決闘、やり直し



「何だと?」



静まり返った決闘場。

俺に一番最初に反応したのは、煉だった。


「聞こえなかったのか? 俺に不満がある奴、全部相手してやるって言ったんだよ」


理解出来ない――そんな反応をする煉。

その意味が分からないと言うのならそれでも良い。



「……なあ、立会人。決闘の上限人数は?」

「えっ!? ……え、えっと、確か上限は無いはずだけど……でもそんなの、『普通』じゃ――」



さっきからチラチラ見てくる彼女に、そう問いかけると答えが返ってきた。

……なら全く問題ないな。

アタフタを繰り返している先輩は放置するとして。



「聞こえてるか観客共――三分間待ってやる、覚悟の出来た奴だけ降りて来い」



ざわつく観客席。

さっきまでの威勢はどうしたっての。


「三分後……全員纏めて決闘だ――分かったな? 来なかった奴は全員俺にビビッて逃げた臆病者って事でよろしく! じゃあな」


最後にそう投げかけて、俺は決闘場を出た。





外に出ればほんの少し冷静になれるか――そう思ったが無駄。

いいや無駄ではないか。あのまま観客席を眺めていたら、あの席ごと破壊したくなってしまう。


ただ一向にイライラは収まらない。

奴らへの怒りが、ずっと俺を支配している。

ただその元は、俺の誇りの親への侮辱。

無理矢理鎮めようとも思わない。


「もう時間か」


俺は扉を開けた。



「……へえ」



思っていたより、少ないか。

俺の目の前には、大体三十人ぐらいが立っている。

さっきまで三人だったのと比べるとかなり圧巻だ。

それでもまだまだキャパがあるのを考えると……この決闘場のデカさが際立つな。


「テメエ、本気なのか?」


その大人数の中、中心に立っている煉が言う。

周りの生徒達も同じような事を聞きたそうな様子だった。

そして立会人の彼女も、小走りで寄ってくる。



「て、転校生君、本当にこんな滅茶苦茶な決闘を――」

「本気だよ。こっちはすげーイラついてんだ」


「一応決闘の申請、受付は完了したよ。 ……いいんだよね?」



そう言うと、諦めた様な顔をする先輩。



「ああ」

「え、えっと……神楽さん達、三十一名全員も準備完了しましたか?」



頷く全員。

見れば杖のような物を構えている生徒達。

準備の出来ていない者もいるのか、構えておらずにいるものもいる。

とにかく数が多くてどれがどれか分からないな。


でも、関係ない。

全部まとめて相手するだけだ。

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