魔法世界の無用の長物《ユーズレス》
aaa168(スリーエー)
入学編
隕石襲来
『ピリリリリリリリリリ!!!』
「うるせえ!」
俺――『碧優生』は、縦横無尽に飛び回る目覚まし時計に遊ばれていた。
けたたましい鈴の音を止めようとするものの、まるで意思を持っているかのようにそれは動き回る。
「はあ……はあ……ったく」
それを止めた時には、もうすでに俺の意識は覚醒していた。
これが狙い?
「起きれたから良いか……」
呟きながら、『設定』しておいた目覚まし時計を見る。
今日は――絶対寝坊する訳にはいかないんだ。
別に俺が死ぬのは良いんだけど。
この街を潰される訳にはいかないからな。
☆
「行ってきまーす」
今日は平日、時間は朝8時。
普通なら学校に行く生徒達、会社へ行くサラリーマンなど。
決して人口が少ない田舎の『
しかし今日は誰もいない。
道だけじゃない、家にも、駅のホームにも。
この町には、俺しかいない。
「まもなく!! 相野町に!! 隕石が落下します!!!」
「予想被害範囲は市全体!! 避難はもう済んでいるとは思われますが!!!」
「落下の瞬間は!! 大きな揺れが起こると思われます!! 注意して下さい!!!」
またもけたたましく鳴る、町の電気屋のテレビ。
どちらかといえばこのアナウンサーがうるさいんだが。
……『それ』を観測した時点が昨日の深夜。あの時は凄い騒ぎだった。
なぜそこまで急なのかと言えば――それが決して自然現象ではなく、魔法使い集団によるテロ行為だったからだ。
前代未聞の事件だった。魔法による隕石自体これまで無かった上こんな田舎が標的なんだ、仕方ない。
対応できる人材も間に合わない……気付けばもう手遅れ。
そこに住む者達は避難する事しか出来なかった。
「ふう」
人気がない街を歩き、『観測』しておいた隕石落下地点に到着。
燃え上がりながら飛来してくるそれは中々の迫力だ。
魔法って凄いね。
「アレか……最悪マジで死にそう」
俺は――家から持ってきたお気に入りのバットを両手に持つ。
グリップは取れかけ塗装も剥げて、打芯は凸凹だらけ。
頼りがいのあるそれと空を交互に見る。
『ストライク』なら街壊滅。ついでに俺死亡。
『ボール』はここに立ってる地点であり得ない。
『ヒット』なら隣町に被害が出る。
『ファール』……デッドボール。街壊滅俺死亡。
つまり――『ホームラン』しかないって事だ。
「頼むぞ相棒」
観客も審判も居ない孤独のフィールド。
俺は無理矢理テンションを高め、やがて迫る隕石にバットを構える。
色々と準備しないと――
あ、また遺書書くの忘れた……
☆
「――――――!! 何故か!! 隕石があろうことか!! 宇宙へと帰って行きました!!」
「原因は不明!! 今夜7時から日本魔法協会が会見を開くとの事!!」
「隕石は一体、どうしてしまったのでありましょうか!!」
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