第11話アリーシャの想い


商会に入りさっきまで居た部屋に戻った3人はこれからの対策について話し合いをはじめた


「それで、確認なんだが何か狙われるような心当たりとかないのか?」


「う〜ん、ちょっと待って。考えてみるから」


そういうとアリーシャは自分の記憶を探っているようで目を瞑って考え込んでいる。

ハンナも自分の心当たりを探しているようで同じく記憶を引き出して考えている


「…会長。もしかしたら程度なのですが言ってもいいですか?」


ハンナは何か心当たりがあったのか恐る恐る話を切り出してきた。


「いいわ、言ってみて」


アリーシャは自分では思い浮かばなかったのかハンナの意見を求める


「はい。会長つい先日、ドンゲル商会の人が来て居ましたよね。その時会長は、向こうが提案してきたこの街での商売をうちと向こうで共同でやろうという案を断ったじゃないですか、それが原因だとは考えられませんか?」


「う〜ん、そうかなぁ?あの提案を断ったくらいでそんなことする必要ある?」


アリーシャはピンときていないようだがイオルもそれが原因なのではないかと思っていた。


「いや、多分それが原因だろ。向こうからしてみれば最近出てきたお前の所にその話を持ってくるだけでもプライドが邪魔したはずだし、しかも断られたとあったら完全に顔を潰しただろ」


ここまで言ってもアリーシャには全く響いていないようで顎に手を当てて唸っている


「そうかなぁ…。でも、共同でやる案は、今この街で一番の私たちが受けてもメリットはほとんど無かったし向こうはこっちの魔道具の技術を盗もうしてるのはバレバレだったからそんな敵に塩送るよな真似するわけないじゃない。」


アリーシャの言っていることは至極正論で間違っていないのだが相手の心情を全く考慮していない為逆恨みされる可能性もあった。


「それで、お前はそのドンゲルとかいう奴に何て言って断ったんだ?」


イオルが出来れば聴きたくないが確認しとかないといけないな内容だった為シブシブといった感じて質問した。


「ええっと…確か、何でそんな事しなきゃいけないのよ。私たちにメリットがほとんど無い上に何で魔道具生産を共同でやる必要はないじゃない。大体この街で一番の商会の私たちが、他のところと手を組む必要なんてないんだからこんな話に乗るわけ無いでしょわかったらお引き取りください。…だったかしら」


「お前な…」


イオルは呆れてものが言えないといった態度で頭を抱えた


「わかります、イオルさん。私もそう思いました。」


ハンナもその場所に居合わせたのかイオルに同情した目を向けていた。


「な、何よ!ふたりして。そんなに責めなくてもいいじゃない。私、間違ったこと言ってないし」


「そうだけど、そうなんだけどさぁ」


イオルも何て言ったらいいのか言葉が出てこない


「それでは、一先ずはドンゲル商会が狙ってきてた場合について考えましょう。」


このままでは話が進まないと思ったのかハンナが先を促してきた


「何か良い案はあるイオル?」


「まあ、取り敢えずはそのストーカーにアリーシャを攻撃でもさせてみたら良いんじゃないか?」


あっさりと飛んでもないことを言うイオル


「な、何を言ってるんですか⁉︎」


ハンナは慌てているがアリーシャは納得した表情をしていた。


「なるほど、それで攻撃してきた奴を捕まえてどこの手のものか聞くのね」


「ああ、そうだ。敵がどんな手段で攻撃してくるかわからねぇからお前に危険な役割させちまうけど大丈夫か?」


「大丈夫よ、だってあんたが居るんだから。」


「おいおい、そんな信頼されても応えられんぞ」


イオルは困った顔をしているが反対にアリーシャの顔には攻撃される不安など微塵も浮かんでいなかった


「《絶対防御》は伊達じゃないでしょ。それに、あんたが思っていたよりも真剣に考えてくれてて嬉しかったわ」


「当たり前だろ、流石にいつもは仕事したくない俺でも知り合いの命がかかってたらそれくらいはする」


普段めんどくさがりで自分のしたいこと以外ほとんどしないイオルがそんな事を言ってきたのでアリーシャは照れて頬をほんのり赤く染めた


「そ、そう…。あ、ありがとう。」


「いや、別にいいけど…。」


普段のアリーシャっぽくない態度に動揺したのかイオルも気まづそうに返事を返した。





そんな二人の様子を側でみていたハンナは少し意外なものをみたとでも言うような表情をしていた。



アリーシャはら誰が見てもかわいいという外見をしており、しかも最近力をつけてきた商会の会長もしているという正に完璧美少女といった感じなので、言い寄ってくる男も当然多いのだが、その男達すべてに対して興味なさそうにバッサリ切り捨てていたので、てっきり今は、恋愛をする気がないのかとハンナは思っていたのだが、先ほどイオルに見せた照れた表情は恋をしていると言ってもいいような顔でありハンナは驚いていた。


(もしかして、会長はイオルさんの事が好きなのかしら?すごく気になるし見ていて面白いです!)


ハンナも年頃の女の子なので恋愛ごとには興味津々なので照れたアリーシャとイオルを見て興奮して今、大変なことになっていることも忘れて楽しんでいた。



それからしばらくして解散になりこれから外出するときは絶対にイオルと一緒に行動し無暗に外に出ないことにし商会の建物にもイオルが結界を張ることにした。



その夜


イオルとアリーシャは二人で話し合っていた



「なあ、アリーシャ大丈夫か?」


イオルはアリーシャを気遣うように話し始めた。


「何が?問題ないわよ」


アリーシャは何のことかわからないとでもいいたげな表情をしている。


「お前、俺とあった時もこんな事あっただろ」


「あの時はまだ、子どもだったのよ…」


声のトーンが落ちるアリーシャ


「いや、まだ4年くらしか経ってないだろ」


「4年もあれば子どもから大人にもなるわよ。それに前も私を守ってくれたじゃない。今回もちゃんと守ってよね」


イオルは心配だったので声をかけてきたのであろうがアリーシャの先ほど言っていた問題ないと言う言葉は真実でアリーシャの顔に浮かんでいたのは昼に見せたのと同じイオルに対して全幅の信頼を寄せている表情だった。


「はぁー、お前なぁ。何でこんなダメ人間のことそこまで信じられるんだよ」


イオルは訳がわからないと言った表情で問いかける


「そんなの決まってるじゃない」


アリーシャは何の迷いもなく答えた


「あんたは、昔困ってたお金も何もなかった私を助けてくれた。あんたには、メリットなんて全く無かったのに…。」


アリーシャはキッパリと言い切る


「あんたは自分のことをダメ人間って言ったけど私はそうは思ってないわよ。確かに普段は少しダメかもしれないけど本当に困ってる時はちゃんと助けてくれるじゃない」


普段は軽口を叩きあっているアリーシャに真っ直ぐ想いを伝えられているイオルはなんて言ったらいいのかわからず気まづそうな表情をしていた。


「だから感謝してるし信じてるわ」


真っ直ぐとイオルの目を見つめ感情をのせたその言葉はイオルの心に突き刺さった。


「…お、お前そんな事思ってたのかよ。」


何とか言葉を絞りだしたイオルだったが、あと少し何かのきっかけがあれば今すぐにでも壊れそうなくらいイオルの感情の波は昂ぶっていた。



アリーシャは急に照れくさくなったのか慌てて


「い、今言ったことは忘れない!わ、私もう眠いから戻るわね!じゃあまた明日!」


そう言うとアリーシャは部屋を出て行ってしまった。



イオルは、アリーシャの出て行った部屋の扉を見つめ小さく呟いた


「…俺はそんな信じてもらえるような人間じゃねーよ」











部屋に戻ったのアリーシャは自室のベッドで布団にくるまりながら悶えていた



(う、うわあああああ!ど、どうしよう⁉︎あいつの前で変なこと言っちゃった!明日どんな顔して会えばいいのよ〜⁉︎)



その後、アリーシャは朝まで悶え続け一睡も出来なかった。


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