第17話 情報収集


昨日の話し合いでは何の収穫もなかったので再び地下に集まっていた。


「それで、昨日言ってた魔法って何なのよ?」


昨日のことはもう気にしていないのかアリーシャが聞いてくる


「ああ、この魔法使えば相手の頭の中を読み取れるんだがまだ人に使ったことは無くてな。ちゃんと成功するかわからん」


「失敗するとどうなるんですか?」


ハンナも気になっていたのか質問してきた。狙撃手も耳を傾けていた


「魔物に使ったときは、死んでしまったのと倒れて動かなくなったのがいたな」


その言葉を聞いた狙撃手は、顔を痙攣らせた。


「まあ、別にいいわ。さっさとやって」


アリーシャが言うと焦ったように狙撃手が話し始めた。


「ち、ちょっと待ってくれ!失敗したら情報取れなくなるんだぞ」


そう言うとアリーシャは少し考え込む仕草を見せたがイオルはあっけらかんと言った。


「いや、どっちにしても情報は取れるぞ。失敗した時に困るのはお前だけだ」


「な、何!」


驚く狙撃手に、ニヤニヤしながらアリーシャが問いかける


「どうやら困るのはあんただけみたいね。さてどするの?素直に白状する気になった?」


「ぐっ」


言葉に詰まってしまう狙撃手


「5…4…」


アリーシャが、カウントダウンを始めると狙撃手は、焦りながら言った。


「わ、わかった!話す!話すからやめてくれ!」


「さっさとしなさいよね。」


イオルがいきなり核心に切り込んだ


「それで、お前に命令してきたので誰なんだ?」


「ド、ドンゲルだ」


「やっぱりあいつだったのね」


アリーシャが憎々しげに言った。


「それで、何でアリーシャの命を狙った?」


「わ、わからねぇ。」


「嘘つくとどうなっても知らんぞ?」


右手をこちらに向けながら問いかけてくるイオルに狙撃手は必死の形相で言った。


「ほ、本当に知らねぇんだよ!勘弁してくれ!」


イオルも、狙撃手が本当のことを話しているとわかったのかそれ以上追求するのをやめた


「じゃあ、知ってることだけでいい。素直に答えろよ」


「わかってるよ」


ぶっきらぼうに言いすてる狙撃手


「それじゃあ、ドンゲルの手下はどれくらいいるんだ?」


「正確なのはわからねぇが、俺みたいな雇われ兵は、30人くらいはいたと思うぜ。あと、魔導士が一人いた」


「30人か意外と少ないな。ただ魔導士がいるのか厄介だな」


厄介だと言うイオルとは対照的にアリーシャは


「そんなの楽勝じゃない!イオルがいれば敵の魔導士なんて相手にならないわよ!」


自信満々に言うアリーシャにイオルは反論する


「おいおい、流石に敵の実力も分からないし負けるかもしれないぜ。それに、他にも敵は30人いるんだぜ」


「そうですよ、会長。油断してはダメです。」


そこまで油断していた訳でもないだろうが二人から注意されて落ち込むアリーシャ


「ご、ごめんなさい…」


「あっ、す、すみません会長」


落ち込んでしまうとは思ってなかったハンナは慌てて謝る


「ハンナが謝る必要はねーよ。こいつが悪いんだから」


(言ってる事は間違ってないのに何故かこいつに言われるとすごいムカつく)



「おい!もういいだろ!さっさと解放しろよ!」


狙撃手の男が急に勢いよく話しはじめた。


「何でよ?」


不思議そうに聞くアリーシャ


「はあ⁉︎全部話しただろうが!」


キレ気味の狙撃手に対してアリーシャは、心底イラついたようで


「あんた、自分が何したか忘れたの?私の命を狙っておいて情報吐いたらはい、解放ってなるとでも思ってたの?」


「うぐっ」


情報を言ったら解放されると思い込んでいた狙撃手は、アリーシャの言い分を聞いて立場を再確認した。


(下手なことしたらこのまま殺される)


「アリーシャの言ってることもそうだが、例え解放されてもお前は多分死ぬぞ」


自分の死が確定事項だとでもいうように言ってきたイオルに叫ぶ


「ど、どういうことだ!説明しろ!」


「いや、説明するも何も誰にでも分かることだぞ。お前が失敗したことは当然ドンゲルにも伝わっているだろう。そして自分の情報を持っていて仕事を失敗したやつを生かしておく意味は向こうには無いってことだ」


少し考えれば分かることだったが狙撃手は、頭からそのことが完全に抜けていた。無意識の内に考えるのを拒否していたのだ


「おまけに、お前は俺たちに情報を吐いたからな。裏切り者を生かしておくほど甘くはないだろ」


「くっそお!」


全てを理解してしまった狙撃手は、もうどうしようもないことを悟り悔しそうに言い放った。


「自業自得よ」


「そうですね」


アリーシャとハンナも同情の余地はないようで冷たく言い放った。


もう特に聞くことは無かったのかアリーシャはそのまま部屋を出て行きハンナもそれに続いていった。


部屋に残っていたイオルは狙撃手に対して言った。


「まあ、全て終わるまで殺されるような事がないようにはしてやるよ。その後警備兵に引き渡すがな。」


「すまねぇ」


命を奪われるよりはマシだということで狙撃手は礼をいった。



それを聞くとイオルは、狙撃手に背を向けながら軽く手を振ると部屋を出ていった。













ドンゲル商会



「何⁉︎失敗しただと!」


ドンゲルの叫び声が響き渡る


「はい、部下の情報ではターゲットの側にいた男は魔導士であったらしく飛んできた矢を防ぎその後、逃走した弓兵を捕らえて連れ帰ったそうです。」


報告を聞き終わるとドンゲルが大声で怒鳴る


「どういうことだ!そんな情報は無かったではないか!」


そんなドンゲルの様子を気にしたようすもなく普通に魔導士の男が話に入ってきた


「まあ、敵はこちらの動きに気づいていたということでしょう。」


「なんだと!それもその魔導士の仕業か⁉︎」


「おそらく、突然現れたその男が尾行している者に気づき警戒していたのでしょう。こちらに悟らせないようにし罠にかかるのを待っていたんです。」


「罠とは?」


ドンゲルがどんどん不機嫌になり魔導士以外の部屋にいる者は全員顔が引きつっていた。


「それは当然、ワザと仕掛けてきやすいように外に出てきたことでしょう。そこで此方の者を捕らえてしまえば後は情報を吐かせるだけですから」


「くそっ!」


ドンッ


机を思い切り殴るドンゲルをみて魔導士は、案を出した


「では、これからの作戦を考えましょう」


「作戦だと?」


「ええ、このまま諦める訳ではないのでしょう?」


そう挑発するように言う魔導士に腹立たしげに言った


「当たり前だ!奴らは必ず殺す」


「そう言うと思ってました。では、まず向こうのこれからの予定を教えてもらえませんか?」


魔導士がそういうと先ほど報告していた部下が手帳を読み上げ始めた


「は、はい。ターゲットは5日後にどうしても外せない商談があるらしく3日後にこの街を出て行くそうです。」


それを聞いたドンゲルと魔導士はニヤリと笑った。


「そこですね。商会長という立場ですから多少護衛はいるでしょうがこちらの戦力を持ってすれば簡単に制圧できるでしょう」


「そうだな。では、これからの作戦を言う!3日後ターゲットが街を出る前日に街を出て森で奴らを待ち伏せして仕留める!各々準備せよ!」


ドンゲルが高らかに言い放つと部下たちが


「はっ!了解しました。」


そう言って部屋をでていった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る