後期4限目 2. キャラクター制作論 主人公とパートナーキャラを作る
はいさてキャラクター制作論です。
先週は作ったキャラクターの欠けたところを追求し、それを埋めるにはどのような人間関係、あるいはシチュエーション、ストーリーが必要になるかという話をしました。
今回はまた、それを踏まえた上で、今度はペアあるいはバディ、仲間、ライバル、等々の、二人ひと組のキャラクターを作ってもらおうと思います。
またプリントを配りますね。
今度はそのキャラクターについて「欠落した部分」を指定する項目です。
1.怒りっぽい・なんでも力で解決しようとする
2.常識がない・変人である
3.愛情を知らない・家族を知らない
4.内気すぎる・弱気
5.肉体的ハンデがある
6.力がない(肉体的、または政治的に)
7.落ち着きがない・おっちょこちょい
8.一つのことに盲目的に囚われている
9.他人の支配下にある
0.知識が欠けている(本人の知らない秘密がある)
「欠落した部分」というのは、まえの授業でもいったように、そのキャラクターにとっての物語を作り上げるための第一歩の手がかりです。キャラクターはこの自分自身の「欠落した部分」を埋めるために物語の中に踏みだし、欠けた自分自身のカケラを発見する旅路を歩むことになります。
前のプリントと同じく、携帯番号のナンバーから数字を選んでみましょう。今回は末尾の数で。
やってみると「内気すぎる・弱気」という項目が当たりました。ここから考えてみましょう。
まず「内気すぎる」のはなぜでしょう。このキャラクターはどうして内気になってしまっているのか。
外見のコンプレックスからでしょうか。性格的なコンプレックスでしょうか。それとも過去になにかショックなことがあったからでしょうか。
どれを選んでも間違いではありませんが、ここで翻って考えてみるべきは、このキャラクターはどういうストーリーの中で動くことになるのかということです。
前回のプリントのジャンル分けの項目をふたたび持ってきてみましょう。
今度は前から七番目の番号をひいてみます。
1.探偵もの
2.未来世界もの
3.異世界もの
4.学園もの
5.時代もの
6.恋愛もの
7.ホラーもの
8.魔法もの
9.宇宙もの
0.アクション・戦争もの
1.の探偵ものと出ました。
さらに性別を後ろから一番目と二番目を足して一の位の数を取ってみました。
1.男性 2.女性 3.その他(無性、両性、中性など)
2.の女性と出ました。
できたキャラクターのアウトラインは以下です。
「探偵ものの登場人物で、弱気で内気すぎる女性」
というものになります。
「探偵もの」と全体を規定すると、基本的に。物語は「事件が起こってそれを探偵役のキャラクターが解決する」という形になります。
彼女がたとえば依頼人として登場する等のゲストキャラであればまた違ってきますが、ここでは、あくまで彼女がメインキャラとなるということで話を進めます。
その上で、この「弱気で内気すぎる女性」がそんなストーリーにかかわるには、やはり逆に積極的に事件に飛び込み、事態を引っぱっていくようなパートナーが必要になってきます。
「弱気で内気」の反対はなんでしょう。「強気で外向的」という感じでしょうか。
この「弱気で内気」な女性が「あっあっ、待って待って」とか言ってる間に、彼女の手をつかんででもどんどん事件に首をつっこんでいって、にっちもさっちもいかなくなってしまうような猪突猛進型のキャラクターが、彼女のパートナーとしてはふさわしい、と思われます。
さらに言えば、一本の長編として話を考えた場合、このストーリーの中で、彼女がかかえている欠落である「弱気・内気」という部分を、脱却するような出来事がほしい。
弱気でいつもなにもできずに震えている彼女が勇気をふりしぼり、いつも助けてもらってばかりの強気で無鉄砲な相棒を救い出すような展開があれば、彼女というキャラクターは強くなり、受け手の印象に強く残るキャラクターになります。
もう一度振り返って、彼女が「弱気で内気」なのはなぜなのか考えてみましょう。
なおかつ「探偵もの」であるこの話で起こる事件の根幹には、彼女が「弱気で内気」になってしまった原因が絡んでいるのが、この場合望ましい。
とすると、たとえば事件の根幹に、彼女の育った環境が絡んでいる、という発想もできます。
彼女は旧家の娘で、厳しい祖母に厳格に育てられました。両親は支配者である祖母の言いなりで、ほとんど守ってくれません。厳しい祖母に押さえつけられて育つうちに、彼女はすっかり内気で、自分の意見もほとんど言えないような女の子になってしまいました。
そんな彼女の唯一の友だちが、クラスでも有名な明るく元気な少女です。ひっこみ思案な彼女を引っぱって、少女はいろんなところで起こる怪事件に次々首をつっこんで回ります。元気すぎる台風のような親友に振り回されながらも、弱気少女と元気少女のデコボココンビは次から次へと迷推理?を披露し、その中で絆を深めていきます。
ところがぶつかった最後の大事件で、危機に陥った親友を救うためには、彼女はずっと自分を抑圧してきた祖母と対決し、生まれて初めて自分の意志を、祖母に向かって主張しなければならない事態になります。
あるいはすでに祖母は死んでいるが、その教育にまだ彼女が囚われている、という場合、決断できない自分に震えている間に、危機に陥った親友がどんどん追い詰められていく、という事態も起こりえます。
いずれにせよ、弱気で内気な自分を打ち砕くため、彼女は、これまでずっと自分を支えてくれ、助けてくれていた強気で元気な親友を、自分の力で助けるという決断を下します。
これによって、彼女はこれまでのモラトリアム(成長途中の宙ぶらりんな自分)を支えてくれていた親友という相手から脱却し、あらためて、対等な相手として友人と向き合うことができるようになります。
同じことは、彼女の相手側である元気少女のほうにもいえます。
彼女はとても明るく元気で、困っている人を見ると放っておけない女の子です。彼女が気弱な少女とかかわるようになったのも、はじめは、口ごもってばかりの友人もいない女の子が放っておけなくて、いっしょにいるようになりました。
ところがいっしょに過ごすうちに、元気な女の子は、弱気で内気だと思っていた少女の様々な点を発見するようになります。おおざっぱな自分では気がつかないところに目をつける観察力、ばらばらの事実を一つにつなげる洞察力、弱気で内気な彼女が人と摩擦を起こさないために身につけた、細やかな人間観察と心理洞察……
そんな時、彼女は持ち前の無鉄砲さから危機に陥ります。怖がる友人だけはなんとか逃がした彼女でしたが、助けに来てくれたのは、その弱気で内気なはずの友人でした。
自分が助け、守ってばかりいると思っていた内気な友だちでしたが、本当は、元気なはずの自分自身もまた、内気な友だちの思慮深さや優しさに助けられていたことに、彼女は気づきます。危機を脱して手をつなぐ親友同士は、お互いを守り守られ、支え支えられする対等な関係として、一歩新しい道を踏みだすことになるのです。
こうしてキャラに従ったストーリーのアウトラインを作り、こうした出来事がスムーズに起こるように出来事を並べて誘導していけば、一本の物語ができあがります。
これも急にやるのはなかなか難しいかもしれませんが、とりあえずは、
・主人公の抱える欠落(ストーリーの中で解決される問題)を決める
・パートナーキャラは主人公の欠落を補う能力や性格・才能を持つキャラクターである
・物語はかれらがお互いの欠落を補い合い、関係を進展させる筋書きの上で展開していく
という、この三点を頭に置いて、まず考えてみてください。
ではちょっとやってみましょう。
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