S.見上げる火


900:名前:名無しの落ちこぼれ

おい大ニュース大ニュース!!


901:名前:名無しの落ちこぼれ

ごめん多分それ俺も知ってる


902:名前:名無しの落ちこぼれ

我がFクラスではその話題で持ち切りだわ

なおその輪には入れてない模様


903:名前:名無しの落ちこぼれ

前代未聞らしいぞ


904:名前:名無しの落ちこぼれ

な、まさか異能持ちと異能持ちが全勝だとは

しかも『彼』はBクラス倒したらしい

なんでEクラスがBとやってんのかはマジで不明、前代未聞中の前代未聞


905:名前:名無しの落ちこぼれ

情報漏れるの早すぎwwwww


906:名前:名無しの落ちこぼれ

隠してる意味ねぇw


907:名前:名無しの落ちこぼれ

新聞部が噛んでるらしいぞw


908:名前:名無しの落ちこぼれ

明日張り出される新聞が楽しみだ


909:名前:名無しの落ちこぼれ

でも、正直言っていい? 異能持ち以外はしばらくミュート推奨 


910:名前:名無しの落ちこぼれ

俺も


911:名前:名無しの落ちこぼれ

俺も良いすか?


912:名前:名無しの落ちこぼれ

それじゃせーので


913:名前:名無しの落ちこぼれ


914:名前:名無しの落ちこぼれ


915:名前:名無しの落ちこぼれ







「『パイロキネシス』!」


「!? き、消えな――ああああああ!!」

「ッ――『ウィンドアロー』!!


一人を火だるまに、そして横から襲い掛かる高速の風の矢。

避けるのは不可能――身体で受ける。


「っ」

「ああクソ! 風よ、敵を切り付け――『ウィンドカッター』!!」


形成、飛んでくる大きなブーメラン型の風刃。風魔法は射出速度が早く、避けるのは難しい。

当たればタダじゃすまないのは分かってる。

でも、死んでしまう程じゃない。

こんな攻撃、タクマの時と比べたら全く怖くないんだよ。


「ぐあっ……まだまだ」

「『ホーリーヒール』!」


「ああクソッ鬱陶しい、『ウィンドアロー』!」


それに今は仲間も居る。

風刃は左腕に命中。

受け身の体勢で吹っ飛び、掛かる輝の回復。


そして彼は彼女へと照準を向けた。

飛来する高速の風矢だったが――


「『シックスフィンガー』!」

「……は?」


その矢は、彼女から現れた片翼によって『消える』。


《――「ねえ炎、ボクに魔法撃ってみて」――》

《――「えっなんで?」――》

《――「試したい事があるんだ」――》


あの、魔法練習場での出来事だった。

輝の異能である翼。

それに触れた魔法は……まるで吸収されるかのように消えていくのだ。


ただ限度はあるらしく、何回か繰り返すと『嫌な予感』がしたらしい。

その先は試してないし、試す気も無かったが。

正直俺のより未知数で、かつ強力だと思う。


「――『パイロキネシス』!」

「!? や、やめ――降参降参!」


呆気に取られる彼へダッシュ。

発火しようとすれば、そのまま降参。


「――勝者、土石&真野ペア!」





「やったー!」

「……マジかよ」


飛び跳ねて喜ぶ輝。

どちらかと言うと戸惑いが先に来る俺。


結果。

俺達タッグは四日間全勝。


……これ、夢じゃないよな?



「夢じゃないよな?」

「夢じゃないよ、ほら。むにー」


決闘後に話すオレ達。

自分の頬をつねって笑う輝。

こういう時、オレの方をつねらないのが彼女っぽくて好きだ。


……輝がペアで良かったよな。

回復魔法もその翼も、自分には贅沢過ぎるタッグ相手。


「ボク達、もうD組以上は確定か。何か実感沸かないね」

「確かに。次の相手は誰なんだろうな」

「例年通りなら、ボク達DEFGの中で全勝同士が当たるらしいよ。そこに勝てばC組確定」

「……全勝同士かー」


呟いて、気付く。

ん? 全勝?


「あ、気付いた? ボク達の次の相手」

「まさか」

「掲示板でも話題になってるよ。ほら」



916:名前:名無しの落ちこぼれ

うおおおおおおおおおお!!!


917:名前:名無しの落ちこぼれ

異能持ち、散々馬鹿にし奴wwww


ざまぁ見ろWWWWWWWWW


918:名前:名無しの落ちこぼれ

無用の長物とかゴミとか好きに言いやがって!!!


今星丘じゃ、大半の奴らより異能持ちの彼らのが強いんだわwwwww


919:名前:名無しの落ちこぼれ

星丘のEDFG組のトップは!! 異能持ちでーす!!!!

しかも圧倒的に!!! 明日のトップ対決は異能持ち両方でーす!!


920:名前:名無しの落ちこぼれ

うおおおおおお!!


921:名前:名無しの落ちこぼれ

うれしぉ


922:名前:名無しの落ちこぼれ

ありがとーーーーーーー 名前言えねえけど!!1


923:名前:名無しの落ちこぼれ

異能持ちの俺にとってはもう偉人だ


頑張ってくれーーーーー!!


924:名前:名無しの落ちこぼれ

このままAクラス入りすりゃ伝説になるぞ!!


925:名前:名無しの落ちこぼれ

一週目最終日はもうどっちが勝ってもいいや!!!!

ただあの無口っぽい子が可愛いのでちょっとだけ『彼』を応援しますぼくは!


926:名前:名無しの落ちこぼれ

本当にありがとう おかげでイジメてくる奴ら引いてったわ


ちな俺は『天使』ちゃん応援してます!! でもどっちが勝っても良いよ!!!


927:名前:名無しの落ちこぼれ

ありがとーーーー!! 今度会ったら握手させてね


928:名前:名無しの落ちこぼれ

他人の事だろうけど自分の事のように嬉しい


929:名前:名無しの落ちこぼれ

本当、ココ作って良かったよ




そこには、称賛の声があった。

考えられないけど――どうやらそれは俺達へのもので。


「炎はね、ボク達を変えてくれたんだよ」

「……俺はただ必死にやっただけで」

「事実君が居なければ、ボクは学校を辞めてた」

「それは――」

「ねぇ炎、気付いてよ。自分を褒めてよ! 誇って良いんだよ!」


優しく笑う彼女。




「君はもう――僕達の憧れなんだ!」




……駄目だ。

そんな事言われたら。



《――「よう『ハズレ』!」――》

《――「お前なんかが星丘って……」――》

《――「どうせすぐ落第だろ」――》



中学の頃から掛けられてきた言葉。

期待なんてされなかった。

応援の声を掛けてくれるのは親だけだった。


こんな俺に。そんな自分に。

そんな眼差しを己に向ける人が出来るなんて――夢にも思わなかったんだ。



「っ……駄目だな。まだ試験途中だってのに」



自然と涙が溢れてくる。

オレは、タクマに勝ったあの日から――こんなにも変われたんだ。



「ボクも嬉しくなっぢゃうよぉ……」

「もらい泣きかよ」


そしてこんな彼女に出会えたのも。

全ての始まりは彼で。


「明日は、碧さん達と当たるかもしれないのか」

「……うん」

「まずは礼を言わないとな」

「そうだね!」



明日当たる『憧れ』へ。

俺は――拳を握り混んだ。

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