第6話 どん、どん、どん。

「どん、どん、どん。」


 壁を叩く音がする。


 叩く音、というよりは足音のようにも聞こ

える。子供が走っているかのようだ。


「響いてますよ、少し静かにしてもらえませ

んか?」と隣に向かって少し大きめの声をか

けた。


「すいません、大人しくさせます。」


 女の人の声で返事があった。壁は薄い。結

構声が通るみたいだ。


「どん、どん、どん。」


 また音がする。


「●●ちゃん、大人しくしなさい。」


 さっきの女の人の声がする。


『どん、どん、どん。』


 上から下へ、若しくは下から上へ、右から

左へ、若しくは左から右へ、壁を叩く音。


「どん、どん、どん。」


「どんどんと走り回らないで、お隣さんにご

迷惑でしょ。」子供を叱る声。


「どん、どん、どん。」


 どう聞いても子供が壁を走り回る音だった。 



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