第16話 王城では


イオルが手紙を残して出ていってから3日が経ったその夜、ミレイアはイオルの部屋にいた。


(イオル様、いつになったら帰って来るのかしら。帰ってきたら一言注意しないと…)


ミレイアは、イオルが帰ってくるのを今か今かと待っていた。

イオルが昼間帰ってくる可能性もあったのでミレイアは、執務室で仕事をしつつ時々帰ってきていないか部屋を見にいったが帰って来なかったので部屋で待ち伏せをすることにしたのだ。





結局、イオルは朝まで帰って来なかったのでミレイアは寝ずに待っていたせいで目には隈ができていた。


(イオル様、手紙では帰ってくるって書いてあったのに何で帰ってこないんですか!)


「ヒイッ」


自室に戻るため廊下を歩いていたのだがすれ違うメイド達がミレイアを見るたびに声を上げてしまうほど不機嫌さが滲み出ていた。

ミレイアは、その日は仕事をする気になれなかったので自室に戻ると昨夜は一睡もしてなかったのでベッドに入り意識を手放した。





翌朝、国王の元には、一通の手紙が届いていた。執事のモルドンが差し出してきたその手紙の差出人は、ここ数年力をつけてきた商会の商会長からだった。


「何の用件だと思うモルドン?」


手紙の内容が予想できないのか思わず執事に問いかける国王


「そちらは、分かりかねますが一つお伝えしたいことがあります。もしかしたらその手紙の内容と関係があるかもしれません。」


「何だ、言ってみよ」


国王は、モンドンに先を促すとモルドンは国王の反応を窺いながら切り出した。


「イオル様が、昨夜お戻りになられませんでした。」


モルドンのその発言を聞き国王は、思わず俯いてしまった。発言を聞いた事によって手紙を開けたくなくなってきたが関係ない可能性もあったので何もない事を祈りながら開け内容を読むと、国王は何とも言えない顔になった。


手紙の内容を纏めるとこんな感じだった。


イオルに仕事を頼みたいという内容で帰るのが遅くなるというもので、もし不都合があるなら手紙を送ってくれれば仕事は無しにするといった内容だった。なお報酬は、1日金貨1枚と考えていると書いてあった。




普通だったら正式な仕事では無いので迷わず断るのだが仕事を受けるのがイオルであるならば話は変わってくる。

イオルが帰ってきていないという事は仕事を受けたという事だろう。


国王は、イオルが帰ってきてもどうせ仕事などしないからそのままでも別に良いのではないかと思っていた。


「モルドンは、この手紙を読んでどう思う?」


モルドンは、国王から手紙を受け取り読んでみるとモルドンも何とも言えない表情をした。


「難しい話ですが…この仕事を受けてもいいのでは?」


「やはり、お前もそう思うか。私と同意見だな。」


「イオル様が仕事を受ける事自体珍しい事ですのでそのままでも良いと思いました。」


「そうだな。では、そういう方向でいこうと思うがミレイアに説明すると思うと気が滅入るんじゃよ」


「そうですね…」


国王とドンゲルの意見は一致していたのだが二人ともミレイアへの説明を考えると憂鬱になっていた。









その日、ミレイアはメイドの声で目を覚ました。


コンコン


「ミレイア様、国王様がお呼びになられています。」


「わかりました。直ぐにお伺いします。」


(国王様からの呼び出しって一体何かしら?)


ミレイアは、着替え終わると国王様の部屋に向かった。


コンコン


「国王様、ミレイアです。」


「どうぞお入りください」


中から執事のモルドンの許可が出たのでミレイアは入室する。


「失礼します。本日は、どのようなご用件でしょうか?」



「口では説明しにくいから先ずはこの手紙を読んでくれ」


ミレイアは、国王から手渡された手紙を読み進めていくとだんだんイライラしてきていた。


「国王様、この依頼どうされるんですか?」


ミレイアは、必死に平静を装っているが手紙を持つ手が震えておりしかも体中から黒いオーラが湧き出しているように国王達には見えていた。


「受けようと思っている。」


「そうですか….わかりました。では、失礼します。」


ミレイアは、落ち込んだ様子で部屋を出て行った。


「落ち込んでいたのう」


「落ち込んでいましたね。」


二人は、そんなミレイアを見て申し訳ない気持ちになった。





部屋に戻ったミレイアはベッドに突っ伏していた。


「イオル様、何で帰ってこないんですか!しかも普段は全然仕事をしないくせに!」


他人の前では、絶対出さないような声を上げながらイオルへの文句を言っていた。



ひと通り叫んで落ち着いてきたのかミレイアは、あの手紙について考えていた。


「確か、あの手紙の差出人のアリーシャってここ数年で力をつけてきて有名になった女商人だったわよね。まさか、イオル様その女商人の事を気に入っているから仕事を受けたりして…」



ミレイアは、何も確証がないのにどんどん悪い方向に考えていってしまい一人で勝手に落ち込んでいた。


「ああっ、もう!これ以上は考えても意味ないわね。仕事でもして考えないようにしよう!」


ミレイアは、必死に頭を切り替えて仕事に取り掛かる為に執務室に向かった。









さらに次の日、またミレイアは国王に呼び出されていた。


「国王様、今日はどうされましたか?」


国王は気まづそうに言ってきた。


「うむ。一先ずこの手紙を読んでくれ」


そう言うとモルドン


昨日と似たような展開にミレイアは嫌な予感がしながらも手紙を受け取り読み始めた。


手紙には、また信じなくないような内容が書いてあった。


今回の手紙には、依頼の期間はいつ終わるか分からないので終わるまでは1日金貨1枚払うと書いてあった。


ミレイアは、震える声で尋ねた。


「こ、国王様。これは…」


「うむ、書いてある通りだ」


「で、ですが…これではいつ帰ってくるのかわかりませんが」


ミレイアは、少し動揺した様子で聞いてくる


「イオルなら大丈夫だろう。」


それでも納得していなさそうなミレイアは突然閃いた。


「そ、そうです!私もイオル様を手伝いに行きます。私は、イオル様の秘書ですし一人では時間がかかってしまう仕事なのでしたら二人で行えば直ぐに終わるはずです!」


ミレイアは、これが名案だと思い声を上げて打診した。


「いや、ミレイアにはイオルが残していった書類仕事を片付けてもらいたいんじゃよ」


「えっ⁉︎」


驚いた声を上げた後、ガックリとうな垂れたミレイア


「失礼しました。」


昨日と同じように部屋を出ていったミレイアをみて


「落ち込んでいたのう」


「落ち込んでいましたね」


二人も同じ言葉を零した。












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