第16話 I CAN FLY!!
丘から野営地点に戻る時、みんなが起き出しているのが見えた。
やはり鉄砲の音がここまで聞こえていたらしい。私たちの方を見て身構えている。
(ど、どうしよう。)
(もう諦めて正面から行ったほうが良いんじゃないかな。いらない心配をかけちゃうかもしれないし。)
(それもそうかな。けど説明もできないしどうしよう。)
(いっそのこと技を披露したら良いんじゃない?)
(いや、でもそれはなあ。)
自分の持っている技はとりあえず隠しておきたい気がする。やっぱりとっておきはピンチの場で披露したし。それでなくてもこんな大技見せたら警戒されるのではないかと心配になる。
私たちは人ではなくてモンスター。たとえ最弱クラスのスライムであったとしても、こんな見るからに危険な技を見せてしまえば、間違いなくみんなからの目が変わるだろう。
(技のことに関してはごまかししつつどうにかしたいんだけど・・・)
(はぁ・・・まあのーちゃんの言いたいことはわかるけど。とりあえず今回は私が解決案を考えてあげる。)
今のパーティーとの関係はすごくいい感じだ。それを壊したくない気持ちは美景も同様だったようで、どうすればうまくごまかせるか考えてくれる。
(うーんと。じゃあとりあえず車形態になって。)
(了解!)
指示されたとおりに車形態になる。ここからどうするというのだろうか。
(そしたら次は小さい石をさっきと同じように鉄砲で撃って。あ、もちろん野営地店の反対方向ね。)
(というと後ろに銃身があればいいってこと?)
(そういうこと。あとは走りながら撃ってくれるとなおいいかな。)
ふむふむ。ということでさっそく実行!
この時私は何も考えずに即実行に移していたが、私はこのとき何をするのかをちゃんと考えておくべきだったと反省することとなる。
私は言われるがままに後ろに鉄砲を作って爆走。野営地店めがけて走り出した瞬間に弾を発射。すると後ろからの爆風の衝撃で一気に加速。しまいには車輪が地面から離れて宙を舞うことになった。
(のーーーーーーあーーーーーーーーーーーーー!!)
意識の中で叫びながら宙を舞う私。そしてそのスピードのままに野営地店のすぐそばにある木に激突した。
バシーン!
大きな音を響かせて木に顔面キッスした私はそのまま漫画によくありそうな感じでぺたんと地面にひれ伏した。
見た目には空気のないボールがふにゃふにゃの状態で地面にへばりついているようにも見える。
(こ、怖かった・・・)
(痛みは感じなかったけどHP的なものが減ったような気がするね。)
なんの拘束具もなしにジェットコースターに乗っているような感覚に陥っていた私は、よく無事だったなと思い、もしものことを考えて青ざめた。
美景は一応心構え的なことをしていたからか平気そうにしていたけど、私と同じでそれなりに身の危険を感じ取っていた。
「な、なんだったんだ?今のは。」
「ライムちゃんが吹き飛んできた。」
パーティーの面々は唖然としていて口が半開きとなっており、今起こった出来事についてまだ頭が追い付いていないようだった。
しかししばらく動かなかった私たちを見て心配したのかルーナが駆け寄ってきた。
「ライム!大丈夫ですか?!いったい何があって・・・。」
ルーナがあまり心配しないように私はすぐにユミルンの形態に変身し、微笑みを浮かべながら指のない手を少し変形させてグーサインを作る。
「とりあえず命に別状は無いようですね。」
ルーナはほっとした表情をした後、また少し心配そうな顔に戻る。
そんなやり取りを見ていたほかの三人は、ようやく思考がはっきりとしてきたのか私たちのもとに集まってきた。
「何があったんだライム。何かとんでもない音がしていたが・・・。」
「まさかモンスターか?でもあんな爆発音を響かせるほどの力を持つモンスターがこのあたりにいるとは思えねーんだが。」
「そういえばライムちゃん。すごい勢いで走ってきてなかった?その途中からいきなり吹っ飛んできたけど。」
心配するようにいろいろ聞いてくるけどそれにこたえるすべがない。口では。
と言うことでルーナの手からいったん離れてから変形。車形態になってから後ろに鉄砲を作って見せる。
そして少しその状態でみんなの周りを走ってみる。
「すごいな。これほど早く走るスライムは見たことがない。しかも形も特殊だな。」
「なんか魔動車に似てないか?走り方と言い、形と言い。」
「けど後ろの筒みたいなのは何だろう。」
「ライム。まだ何か見せたいものがあるのですか?」
今なんか聞き捨てならない情報がさらっと開示されてたけど、とりあえず今は事の真相を教えるべく動く。
やっぱり本当の威力がわからない程度には見せておく必要があると思ったからだ。すべてを隠していると余計に怪しく見えるし、それで警戒されては本末転倒だろう。と、美景が考えた。
鉄砲に砂粒ほどの小石を入れて銃身を縮小。そして込める魔力も少なめにして、いざ発射!
すると今度は小さな破裂音とともにお5メートルくらいの距離を一瞬で通り過ぎた。
さっきよりもかなり力を抑えたものだったのでそれほど苦も無く安全に停止することができて一安心する私たち。
しかし今度はさっきよりも驚いた表情で見つめるパーティーの顔を見て、大丈夫かなと一瞬焦る。
「ラ、ライムちゃん。今のって・・・」
「魔法・・なのですか?」
みんな信じられないといった表情で私たちを見てくる。
特にルーナは少しずつ私たちに近寄ってきて、しまいには車状態の私たちを抱きかかえ、いや拘束し、顔を近づけてまじまじと見つめてくる。
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