魔法都市①
『魔法使い』。
要人の護衛や、対テロ組織の戦闘員。
また世界に出没する『
そして例外なくその者達が扱うのが――
『魔法』。
この世界に存在する力の一つ。
身体に流れる魔力を消費し――自身に適性のある属性、種類の魔法が扱える。これが『魔法適性』ってやつだ。
火、水、風などの基本属性から始まり。
聖属性や時空間属性など――選ばれた血統の者にしか扱えないモノもある。
全人類が魔力を身体に保有するが、実際魔法使いとして生きていけるのはそのごく一部。
魔力量や魔法適性、その他諸々で格差があるから。
だが魔法は、血統どうこうで扱える者が限られるが……この広い世界だ。
同じ魔法適性を持つ者は絶対に一人じゃない。
そしてその対極に位置する力が――『異能』。
ソレを持つ者は極端に少ない。
百人に一人程の超低確率で扱う者が存在する、特殊能力が異能だ。
……聞こえは良い。
だが普通その特殊能力ってのは、手のひらに小さな火を宿したり1gまでの物体を1?浮かせたりと微妙なもの。
魔力は一切使わない代わりに、使用するとかなりの気力・体力を消耗するためろくに使えるものではない。
更に個人個人で能力が違いすぎるため、研究も進まず謎だらけ。
そして異能が、世界で『無用の長物』と言われている理由。
それは――それを持つ者の多くは魔法の才能が『吸われ』、魔力量が極端に少なく魔法適性もゴミ、魔法使いとしてはまず生きていけないと言われているからだ。
☆
「久しぶりだな」
二年程住んだ我が故郷……相野町から電車を走らせ三時間。
辿り着いたのは『魔法都市』。
あらゆる魔法に関するモノが集まる場所。
魔法協会、魔法研究機関、そして優奈の居る魔法学園など――つまり、俺とは無縁の場所だった。
昔は家族と住んでいたんだけど。
色々あって、俺はココから離れた。
「写真撮っとくか!」
ぱしゃり。
遠くに見えるデッカイ門、通称ゲート。
門の中には十の色彩が並び、色によってそれぞれの入場口が分けられている。
綺麗なんだよなこれ。
完全に観光に来た田舎者である。
よし、帰るか!
「身分証明出来るモノを」
「どうぞ」
「……うん。それでは魔力を登録するから装置に手を」
まあ行くんだけど。
ゲート前。
門番に持ってきた大量の書類を渡すものの――そんな事を言われた。
魔力証。
指紋や顔と一緒で……身体に流れる魔力ってのは、個人個人で違うものらしい。それを利用して認証を行えるのが魔力証である。
魔力も科学と同じで、日々技術が進んでいるんだ。
ビビ―!
「え、エラー?」
「多分それ俺無理ですよ。魔力ゼロなんで」
「は?」
「入って良いですかね」
「ゼロなんてことある訳無い! そもそも魔力が無きゃ立ってることすら――」
……その言葉は聞き飽きた。
そしてそれでも苛つくんだよ。現実を押し付けられてるみたいで。
「書類、ちゃんと見ました?」
「み、見たさ。碧優生、年は十六――」
「――そこじゃなく。『異能有無』の欄と『魔力測定結果記録』のページも」
「……こ、これは……見落としていた、通って良いぞ」
そう言う彼。
――「おい何かあったのか?」「いや、あの子供異能持ちで……」――
――「ははは、可哀そうに」「もっとヤバいのが、魔力ゼ」――
後ろから聞こえてくる声。
それが嫌で耳にイヤホンを差し込む。
こんなんだから、ココに来たくなかったんだ。
――ピコン!
『お兄ちゃん、水色ゲート前で待ってるね!』
鳴る着信、妹からのメッセージ。
ああクソ駄目だな、久しぶりに会う優奈にこんな顔を見せたら。
テンション上げていこう!
☆
水色の門を潜る。
それは一瞬。だが、長い距離を移動したのは分かる。
まるでエレベーターの様に、違う階層に移動した様な感覚だ。
目の前には、全く異なる光景。
魔法の最先端といえど――目に映る光景は現代のソレとほぼ同じ。
電車もビルもショッピングモールもある。そして今立ち寄ろうとしているコンビニとかね。
トンガリ帽子と箒は昔の話、現代文明万歳ですよ。
魔法の才に恵まれず、科学の道を切り開いた方々に俺は生かされている。
『着いた』
メッセージを送る。
ちなみにコレ、5回目ぐらい。
ずっと返信が来ない。トイレかな?
ジュースでも買って待っとくか――
「その、やめてください……」
「いいじゃんいいじゃん、可愛いなー、ちょっとだけ付き合ってくれたら良いんだって!」
「はは、照れてるの? いいからいいから」
コンビニの影で、女の子が一回り大きなグラサン男二人組に絡まれている。
女の子は黒い髪を肩の下まで伸ばし、幼いながらも凛とした顔付き。
何より特徴的なのは、冬の空を閉じ込めたような綺麗な淡い水色の目。
「……優奈じゃん」
魔法都市はその性質上治安が悪いと聞く。
でもまさか妹がナンパされている状況に遭遇するとは聞いてない。
「本当に、今待ってる人が居るんです」
「……ん? 彼氏か? ほっとけって」
「びびって出てこねえんじゃないの?そんなチキン野郎ほっといてさ」
「……せっかく一年振りに『お兄ちゃん』に会えるのに、それを、貴方達は……」
「あ?」
「良い加減観念して――」
喋る妹の口調が変化していく。やばいやばい、助けに行かなければ。男達の方を。
「――知ってる? サングラスってさ、日光から目を守る為にするもんなんだよね」
「!?」
「なんだテメ――」
男二人は、サングラスを目じゃなく頭の上に掛けていた。
もしかしたら宇宙人の可能性もあるが。
せっかくの遮光機能なんだ、活用しないと。
「『
「「……へ?」」
二人の目元、本来あるべき場所に優しく掛けてあげて。
俺は――その機能をより引き出した。
今彼らの視界は、暗闇へと堕ちたはずだ。
「目、目が――うっ!!」
「何も見えな――ぐあ!?」
そして順番に男の弱点へ蹴りを入れる。
大丈夫、手を離した時点で視界は復活してるから。
さあ後は逃げるだけ!
「……」
振り返れば、地面で悶絶する二人を軽蔑の目で見ている妹。
怖い怖い。俺なら絶対こんな目で見られたくないな。
あれ、なんでその目がそのままこっちに向くんですか?
「もうちょっとかっこいい助け方しても良いんじゃない?お兄ちゃん」
そう、こちらをジト目で見ながら言う優奈。
確かに女性が見ている前でアレは無いかも。
「すいませんでした……」
「そんな本気で謝らないでよ!」
一年ぶりに妹もからかった事だし。
『大事なお話』とやらを聞くとしようか。
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