第28話 執務室
「ハァ〜〜」
昼食を食べ終え食堂を出た2人は執務室へ向かって歩いていた。
「国王様からの依頼なんですから仕方ないじゃないですか」
昨日ミレイアと出掛けたことによって仕事をしなくて良くなったイオルだったが食後にミレイアの放った一言で絶望していた。
「そういえば今朝、国王様から仕事が来てましたよ」
「な、なんだと⁉︎」
そのやり取りがあってからイオルのやる気は地に落ち執務室に向かう足も物凄く重そうだ
「ハァ〜、それでその仕事の内容はなんなんだ?」
やりたくはないが国王の依頼であれば無視することは出来ないので一応内容を聞くイオルだったが
「私もまだ内容を確認していません。イオル様宛でしたし私は他の仕事をしていましたので」
いつもはイオル宛の仕事の依頼も読んでいるのにも関わらずそんな事を言うミレイア。そしてさりげなくイオルに仕事を押し付けられた事をアピールしていた。
しかし、そんなアピールに気づいてないイオルは
「楽な仕事だったらいいんだがなぁ、遠くへ行くとか魔物退治とかだったらダルいから嫌だな」
「そんな事言ってないでどんな仕事でもちゃんとやってくださいよ」
一応イオルを窘めたミレイアだったがイオルが普段は全く仕事をしないがいざするとなると今まで全ての仕事をしっかりこなしているのを知っているので本当に形だけだった
「へいへい」
イオルは、そんな事には気づいていなさそうだったが。
そんな会話をしていたら2人は執務室の前に着いていた
「これから仕事か〜」
「はやく入ってください」
扉の前で立ち止まりなかなか部屋に入ろうとしないイオルにミレイアが呆れた様子でせかす
「分かってるよ」
しぶしぶイオルは執務室の扉を開け中に入って行った。ミレイアもその後に続いて部屋に入り先ほどの会話にあった国王からの依頼書をイオルに渡した。
「これかぁ」
嫌そうに封をきり依頼書を広げるイオル。
依頼書の内容に目を通していったイオルだったが徐々にその表情が嫌そうなものに変わっていっていた。
それを見ていたミレイアは、あぁ面倒な仕事だったんだなぁと考えていた
「うだぁ〜、やりたくな〜い。ダルいよ〜」
あまりのやりたくなさに項垂れるイオルだったがそこで部屋のドアをノックする音が聞こえた
「めずらしいな」
「めずらしいですね」
イオルの執務室に誰か訪ねてくるなんてことは滅多にない。あるとしても国王様からの依頼書を渡される時くらいだがそれも貰ったばかりなので違うと思われる
ガタンッ
「ぐっ」
扉の外から呻き声が上がった
「あ〜あ、誰だか知らんが返事をする前に入ってこようとするから」
イオルは呆れた様子で言うがミレイアにはその言葉の意味が分からなかった。
「どういうことですか?」
「あれ?知らなかったっけ、この部屋には結界が張ってあるんだよ」
新たな事実を耳にするミレイア。今までこの執務室を使っていたのに結界に全く気づけていなかったことにショックを受けた
「そ、そうだったんですか…全然気付きませんでした」
ガックリしながら答えるミレイアにイオルが
「まあ、そりゃそうだろうな。俺がいる時しか張ってないししかもすごく気付かれにくくしてるしな」
「はい?」
てっきりずっと張ってあるものだと思っていたがそうではなかったのか。そう思ったミレイアだったがどっちにしろ気づけないかった事に変わりは無いので落ち込んだ
「まあ、それはいいとして…」
再びイオルが扉に視線を向けた。ミレイアもそちらを見るが中々入ってくる気配はない
「あの…中に入れないんですか?」
思わず質問してしまうミレイアに対してイオルは
「入れないな。まあ、普通は簡単に開くんだが…今回の相手は一応ノックはしたみたいだが俺の返事を聞く前に扉を開けて入って来ようとしたから結界が発動して入れなくなったんだな」
あっけらかんとそう言うイオルだったがミレイアは誰が訪ねてきたのか分からないのでもし偉い方だった場合とてもマズイ状況になってしまうので焦っていた
「い、いいから開けてください。誰が来たか分からないんですから。もし偉い方だったらどうするんですか」
「大丈夫だって、偉い人だったらちゃんと礼儀もわきまえてるだろうから。こんなことするのはきっと大した事ないやつだよ」
ヘラヘラしながらそう言うイオルだったがそこで廊下から大声が聞こえてきた
「おい!はやく開けろ!俺がわざわざ来てやったんだぞ!」
訪ねて来たのは何故かゲイルらしい
「ハハハハハッ、ほら!やっぱり大したことないやつだっただろ!」
その声を聞いた瞬間笑い出すイオル
「ふざけていないで早く開けてください」
急かすミレイアだったがイオルは心底嫌そうな顔で
「えぇ〜あいつを部屋に入れるのもやだし話を聞くのも嫌だめんどくさい」
仕事嫌いのイオルだが別に人は嫌いではなく王城の人達とも上手くやっているがゲイルのことは嫌いらしい
「何か大切な話かもしれませんよ。早く開けて用件をすませてお引き取り願いましょう」
ミレイアもゲイルが嫌なのかサラっと面倒事は早く片付けようと言う意味にとれるような事を言った
「はぁ〜、わかったよ」
諦めた様子のイオルが右手の人差し指を軽く振るとガチャという音がして部屋の扉が開いた
「おい!何をしていた!この俺がわざわざ来たんだからさっさと扉を開けろ!」
廊下で叫んでいたのと同じような事を言いながらゲイルが部屋に入ってきた
《絶対防御》の魔導士は攻撃しない UG @judv482
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。《絶対防御》の魔導士は攻撃しないの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます