エピローグ:小さな火


601:名前:名無しの落ちこぼれ

……なあ、何か今日スゲー喧嘩があったらしいぞ


噂じゃ退学者でるとか


602:名前:名無しの落ちこぼれ

ま? つぶしあえー! 


603:名前:名無しの落ちこぼれ


604:名前:名無しの落ちこぼれ

俺達の学園ランクがまたあがっちまうなあ!


605:名前:名無しの落ちこぼれ

フハハハハハ


606:名前:名無しの落ちこぼれ

下位なのは違いないけどね


607:名前:名無しの落ちこぼれ

下位っつーか地面に埋まってる


608:名前:名無しの落ちこぼれ

毎日踏まれてます###


609:名前:名無しの落ちこぼれ

俺達本当よくココ入れたよな 普通異能持ってたら即入学拒否だろ

魔力量も魔法適正も異能あったらゴミだし


610:名前:名無しの落ちこぼれ

ここの理事長が異能持ち生徒を増やしがってるからな


実際もう星丘って下振れだし

新たな風が俺達って訳よ


611:名前:名無しの落ちこぼれ

どうも新しい風です(照れ)


612:名前:名無しの落ちこぼれ

おい大ニュース!!!! 


何か喧嘩してたの異能持ちとあの学年八位の弟らしいぞ!!

あの『氷眼』の弟!


613:名前:名無しの落ちこぼれ

ま?


614:名前:名無しの落ちこぼれ

え、でどうなったの 異能持ちの方死んじゃったとか言うなよ


615:名前:名無しの落ちこぼれ

三対一で異能持ちが最終的に勝ったらしい

動画もネットに一瞬上がったけどすぐ消された

ただ最後まで異能持ちがずっと耐えてて、最後の最後に逆転した


616:名前:名無しの落ちこぼれ

え? 三対一って一人の方が氷眼の弟だよな?


617:名前:名無しの落ちこぼれ

いやそれだとおかしいだろw 三人の異能持ちが結託でもしたのか?


618:名前:名無しの落ちこぼれ

いや、異能持ちが一人の方だよ……


619:名前:名無しの落ちこぼれ

それって例の転校生?


620:名前:名無しの落ちこぼれ

いや違う、Gクラスの生徒らしい 


621:名前:名無しの落ちこぼれ

……もしかして異能って凄い?


622:名前:名無しの落ちこぼれ

んなわけねーだろ 常識的に考えて

つーかそれならもっと俺達優遇されてるし


623:名前:名無しの落ちこぼれ

変な夢見させんなよ……


624:名前:名無しの落ちこぼれ

異能なんて無用の長物、それがこの世界の常識だからね





「……まさかもう広まってたなんてな」



昨晩見た、掲示板の過去ログを思い出す――今更オレがやりましたなんか言えないな。


アレからオレはぶっ倒れて……ほぼ一日寝ていた。起きた時には既に病室で、全てが終わっていたんだ。担任の先生から電話で聞いたところによると、何者かが一部始終を動画で撮っており、怖くなって先生に助けを呼びに行き……帰ったら倒れたオレと何者かに縛られた不良共が待機していたと。


結果として……タクマは退学。残りの取り巻きも退学に近い停学らしい。

そしてなんとオレは処分は停学一日である。

これでも先生からは謝られ、激励の言葉を貰ったぐらいだ。ぶっちゃけ一日ぐらいならどうってことない。


《――「本当に、普通なら一週間程通院して貰うんだが……びっくりしたよ、一日でほとんど完治だ完治!」――》


《――「は、はは……」――》


魔力は切れ、身体は傷だらけだったはずなのに……何故か治りが驚異的だったらしい。

身体に貼ってあった大量の絆創膏の事を聞かれても何も答えられなかった。


明確な答えは無い。でも――きっと。

彼だった。最後の声はあの優生だった。

恐らくその絆創膏も彼の異能のモノだろう。


オレはまたアイツに助けて貰ったんだ。

今こうして、一日ぶりに学校に登校できているのも彼のおかげ。

まるで入学したての頃のような清々しさである。


「……お、おいアレ」

「タクマを退学に追い込んだっていう」

「何か燃やされたらしい……つかなんで学校来れてんの?」


そしてまたアチコチから飛んでくる声。

なんつーか。優生みたいで気分が良い。


ってそうだ! 

アイツを探して礼言わなきゃ!


確かEクラスの教室に入っていくのを見た事がある。

って事はもうそこに――


「――いないし。待つか」


適当に、階段前の廊下で立って彼を待つ。

なんて話し掛けるか。

『絆創膏助かったよ』、とか?



「……」



『あいつらなんてお前じゃ余裕だったか?』

『もっと早く来てくれよ』

『どうして助けてくれたんだよ』

とか。



『お前みたいになるにはどうすれば良い?』

……とか。



「っ――!」



考えているうちに、眠たそうな目で登校する優生が階段を上ってきた。


でも。


「――ぁ」

声を掛けようとしても声が出ない。


「っ――」

走りだそうとしても、全く身体が動かない。


言いたい事は沢山あったのに。

結局お礼一つも伝えられず――彼は教室へと入ってしまう。


「やっぱ無理か」


……分かってるんだ。

自分はもう、アイツに『憧れ』を抱いている。

そんな存在にオレ程度のヤツが声を掛けるのが申し訳無くて。


だから。

オレは、もっと強くなる。

彼のおかげで目覚めたこの異能と共に。


自信を持てたその時には、彼へ礼を言う事にしよう。

何時になるかなんて分からないけど、やるだけやってやるさ。



「……行くか」



その手の小さな火と共に。

オレは、アイツに背を向けた。



▼作者あとがき


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