第19話 真面目に戦わない魔導士
敵が目視出来る距離に入ると冒険者たちは戦闘準備に入った。
(あと距離は、200mくらいかそろそろ仕掛けてくるかな)
イオルがそう予想していたら敵側の魔導士の魔力が上昇しはじめた。
冒険者の魔導士も気づいたのか動揺が走っている。
「イオルさん、きますよ!」
ハンナも気づいたのか焦った声を出している
アリーシャは、何が起こっているのかわからないのかキョトンとしていた。
「分かってる。じゃあ、俺は行ってくるからアリーシャは馬車から出るんじゃねぇぞ」
そう言い残すとイオルは馬車を出て行った。
「では、会長私も行ってきます。」
ハンナもイオルに続いていった。
戦場の場になったのは、木の生い茂った森だった。基本的に馬車が進める道は一本であり幅もすれ違えるくらいしかなかった。
どうやら敵がいるのは、ひらけた場所らしく敵の兵はまだ攻めてきておらず味方の魔法の発動を待っているようだった。
イオルが外に出るとこちらの兵士たちは敵の魔導士の存在に気づいたのか焦りが見える
「しょうがねぇ、やるしかないか」
そう言うとイオルは、先頭の馬車の前に行き他の冒険者達を下がらせると杖に魔力を込め始めた。
杖に魔力を込めていると敵側の魔導士の魔力が一瞬さらに大きくなり魔法を放ったのが分かった。
敵が魔法を放つとイオル達の目の前にデカイ雷球が現れた。雷球のスピードは、速く一瞬でアリーシャ達を吞み込もうとしていたが寸前で透明な盾に阻まれ轟音が響き渡った。
(あっぶねぇ、予想より魔法のスピードが速くて間に合わないかと思ったぁ)
イオルは、ギリギリ盾を出現させたが内心物凄く焦っていた。しかも盾は雷球の威力を防ぎきれておらず今にも破られそうだった。
イオルの近くにいたハンナは二つの魔法がぶつかり轟音が響く中で大声で質問する
「イオルさん!あの盾砕けそうなんですけど!」
ごもっともである。何故ならイオルもそう思っていた
「わかってる!なんとかする!」
イオルは、返事をすると盾にエンチャントの魔法を重ねがけした。
砕けそうだった盾はエンチャントを掛けた事により持ち直した。
しばらく魔法がぶつかり合っていたが盾は砕けず雷球は消えていった
「ふうっ。なんとかなった。」
イオルは、安堵のため息を吐いた
「危なかったですね。」
ハンナや他の冒険者も安心したようだった。
「まだ、始まったばかりだぞ。油断するなよ」
魔法が消えると二つの兵達はぶつかり合い戦闘が始まった。
イオルは、しばらくは10人程の冒険者を相手どりのらりくらりと味方が楽に戦えるようにエンチャントを掛けながら立ち回っていたが、魔導士を抑えているハンナが劣勢だった。
(ヤベェな。あの魔導士とマトモに戦えるのはハンナだけだしここでハンナがやられたらマジで負けるぞ)
焦りながら打開策を考えるイオルだが相手どる冒険者も一筋縄ではいかず何度も拘束しようと試みているが剣で防がれていた。
(ハンナの方の打開策も考えなきゃいけないがこっちも何とかしねぇといけねぇな。捕縛系の魔法は、攻撃魔法のような威力はねぇから簡単に防がれてるし…)
盾を複数出しながら鎖を出して拘束を試みているが捕まえたのは一人だけだった。
(はあ、こりゃあ冒険者引き付けるのは諦めてハンナと選手交代でもするしかねぇか…。出来ればやりたくなかったけどこのままじゃヤバイしなぁ。)
この案は、最初から思いついてはいたが敵の魔導士とイオルが戦いたくないという理由で言わなかったのだがそんな事を言える状況でもなくなっていた。
ハンナは、劣勢をしかれていた。敵の魔導士は自分よりも格上でこのまま戦い続けたら負けると感じていた。
(何か、この状況を変えるような事がないと今の私の実力じゃかなわない。どうにかしないと)
敵の魔法に自分の魔法をぶつけ相殺しながら立ち回っていると後方から声が聞こえた。
「おーいハンナ!戦士交代だ!」
イオルの声だと気づき背後を振り返るとイオルはすぐ側にきていた。
「どういう事ですか?」
「そのままの意味だ。俺がこいつの相手をするからお前は他のやつの相手を頼む。そっちのが効率良さそうだし…」
本当は魔導士と戦いたくないですオーラを出しながらしぶしぶイオルは提案すると直ぐにハンナは
「分かりました!では、私は他の敵を倒してきます!魔導士の相手はよろしくお願いします。」
勢いよくそう言って頭を下げるとすぐさま駆け出していった
「はあ〜、結局こうなるのかよ。だるっいなぁ…」
先ほどまでより数段テンションの下がったイオルはやる気無さげに言う。
そんなイオルの態度が気に触ったのか敵の魔導士が話しかけてくる。
「おやおや、あの女性魔導士ではなく次はあなたが相手ですか?あなたに私の相手が務まるでしょうか?」
「さっきお前の魔法防いだの見てなかったの?それとも自分に都合の悪いことは忘れちゃう系の人なんですかぁ?」
イオルは、マトモに相手をする気はないので適当に挑発してみた
「くっ、ど、どうやら死にたいようですね。」
ハンナと戦っていたときよりも魔力が大きくなり敵の魔導士は本気になった。
(ようやく本気になったか…。あのまま力を抑えられてたらいつ終わるかわかんねぇからな。)
最初から魔法を撃ち合って勝つ気はなくイオルは敵の魔力切れを狙っていた。
それからイオルは敵の魔法を防ぎ続けた。味方にピンチになったらそちらにも盾を出し、エンチャントを掛けつつ戦っていたら敵の魔導士がキレた。
「あ、あなたふざけてるのですか!」
「何が?」
惚けるイオル
「何故一度も攻撃魔法を使わないよですか!私を舐めているのですか!」
「こっちにも色々あるんだよ。まあ、お前は俺の盾を破れないみたいだから気楽にやらせてもらうぜ。」
イオルは、更に敵の神経を逆撫でするような事を言い放った。
「くっ!」
悔しそうに呻くと敵の魔導士は、高威力の魔法をイオルでは無く冒険者に向かって放ち始めた。3メートル程の火球や雷球、水球が四方八方に向かって放たれた。
(まあ、そうくるか。高威力の魔法を防ぐ盾を離れた場所に同時に出すのは普通は難しいからな。けど…)
そんな事を考えながらもイオルは杖を振り味方に向かっていった魔法を盾で防ぎはじめた。
突然、魔法が向かってきた冒険者達は死を覚悟し目を閉じたが衝撃が襲ってくることはなかった。
「な、なんだと⁉︎」
予想外の事態に動揺するアルス
(二つ同時に出すだけでも難しいのになぜ、六つも同時に盾を出している!)
魔法をくらいそうになった冒険者達の側にいたハンナは、目の前に広がる巨大な火球や雷球が盾に防がれている光景をみてアルスと同様に肌を焼くそうな熱さにも気づかず驚いていた。
(す、すごい。こ、これが宮廷魔導士の力…)
「流石にこれくらいは出来るぜ」
(伊達に《絶対防御》なんて呼ばれてねーよ。ああ、早くハンナ来てくんないかなぁ…。そもそも俺は、攻撃魔法使えないからあいつを倒せないし拘束しようにもそんな魔法にかかってくれそうに無いし援護ないとキツイなぁ。)
そんな事を考えつつ複数の盾で敵の魔法を防ぎつつ、ハンナが他の兵達を倒し終わるまでの時間稼ぎをしていた。
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