばかりを考えていた。それからヒロイック

ファンタジーにのめり込み新しい世界観を創

造することに夢中になった。時代小説に傾倒

していた頃は自らの知識の無さからほぼ小説

家になる夢は諦めていたものだ。


 最後にホラー小説に行き着いた。この頃か

らだろうか、また少しずつ小説を書き始めて

いた。初めての長編も完成させた。但し長編

は今のところ一作のみだが。


 掌編と呼ばれる一作品800字までの超短

編小説の投稿も最近は始めている。そして先

日初めて採用されて本になった。自分が書い

た文章が商業ベースで活字になって本屋で売

られているのは画期的なことだ。心の底から

嬉しかった。


 たくさんの友人が家に来てくれていた。出

版の事をこちらから連絡をしたわけでもない

のに祝いに来てくれたようだ。かなりの期間

会っていない友人の顔も見える。なんだかみ

んな沈んだ顔をしているが最近景気が悪いの

で仕方ない。


「みんなありがとう、これからも採用される

ように頑張って投稿するよ。」


 ある親友の顔を見つけてそう言った。親友

はなぜだか悲しそうな顔をした。


 親友はため息をついて、こう言った。


「俺にはお前が見えているし声も聞こえるか

ら、言うけどお前のお葬式はたった今終った

んだよ。」


 私はもう二度と投稿できないようだ。


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