「ひーろーしょー」やるのです!

小咄よしひろ

第1話

ゆうえんちのステージに舞い降りて、博士と助手が代わるがわる言う。

「ペパプのライブの前座として『ひーろーしょー』をやるのです。」

「遊園地といえば『ひーろーしょー』なのです。」

「ジャパリ遊園地で僕と握手なのです。」

「ほほっほほっほ,いい顔してるね ほほっほ,ほっほっほ です。」

「ま~た始まっちゃったね、博士助手の強権発動」

ライオンはめんどくさそうに言う。

「そもそも、その『ひーろーしょー』ってなんだ?」

集まっていたフレンズたちの疑問を代表して、ヘラジカが聞く。

「ひーろーしょーとはですね…助手、説明してやるのです。」

「ひーろーしょーとは、ヒトの文明において遊園地や百貨店の屋上で「よい子」の皆のために行われるアクション演劇のことで、先ほど言ったヒーローたちによる『僕と握手』ができる催しのことです。その演劇中に「よい子」たちの声援が小さいとヒーローが舞台に上がれず、「よい子」たちは何度も呼び出しをさせられるという羞恥プレイが行われることもしばしばあったと記録されていました。」

「最後の情報のおかげで出演するほうも、見るほうも、俄然やる気がなくなったのだけれど…」

もともとやる気がないライオンはあえてつぶやく

「いいからやるのです。長の言うこと聞くのです。おーさ・ま・だ~れだ?」

「いや…そりゃあ、博士と助手だけど」

「よし、では役割を決めるのです。」

「ヘラジカ,お前は監督をやってもらうです。」

「おうさ!任せてもらおう。で、監督って何すればいいんだ?」

「とりあえず、そこの椅子に座って我々の様子を監督しているのです。」

博士と助手は後ろを向いて2人でこそこそと

「芝居とはいえ力加減のできないヘラジカを舞台に参加させるとケガ人が出るのです。」

「我々は賢いので、ちゃんと役割を与えておくのです。」


「台本はオオカミ、お前に任せるのです。」

「私はそんなに暇人じゃないんだけどね」

「ギロギロの次の原稿待ってやるですから,素直に従うのです。」

「これを参考にするのです。」

博士助手はそう言って、1冊の本(てれび絵本)をタイリクオオカミに渡す。

「プレーリードックやコツメカワウソにもわかりやすい設定で、且つ我々のような賢いものにも納得できる内容で頼むのです。」

「ちょっと注文多すぎないかい?『オーダーきついっすよ』」って感じかな?」


何はともあれ、後日タイリクオオカミによる台本が出来上がり、配役が発表されステージの上に呼ばれたフレンズが上がった。

――まず、ワイルドジャガーにはジャガー

「右も左もわからんが、長(?)の命令なので仕方ないので頑張ります」

――ビーバーブルックリン2世にアメリカビーバー

「そんな大役おれっちには無理っすよ」

「応援してます!ビーバー殿」

プレーリーが観客席から声援を上げる。

「それはそれで、はずかしいっす」

「では、見てないふりしてチラチラ見ています!」

「同じ事っす」

――マキビシカメレオンにはパンサーカメレオン

「これは忍者っぽい、ていうか忍者そのものですね」

――ロックオーロックス役はオーロックス。駄洒落みたいなのです不本意なのです。

「大将!見ていてください!」

「お~がんばれ~」

――セイテンタイセイキッドにはキンシコウ

「あの…私普段からそういう活動しているんですが…」

「だったらアクション指導もお願いできますね。便利なのです。」

――以上の顔ぶれがヒーローで、そのヒーローたちは競い合って,凶悪犯罪者を捕まえるというものです。

メインの配役と大まかな内容の説明がタイリクオオカミから発表された。

「競い合うんすか?協力するんじゃなくて?」

疑問を口にするビーバー

「我々が図書館でたまたま見つけた本にはそうなっていたのです。」

「博士たちに資料として渡された本だけど、まぁ王道のヒーローものとちょっと毛色が違うものなのかもね。」

狼が補足する。

「ねーねー、きょーあくはんざいてなに?」

カワウソが質問する。

「犯罪ってのはね,バスを運転して家にぶつけて壊してしまったり,夜中にこっそりじゃパリまんを盗食いして,知らん振りをしたりすることさ。」

「ううう…わたし退治されちゃうのかなぁ」

青ざめるサーバル

「オオカミさん、サーバルちゃんをいじめないでください。そういうの良くありませんよ。」

「うわーん、かばんちゃんはわたしのヒーローなんだね」

かばんは続ける。

「それに博士さんも助手さんも、長だからって横暴が過ぎますよ。皆さん迷惑しています。」

「良いのです!横暴も我々長に認められた特権なのです。」

「そんなことばかり言う長には、今晩『料理』抜きですよ。」

「ぇ…それは…博士、ここはひとつ…」

「ぐぬぅ…この件は取り下げるのです。わがまま言ってごめんなさいなのです。」

―――――――――――ヒーローだ…

集められたフレンズたちは心から思った。

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「ひーろーしょー」やるのです! 小咄よしひろ @kobanasi_yosihiro

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