B組
☆
「えーそれでは時間になりましたので……音無&碧ペア、稲城&
城城コンビ。
ポケットに手を突っ込みながら考える。
さあ、どう出ようかな――
「決闘開始!」
「『アースクリエイト』――」
「『サンダーステップ』!」
瞬間。
どデカい彼、守城は詠唱。
次いで彼女、稲城の靴に稲妻が走り――凄まじいスピードで俺へと向かってくる。
……おいおいまさか稲城さん。
『雷属性』かよ!
「――『ライトニング』!!」
目の前。
両手に電気の塊が生成――それを俺の肩に。
「っ――」
「『サウンドノイズ』!」
それはほぼ同時だった。
俺の身体を雷が駆け巡り、『サウンドノイズ』が彼女に降りかかる。
普通なら雷属性の彼女は、耳を手で塞いで苦しんでいる所なんだけど無反応。
「『
「な、なんで効いてないの――!?」
「それはこっちの台詞でもあるよね」
一瞬で後ろに下がる彼女。
よく見るとその耳には、『耳栓』があった。
恐らく後ろの彼の魔法で生成されたそれ。当然の如く、その守城にも耳栓が装着されている。
「……『アイアンボール』!」
「うおっ」
そして隙を見逃さず、1m大の鉄球が迫る。
何とか避けたが当たれば終わりだなアレ。
「……稲城!」
「わ、分かってるわよ――雷よ、我が身に宿れ……『サンダーチャージ』!」
耳栓をしているからか、もの凄い大声で叫ぶ後ろの彼……守城。
そして彼女が放つ、詠唱付きのそれ。
次に来るのは――
「『サンダーボルト』!」
「……『充電』。そろそろヤバいかな」
「な、何で……!?」
そして、まるでビームのように迫る雷。
正直に言おう。
『相性』が良すぎる、彼女には。良い意味で計算外。
……こんなことなら家の使い古した電池持ってくるんだったよ、勿体ない。
満タン状態から更に充電してるから、もう爆発寸前。
「『
「ッ!? は、はやッ……!」
ポケットの中から手を通じ、脚に通電。
種明かしをしよう。
ずっとそこにあったのは、購買部で買った『単三電池』。
雷魔法を受けるたびに電力としてそこに『充電』していたのだ、異能の力で。
そして、俺は電池から両足に通電。移動速度を一気に上昇させた。
「わ――私よりも早い――なんで――」
「さっすが星丘。良い電池だからかな」
「――は!? ――何を――訳の分からない事を――」
「いや高かったんだよこれ」
「ッ……! 雷よ、我をもっと早く――『サンダーステップ』!!」
雑談しながら、雷の彼女との追いかけっこ。しっかりと後ろの彼も監視しながら。
……うん、アイツも俺を目で追うのに必死だ。あの様子じゃ音無には手を出さない。
「きゃあッ!?」
タイミングを見計らい、高速で逃げようとする彼女にこっそり足を引っかけてやると、そのまま壁まで突っ込んでった。
自身が制御出来るスピードを超えていたっぽいから、足元が留守だったんだろう。
……アレはもう起きないかもな。
「き、貴様! よくも稲城を」
「ふう……凄いね、器用なもんだ。地属性魔法で耳栓を作るとは」
「……フンッ、そんな下等魔法と一緒にするな」
「え?」
「俺の魔法適正は『鉄属性』――地属性と火属性二つを持って現れる特殊なもの」
「か、かっけぇ……凄いね」
「アイツはやられたが俺は倒れん、かかってこい
本心で褒めると、ちょっと嬉しそうな彼。
ドッシリとした体格と、その鎧もあってマジで強そうだ。電撃も殴打も効かなそう。
……でも。
一つだけ疑問に持ってほしい。
何で今、俺と普通に会話出来ているのか?
「………暴れて――『サウンドノイズ』!」
「な!? ぐッ、グオオオオオッ!!!」
耳を押さえ、地にひれ伏し……その巨体が咆哮する。
実は彼女との追いかけっこ中に守城の耳栓を優しく引き抜いておいたのだ。
恐らく俺を目で追うのに必死そうだったから、気付けなかったんだろう。
焦れば焦るほど周りの音って聞こえなくなるし。
おかげで背中に隠れていた音無のフル詠唱をぶち込めた。
異能をもっと引き出してアイツにも殴り勝つつもりだったが……彼女の無言の主張があったからお任せした。うまくいって良かったよ。ちなみに稲城の耳栓も途中でとってた。
「……」
「……」
壁に張り付いている稲城。
地面で倒れている守城。
そして、この静寂。
これが意味するモノは――
「……」
「……先生?」
しかし、勝敗を決めるその声は聞こえない。
ということは――『まだ終わってない』。
「ッ……こんな相手に倒れてたまるか」
「貴方達に負けるなんて、一生の恥よ……!」
起き上がる二人。
その目には悔しさと怒りが入り混じっている。
「そっか」
Bクラスだけあって耐久も高いようだ。
どうやらもう少しだけ、闘わなくてはいけないらしい。
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