「退屈」という結構深いテーマを扱いながらも、それに対して悩んでいる様子を描くのではなく、悟りきったように受け入れている主人公の生活を淡々と描いています。最初は話の展開がどこに進むのかわからず、戸惑うかもしれませんが、読み進めていくうちに、その語り口にはまり、完結まで読み終えた後には爽快感を感じることができます。主人公や周りの人の変化を感じながらもう一度読み直してみたいな、と思った一作です。
「退屈」をめぐる、高校教師と女子生徒の物語です。 不穏な空気にみちた下り坂や、終盤にかけてたかまる緊張感、そして最後にひろがる風景と、スポットライトのあてられた場所ごとにちがう景色をみているうちに、気づけば物語のふかいところへといざなわれていました。 「退屈」にとらわれてしまう可能性は、きっと誰にだってある。そこからみえる灰色の景色に色をつけるのは、一人ではむずかしいかもしれないけれど、国立先生や千早先生、そして月島さんが見つけだした方法のために、人は言葉を手にいれたのだとおもうのです。
高校生や中学生を主人公にした小説やマンガ等の場合、大人として描かれたり、妙に子どもじみて描かれたりする教師。その日常と想いを等身大に描きつつ、人気者教師が抱える鬱屈とそこに忍び寄る軋み・誘惑がこれから描かれていきそう。期待します。