第24話 秘書とデート
ミレイアと約束した休日、イオルは待ち合わせ場所に指定された時間より少し早く来ていた。
イオルは、いつも着ている着やすい服では無く昔買っていたカジュアルな茶色のジャケットを着ており、ピシッと背筋を伸ばせば普通にカッコいいと言える風貌だった。
少しするとミレイアが来るのが見えた。ミレイアは、長い脚を強調するようなパンツスタイルだった。上は、白いカーディガンを着ていてとてもミレイアらしい格好だった。
「すみません、お待たせしました。」
「おう、別にそんな待ってないから気にすんな。それで今日はどうする?」
イオルは今日の予定を聞いたのだが、ミレイアの顔には不満が浮かんでいた。
「どうかしたか?」
「イオル様、何か私に言うことはありませんか?」
ミレイアにそう言われ何を言うべきか考え込むイオル。それを見たミレイアは少しがっかりしたような表情で自分の服を見た。
そんなミレイアの様子を見てようやくイオルも何を言ったら良いのかがわかった。
「い、いや…その服似合ってるぞ。ミレイアらしいし」
「…そ、そうですか。ありがとうございます」
イオルの言葉を聞くとミレイアは、さっきまでの不安そうな表情など無かったかのように照れた顔をしていた。
「ミレイアは、どっか行きたい所でもあるのか?」
イオルは、特に行きたい所もなかったので今日はミレイアに付き合うつもりだったのだが
「いえ、私はイオル様に合わせようかと思ってましたので」
ミレイアも同じ事を考えていたらしく、二人はこれからどうするか考えはじめた。
「なあ、ミレイアは普段の休日にどっか出掛けたりしないのか?」
「私は、たまにですが洋服を見に行ったりはしますね。」
「それだ!じゃあ、今日はミレイアの服を見に行こう。」
イオルはこれしか無いと思い直ぐに行き先を決定した。ミレイアは、初めは少し困った顔をしていたがイオルが決めたことならと納得する事にした。
イオルの案内で王都の街を2人で歩いていると1人のチャラそうな男がミレイアに話しかけてきた。
「ねえねえ、お姉さん今ひま?これからどっか行かない?」
イオルが隣を歩いているのが見えていないかのごとくミレイアをナンパしようとするチャラ男
「いえ、私はこの方と用事がありますので失礼します。」
全く寄せ付けず断り通り過ぎようとしたのだがチャラ男は諦めず
「そんな男と一緒より俺との方が絶対いいってね?」
そう言ってチャラ男は、ミレイアの手を掴もうとしたが直前で何かに弾かれた。
「え?」
ミレイアも少し目を見開いていたがチャラ男は何が起こったのか全く理解できていなかった。
「なあ、いい加減諦めてどっか行ってくれねぇか?」
さっきまでは我関せずと言わんばかりにスルーしていたイオルだったがミレイアが断ったのにも関わらず手を掴もうとしたので流石にイラっとして割って入った。
「ありがとうございます、イオル様。」
ミレイアは、イオルが魔法で守ってくれたのが分かったのでしっかりイオルにお礼をする
「おう、別に気にしなくていいぞ」
チャラ男を睨みながら返事をするイオル。イオルのイラつきを感じたのかチャラ男は後ずさりしながら
「す、すみませんでした〜」
そう言うと走ってあっという間に見えなくなっていた。
「ふう、逃げるくらいなら最初から話しかけてくるんじゃねぇよ」
イオルが心底めんどくさげにそう言うとミレイアも珍しく同調した。
「そうですね。本当に良い迷惑です。」
ミレイアも、知らない男に話しかけられて機嫌が悪かった。
「それじゃあ、服屋に向かうか」
イオルがそう言うと2人は再び服屋に向かいはじめたのだが、イオルが立ち止まった前の店を見てミレイアは驚いた
「ちょ、イオル様!ここって…」
ミレイアが何かの間違いだと言ってくれと言わんばかりの表情でイオルに質問した。
「あぁ、流石に知ってるか。ここは王都で1番服屋らしいぞ。」
「そ、そんなことは私も知ってます!ですがここの洋服ってものすごく高いんですよ!私もここで服は買った事ありません。」
ミレイアは、連れてこられ店を見た事とイオルのテキトーな発言を聞いたせいかテンションがおかしくなっていた。
「知ってる知ってる。国王様に良い服屋ないか聞いたらここを紹介されたんだが良かったぞ」
「そんな事は知ってますよ…けど、ここの服って一枚買うだけで金貨20枚とか掛かるんですよ。金貨20枚あったら普通の人は1年以上暮らせますよ…」
ミレイアは、後半何かを諦めたのか尻すぼみになっていった。ミレイアもそこそこのお金は貰っているが服一着に金貨20枚は高すぎる。
「金の心配してるのか?なら気にしなくて良いぞ今日買う服は全部俺の金だからな」
「そ、そんなダメですよ!高いですし」
そんな高価な物を買ってもらう訳にはいかず慌てて止めるミレイアだったがイオルは聞く耳を持たない。
「いやいや、金は一杯あるから少しは使わないと勿体無いだろだから気にすんな。それに、ミレイアの色んな服着てる姿も見て見たいしな」
「……なっ!」
イオルの最後の言葉を聞き、さっきまでの勢いは何処へやら真っ赤に顔を染めたミレイアがいた。
普段のミレイアは、ここまで照れた表情を出したりはしないのだが今日はデートという事もあり感情表現が豊かだった。
「そういう事だから気にする必要は全くねぇぞ。それじゃ、早速入って服を選ぶか」
そう言ってイオルは、ミレイアの返事も聞かずに自分だけ店のドアを開けて入って行ってしまった。店の前に残されたミレイアは一瞬逡巡したがイオルに続いて店の中に入っていった。
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