日常の終わり

「――――――!!何故か隕石があろうことか! 宇宙へと帰って行きました!!」


「原因は不明! 今夜7時から日本魔法協会が会見を開くとの事!!」


「隕石は一体、どうしてしまったのでありましょうか――」



けたたましく鳴る電気屋のテレビ。

そこには俺の住む町を、遥か遠くのカメラが映していた。

緑がいっぱいで綺麗な所だね。守れて良かった。


「しんど……あ、もう無理。腕上がらん……」


平日昼間朝九時。

疲弊した身体を、引きずる様に俺の家へと連れて帰る。

家族? 全員数十キロ以上離れた場所に居るから無理だ。



――ピリリリリ!


突如となる電話。

もう電話を取る力も、言葉を話す体力も無い。

ほんとだよ。


「ただいま……」


鳴り続ける着信音をスルーしながら、重い扉を開けてトボトボと帰宅。


――ピリリリリ! ピリリリリ!


ああもうさっきの挨拶とドアを開けたせいで力無くなっちゃった。


「おやすみなさい!」

恐らく二日程俺は眠るだろう。

そういうわけでさようなら。


未来の俺、頑張ってくれ!





「何で出なかったの?」

「すいませんでした」


「何で出なかったの?」

「すいませんでした」


「……はぁ」

「何で出なかったの?」

「ふざけないで!!」

「すいませんでした」



恨むぞ過去の俺。

起きたら着信が100件+で溜まっていた。


怖かった。

それも――ほとんどの送り主が『碧優奈』だったから。


俺と違い魔法の才能に恵まれ、容姿端麗文武両道。そんな彼女の欠点が一つ。

非常に残念だが、彼女はこの出来損ないの妹だということだ。



「もう一度聞くね。お兄ちゃんでしょ? あの隕石打ち返したの」

「……はい」

「もしかしたら町ごと潰されてたかもしれないんだよ?」

「その時はその時だって」

「ふざけないで」


より一層低くなる彼女の声。

怖すぎる。

もう嫌な予感しかしない。


「こんな事は言いたくなかったの。それでも、家族で話し合って――次、お兄ちゃんが『やらかしたら』言おうって決めてたの……覚悟は良い?」

「良くない」


「良いんだね。それじゃ、これからお兄ちゃんには――」


聞こえてくる優奈の声。

通話口――飛び出してくる言葉は。



「――お兄ちゃんには、魔法都市にお引越してもらいます」


……は?



「……お兄ちゃん?」

「お兄ちゃーん」

「聞こえてるー?」

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