試験、四日目
試験期間中、決闘までは教室で自主学習である。
結局朝から登校しなくてはならない、その代わり試験終了次第帰れるんだけど。
――「……アイツ」「卑怯だよな」「元Bクラスとかセケ―だろ」――
「……」
「気にすんなよ音無。これは俺に対しての目線だ」
そんなこんなで、試験四日目。
朝の登校中に掛かる声と嫌な目――おかしい、昨日完勝したはずなのに。
――「アイツ全然働いてなかったらしい」「ホントに『炎剣』倒したのか不思議なぐらい」「確か決闘後おぶってたんだろ? デキてんじゃねーのか」――
「……は?」
――「お、おい」「居るって」「逃げろ」――
思わず呟くと、そんな話をしていた集団はどこかへ消える。
……どうやら、面倒な事が起こっている様だった。
「あ、碧君」
「大丈夫。喚く奴らは結果で黙らそう」
「う、うん!」
音無の為にも。煉の為にも。
『省エネ』とかは、言ってられないか。
☆
「……ごめんねぇ、碧君。少し生徒の間で君に対して『よくない』声が出てて」
「はい」
教室。
ホームルーム終わり……梅野先生が、また申し訳なさそうに俺に話をする。
「元Bクラスの音無さんがEクラスに居るのって結構異例でね。それで半分抗議的な感じで降参してたみたいで……」
「はあぁ……やっぱそんなトコか」
心の底から出たため息一つ。
いや、元居たクラスとか関係無くEクラスなんだからしょうがないだろ。
「それでまた、その決闘した相手の子がね、君がほとんど闘ってなかった事を広めて……加えて不公平だって意見が大量に来てね」
「……」
俺が悪いのは分かる。
でも、面と向かって来れば良いものを。
魔法の才能を持つわりに小さいよホント。
「……で、俺に話し掛けて来たって事は何かあるんですよね」
「うん。校長の提案なんだけど、良ければ今日だけ、特例でBクラスと闘ってみないかって」
「えっ」
「断っても全然良いよ! 降参でもペナルティは無いから」
EからいきなりBですか。
でもAクラスへ一気に近くなる。
うーん、でもな。音無に相談かな。
「ちょっとタッグ相手に聞いて――」
「大丈夫、だよ」
「え」
Bクラス。音無が元居た場所……だからこそ、元クラスメイトと顔を合わせる事になるわけで、きっと嫌だろうと思ったのに。
彼女は簡単に頷いた。
「お、終わったら、あたま、撫でて……」
「良いよ!」
最近音無が色々要求してくる。構わんけど。
そしてジト目で俺達を見る先生。
「あのぉ……受けるって事で良いんですねぇ? それなら校長からの助言が……『もうちょっと碧君頑張ってね』とのことです」
……はい、頑張ります。
☆
「先生持ち物チェック」
「はい?」
「コレ持ってって良い?」
「え……え? これ? 別に良いけど……」
「ありがとうございます」
決闘場。
少し早めに音無と来て、ポケットの中身を先生に見せる。何てこと無い『日用品』だ。購買に売ってるレベルの。
そして――現れるBクラスの二人。
「……アレが私達の相手ね」
「フンッ、さっさと終わらせるぞ」
やはりというか、Eクラスに居る様な者とは格が違う。
佇まい、そして杖も普通のものじゃない。
一人は女、手に杖を……持っていない。
あるのは『足』。
見るからに装飾が施されているその靴は、きっと魔道具だ。
そしてもう一人。
男で、身体が大きい……というか太ってる。
それでも強そうだ。そして杖をコイツも持ってない。
あるのは『鎧』。同じく装飾が施されており、魔道具が防具の役割を果たしているのだろう。
「これでまた一勝……B残留は余裕そうね」
「気を抜くなよ
「ふん」
あ、舐められてる。
でも――コレまでの奴らと違って何か余裕があるな。悪口とか言わないし。
「『音無奏』……『対策』もしてる。余裕よ」
「あの異能は?」
「ふんっ、問題ないわ。『炎剣』を倒したとはいえ……アイツは私に触れさえ出来ない。作戦通りあの男を一瞬で潰す」
……一応、彼らの名誉の為に言っておこう。
今俺は、例の『イヤホン』で彼らの会話をキャッチし盗んで聞いてる。
かなり小さい声だ、本来なら俺達に聞こえてこない。
「でも……対策か」
「?」
「いいや。何でも無い、音無はよく敵を見ておいてくれ」
「うん」
「よしよし」
音無を馬鹿にする所か、むしろきっちり何かを企んでる。
これがBクラス……ま、やる事やるだけだ。
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