決闘②
『神楽煉』とやらが到着して数分か。
俺に威勢良くしていた強面二人は、煉の傍にずっと居た。
《――「オイ。言ってた条件と違うじゃねぇか」――》
《――「す、すいません!」――》
《――「あんな野郎がココに居るのが、俺達我慢出来なくて」――》
挑発でもしてくるかと思ったが、あの様子を見る限りあの二人は煉の『舎弟』な奴だろう。
ちなみにさっき、その彼女に怒られてた。二人とも顔面蒼白。ざまぁねえな!
・――「おっ、アレが噂の」「確か『碧優生』だっけ?どこかで見たことあるような名前……」「一対三だろ? 大丈夫かよ……しかもアレって、あの『炎剣』じゃ」――
決闘場は大きな体育館のような場所で、上には観客席のような場所がある。
そしてそこに――ワラワラと人が集まってきていた。
正直ガヤが鬱陶しいが別に良い。
どうせすぐに終わるから。
「えーっと、それじゃ決闘の立会人を行わせて頂きま――」
「さっさと始めな」
「は、はい!はじへ……始めさせて頂きます!」
赤髪の彼女――神楽煉がそう言うと、立会人の眼鏡少女は顔を白くする。
噛んでるし。
「指定の位置に着いて下さい……お互い、準備は良いですか?」
「ああ」
「おう」
俺と煉、加えてお付きの二人が頷く。
「それでは両者――始め!!!」
☆
「地よ、敵へ土塊を! 『アースブラスト』!!」
煉の舎弟であろう強面が、恐らく五回目位の詠唱を完了させる。
無から現れる土の塊が俺の顔面に――
「ぐっ!」
構わず受ける。
めっちゃ痛ぇ!
衝撃で俺の身体は地面を転がり、やがて止まった。
「……何の、つもりだ?」
ボロボロになった俺を見て、そう言う煉。
見たまんまなんだけどな。
俺は決闘が始まってから――三人に攻撃を全くしていない。
されるがまま、ってやつだ。
あー疲れた。もうこれで十分だろう。あの二人の気も済んだ事だろうし。
異能で反撃? 疲れるから無し。
こんな奴らに使うほど俺の体力は無駄にできません。
時代は省エネ。
「お前らの勝ちだよ、決闘は……これでいいか? 立会人さん、降参だ降参」
「えっ!?は、はい!勝負あり!!えっと、只今の勝負、『碧優生』の降参により、勝者は――」
立会人の宣言を耳に流しながら、俺は決闘場の出口へと歩き出す。
早く帰りたい。
疲れたし、帰ってダラダラしないといけないしな。
授業のせいで頭がパンクしそうなんだよ。
――――「何だよ、アレ……」「やる気あんの?」「つまんねー」――――
嫌でも耳に入るガヤ。
鬱陶しいが反応する程でもない。
「テメエ、ふざけてんのか? 悔しくねえのか?」
「俺の目的は『決闘を受ける事』だけだ。勝ち負けはどうでもいいんだよ」
煉の声に振り向く。
あの時の約束。
それに、『決闘に勝利する』なんて言葉は全く無かった。
「……ッ!」
驚く表情をする彼女。
少しだけ気味が良い。
「じゃあな――約束は守ってくれよ」
「おい、待て――」
返事を待たずに、踵を返す。
さっさと帰ろう。
――「おい、もう終わりかよ!」「何だアイツ」「転校生がどんなもんかと思ったら……」――
鬱陶しいガヤを聞くのも終わりになりそうだ。
「煉さん追わなくて良いですか?」
「……ああ」
「ですよね!! あんなヤロー、関わるだけ無駄っすよ!」
出口間際、そんな会話が聞こえる。
どうやら良い感じにあの舎弟共が進めてくれている様子だ、やるじゃん!
「それにしても――アイツ、本当に『
でも。
扉に手を掛けようとしたその時だ。
観客席からその名前が俺の耳に入った。
――「えっ、それマジなの?」「お前知らねえのかよ、ほら、アイツの苗字は『
その言葉は火種となり、燃え移っていく。
――「あの人の息子とは全く思えないよな」「異能持ちらしいよ」「魔法の才能、妹に全部取られたらしい」――
聞こえてんだよ、全部。
――「それでコネ入学? 必死過ぎでしょ」「親が可哀そうだよね」「ってか、そんな息子を『ここ』に入れるなんてさ」――
ドクン、と。
心臓の音が、木霊する。
――「アイツの親、相当頭オカシいんじゃないの?」――
扉に手を掛けた腕を手前に引っ張る。
この鬱陶しい音を消すよう強く。この怒りを少しでも消すために強く。
バタン、と大きな音を立てて扉は閉まった。
「――――おい、聞けよお前ら」
静まり返った観客席。
俺はそこへ声を向ける。
そいつら全員に届くように。
「魔法が使えないとか、『無用の長物』だとかは百も承知で事実だ。だからそんなもんどれだけ言っても構わねーよ。ただ――」
怒りのままに、声を発する。
「――母さんの事を、家族の事情も何も知らねえお前らが――俺の『誇り』を馬鹿にするんじゃねえ!」
もう後先考えられない。
コイツらをどうにかしないと、収まりがつかない。
「降りて来い、達観気取った
その先、声を更に大きくして。
「お前ら全員、
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