第15話 魔法への私的見解

 おはようございます。いい朝ですね~。


 実際にはおてんとうさまはまだお目見えではないけど、まあこの空模様なら快晴間違いなしなので問題ナッシング。


 はい!ウザいですか~?ウザいですね~。このテンション!


 深夜テンションならぬ朝チュンテンションでございます!


 てなわけで昨日の深夜から今まで休憩をはさみつつ、いろんな技の開発や調整などやってはいますがね。これがもうほんと大変!


 何が大変かというと、まず手!これすごく曲者です!


 ユミルンの時はぬいぐるみにありがちな指なしでつかむときは覆う感じに伸ばしていた手。これを指ありでできるようになるのが最終目標なわけですよ。できれば五本ね。


 けれど三日前にした三本指のグーサイン以降、指の本数を増やすことができず、その三本指でさえちゃんと動かすのにかなり苦労する。


 本数増加に関してはちょっとの間だけ四本になるも、すぐに維持できずに三本に戻ってしまうのだ。三本指で動かすことに至っては人差し指と親指が自由に動くものの、小指に当たる三本目の指がうまく機能しない。はっきり言って邪魔ですらあった。


 この五本指計画は早々に解決するだろうと思っていただけに少しショックだった。


 なにせ元は人間。つまり五本指で日常生活を送ってきた身としてはやはり指がご本ないと気持ち悪いわけで。と言うか五本指でないとできないことが割とあったりするから早めに実兼できないと後々困るのだ。


 持つときに安定しなかったり、投げる時にスナップをかけられなかったり。他にも細かい作業をするときは指が重要になってくる。


 今はまだそれほど重要ではないにしろ、後々必ずほしくなるであろう指は必ず解決しておきたい。


 ・・・まあ投擲の件に関してはおそらく自分の運動神経が悪いことが原因であるともいえる。


 前世で運動が苦手だった私は体力テストでそれはそれは悲惨な結果をたたき出していた。なにせ校内ワースト1位の座をほしいままにしていたのだから。いや別にほしくなかったけど。


 そんな私がスライムになったとはいえ、いやむしろそんな不慣れな体で元の世界と同じように投げようとすればそれほど飛ばないのは必定ということで。


 たぶん美景に任せたほうがよほど遠くへ飛ぶのではないだろうかと思う。


 しかし、体担当を最初に言い出したのは私なわけで、ならばこそこんな中途半端な状況で交代というのはちょっと恥ずかしい。


 それに車形態や異空間収納でそれなりに結果を出しているので投擲などの件についてはご容赦願いたい。


 まあそんなこんなでいろいろ考えた末、「だったらいっそのこと投げるという発想から離れてみてはどうか」という考えのもと編み出した技が、今調整している“竹筒水鉄砲・石式”である。


 この鉄砲は正面の体の一部を銃口にして、その中に一つの石を入れる。そしてその石を底から一気に押し出して射出するという仕組みだ。


 なお押し出す際に気を付けなければならないのは、言うまでもなくいかに早く押し出すかである。出ないとただ単に銃口から医師が零れ落ちる、またはそれこそ園児がいじけて石を投げてるくらいの飛距離しか出せない。


 と言うことでこれを何度も何度も繰り返し練習&調整を加えてきた。


 そして少し他の調整をしていたのを終えて今。再度鉄砲の練習をしようと思う。


 (美景。)


(なに?)


(撃っても良い?)


(大丈夫!)


 よし。許可も得られたので早速チャレンジ!


 まずは適当な大きさの銃口を作り、そこに銃口に入りそうな手ごろな石を探して入れる。さらに銃口を先端のほうから少しずつ狭めて石ころの大きさ、形に合わせていく。


 あまりゆるゆるだと力が伝わりにくく、さらに狙いも定まらない。


 やがて準備を終えた私は石を押し出すイメージを固め、いざ!


 ポン!


 そんなかわいい音とは裏腹にかなりのスピードで飛んだ石は、けれどもすぐに地面にぶち当たり、結局2メートルほどしか飛ばなかった。


 やっぱり石がフォークボールのように落ちている。


 なぜかは知らないけど射出した際にかなりの下回転がかかっているようで、弾速は速いものの失速する前に地面に突き刺さるようにして落ちてしまうのである。


 やっぱりリアルの拳銃のように回転をかけるみたいな工夫をしないといけないのだろうか。


 でもそれだと石にもな細工しないといけないし、でなければ銃口をもっと工夫する必要がある。う~む。それでなくとも準備にすこし時間がかかるのだから、なるべくお手軽な感じで成功させたいんだけどな~。


 うんうんと頭を悩ませていると、途端に体の内に何か魔力の流れのようなものを感じた。


 魔力。魔力か~。


 魔法で射出系の魔法があるけど、あれってどうやって前に進んでるんだろう。


 普通は現世のように銃に工夫が凝らしてあって、回転がかかるようになっており、そのおかげで推進力を保ったまま直進することができる。


 けれど魔法でそれをやるだろうか。魔法とは人の身では起こせない超常の力であり、それだけで強力な自然の力である。


 ならばそんな自然の力が摩擦や推進力だに負けて狙いが定まらないなんてことはあるのだろうか。


 この世界での魔法を見たことはないけれど、けど自然の力を応用するような力なら、その周りにある自然に阻害されるような欠陥のある力など長く栄えるはずがないと思うんだけど・・・。


 ふむ。やってみるか。


 もう一度石を装填。さっきと変わらない工程を行う。


 そして最後の射出に移る前に、銃口の中にある石に向けてイメージを放つ。


 石に薄く魔力を纏わせる感じで、放つイメージは、大砲。そして周りの自然を利用して加速するイメージ。


 おおざっぱでもいい。とにかく爆発的な威力のある玉を射出するイメージを固める。


 そして、いざ!射出!


 ドガァーーーーン!!


 それは予想を超える威力だった。


 魔力の帯びた石が放たれた瞬間。その魔力が風を纏い、さらにはその風の周囲をも巻き込んで、まるで目の前で爆弾を爆発させたように地をうがちつつ一瞬で10メートルほどの距離を飛んだ。しかもそこまで言った瞬間に石が耐えられなかったかのように空中で塵と化していた。


 (・・・のーちゃん。これはいったい。)


(あれ?美景見てたんじゃないの?いや~ちょっと頑張りすぎちゃってね。美景も黙ってるからついつい。)


 見ていると思っていた美景から戸惑いの声が聞こえ、取り繕うように言い訳を並べる。


 一瞬やってしまったかと思い身構えた。が。


 (やっぱりのーちゃんって・・・)


(ど、どうしたの?やっぱりやりすぎた?)


(いや、うん。やりすぎ、かな。)


 案外きつく怒られずに済んでよかった。


 でもやっぱりやりすぎだったということで少し反省。


 けれどこれで魔法の使い方が少し見えてきたかもしれない。


 あくまで自分流のやり方なのでこの世界で教えている魔法の使い方とは違うかもしれないけど。習うより慣れろが性に合ってる私としてはこっちの方向で魔法を極める所存。


 けれどあんまり美景を怒らせないようにはしたいかな。怖いし。


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