転校初日②
「疲れた……」
三限、四限と無事に授業が終わる。
頭が沸騰しそうだ。
『色々』あったせいで、心身共に疲労が半端じゃない。
ただ今やはり一つ言えるのは……友達が欲しいということ。
この全員俺の敵状態はマジで心に来る。
一人でも良いから、味方が欲しい。
「飯食いに行こうぜ!」
「りっちゃん放課後カラオケ行かない?」
「はあ疲れたー」
クラスに、廊下に響くその声達。
前の学校では気の合う奴らが結構居た。
だから友達も居たし、結構楽しく過ごせていたのだ。
それがどうだ?
俺の黒い噂が絶賛蔓延公開中。
何なんだよコネ野郎に裏口入学って。誰が言い出したんだ?
学校転入前からハードモード、いやベリーハードか。
これだと絶望的なんですが……
「……」
ずっとヘッドホンを着けながら無言で居る少女。一体何聞いてるんだか。
見てたら休憩の時ずっと一人だったし。
ぼっちが友達を作るには、同じぼっちが狙い目だ。
行こう!
「なあ、俺と友達になってくれないか?」
軽いつもりで、俺は彼女にそう声を掛ける。
聞こえているか聞こえていないか分からない格好だから本当に軽く。
「……」
無反応。
どうやら、やはり聞こえていないらしい。
いや聞こえてるかもしれないが、こんな『問題児』と喋れないか。
まして友達なんて。
「ごめんな」
無言の彼女に、俺はそう言う。
悲しくなんてない。
昼飯は適当に教室外で食うか。なんか気まずいし。
「よっと」
鞄を持って、俺は教室の扉へと向かう。
そういえばアイツら今は突っかかってこないな……。
寂しくなったわけではないけど。
☆
「――なあ、お前アイツに手貸したろ?」
「聞いてんのか?」
登校中に適当に買ったパンを持って。
教室の扉まで歩き、手を掛ける――その時。
左耳が捉える、俺の席の方からの声。……あいつらの声だった。
それは俺は聞こえるべきでは無かったのかもしれない。
「……はあ」
ため息一つ。
俺は、踵を返した。
見えた光景は俺の予想通り。
ヘッドホンの彼女を囲む男二人。
しかし、ただ一つ俺の予想を反した事が――
「――ぐあああ!」
「やめ――っ!」
その二人が、耳を塞いで悲鳴を上げている事だ。
静まり返るクラス。
急がなければ。
俺は、その中を早足で向かう。
「やりやがったなてめぇ! 学内の魔法使用は――」
「なあ」
「!?」
彼女と男達の間に割って入る。
突然だからか、かなり驚いた顔をしている男。
ヘッドホンの彼女の方はそこまでの様だが……
「この子と俺とは、何もねえよ」
「あ?」
「全くの他人だ。隣の席ってだけのな」
俺はそう続ける。
実際その通りだ。会話もしたことないんだぞ?
「だから俺がどうこうで、この子に突っかかるのはやめろ」
不愉快だ。
俺は誰かに軽く声を掛ける事も許されないのか?
とんだヘルモードだな……。
「ヒーロー気取りかよ」
「俺達はもうソイツに『攻撃』されたんだ」
「お前は関係ねえ」
……まあ確かに。
さっき明らかに彼女が『何か』をした。
「俺から頼む、さっきのは無かった事にしてくれ。元はと言えば俺が悪いんだ」
やむを得ない。
男達に頭を下げた。
「……どうする? 亮」
「まさか、タダで許してもらえるとは思ってないよな」
やっぱこうなるか。
ため息を我慢して、心の中で思いっきり吐く。
「で、俺は何をすりゃいいんだ?」
顔を上げて、金髪に言う。
ニヤつく顔が腹立たしいが何とか堪える。
土下座しろとか言われたら――ちょっと考えよう。
「亮、どうするよ」
「……やってやろうぜ、確か『
「なら決まりじゃねえか!」
「だな」
さっきからえらく勿体ぶるなコイツら……何か違う人物の名も聞こえたが。
何やら楽しそうに話す二人。
俺が催促の目でそいつらを見た時。
やっと、一方の口が開かれた。
「テメェ――『決闘』だ、拒否権はねえぞ」
「……は?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます