隣席の少女編
プロローグ:隣席の彼女
『キーンコーン……』
これで一体何回目だろうか?
いいや、多分まだ十数回目だ。大した数じゃない。
この星丘魔法学園の授業にも慣れてきた、慣れてきたと信じたい所。
二日目の昼休憩、周りは学食やら弁当やらで騒々しい。
ちなみにこの前、助けを呼んでる奴が居たから付いてったら学内で人が倒れてた。
アタフタしてた不良っぽいヤツをロープで捕まえて、倒れてた奴は治療したけど。
マジでココの治安大丈夫?
「はぁ」
ため息を一つ。
……あの決闘の後からは、誰も俺に絡んでこなくなった。
『裏口入学』『卑怯者』……そんな事を言う者もいない。
が。
結局俺が避けられている真実は変わっていない。
軽蔑から、恐怖に変わっただけだ。
「友達欲し……」
もうホントキツい。
煉は何か俺の事避けてるし。イジりすぎた?
その割には結構嬉しそうだったんだけど。
何にせよ毎日の学校が辛いです。
寂しい。泣きそう。
「……」
そういえば、この隣席の少女は変わりない。
ヘッドホンを着けて、ずっと同じ顔で居るように思う。
本当に不思議で、何を考えているか分からない。長い前髪で表情も分かんないし。
教壇に置いてある座席表でチラッと名前を見たから分かるんだが――名前を『
名前からして音楽好きそう。
「なあ、聞こえてるか?」
俺は隣席にそう声をかける。
いくら遮音性が高くたって、意外と人の声は聞こえるはずだ。
「……っ」
ほんの少し反応した。
唇を噛んで――俺から背くように、顔を俺でない方に向ける。
うーん。好感触の真反対。
「ごめんね」
嫌だったかな。
一言謝って、俺は彼女から目線を戻す。
☆
昼食はスマートに。
適当に買ったパンを食べ終わり、俺は鞄を探る。
取り出したるはミュージックプレイヤーとイヤホン。
前の学校でこんなモノ持ってきたら一発アウトだったが、『ここ』は別だった。
星丘って良いところだね。
こちとら早すぎる授業スピードで脳みそパンクしそうなんだ――って事で。
「……」
イヤホンを耳に突っ込んで、俺は机に突っ伏す。
お気に入りの音楽を流しながら、意識を落としていった。
……ん? そういや、音無もヘッドホン着けてるって事は音楽か何かを聴いてるって事だよな。
それを知ればきっと良い話のネタになる。
話してくれるかは別として、自分が興味のある事なら食い付いてくる可能性はあるはずだ。
……でもこれ、完全に盗聴じゃない?
悪用しようとしているわけではないが。仲良くなりたいからなんだけど。
……。
仕方ない、友達になれそうなクラスメイトは彼女しかいないからな。
我ながら必死である。ぼっちは辛いんだ。
「よいしょ」
俺はイヤホンジャックを抜いて、それを音無に向ける。
まるでそれはアンテナの様に。
彼女が聞いている音をそっくりそのまま俺の耳へ。
「『
俺は、異能のトリガーを引く――
――『俺と、友達になってくれないか?』
――『俺と、友達になってくれないか?』
――『俺と、友達になってくれないか?』
「……は?」
瞬間。
聞こえたのは――過去の俺の声だったのだ。
……それも超絶高音質の。
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