第2話君の名は?

俺はこんなの見に来たのか?


なんだか寂しくなった。


そんな中、黒いのが動きを見せる。


キョロキョロ。



キョロキョロ。


辺りを一通り見てから恐る恐るという感じでそのヘルメットに手を掛ける。


そして思い切ったように……


バッ。


ヘルメットを外した。


月に雲がかかる。


辺りが暗くなる。


でも見える。


彼女の顔は。


そこには人の顔があった。


ホッとした。


だって中から宇宙人とか出てきたらやじゃん?


別にお化けとかが苦手とかそういうのじゃないんだよ?


俺全然平気だよ?


お化けなんてないさっ……


俺が頭の中でそんなことをしている最中。


彼女はずっと深呼吸をしていた。


ずっとと言っても2、3回だが。


そして俺と目が合う。


やべ、目が合った。


少しためらってから、こちらに歩んできた。


彼女が俺から2~3m離れたところで立ち止まる


そこで月の光が彼女にかかった。


うわ。


彼女の容姿は普通に良かった。


てか、良い、すごく良い!


月に照らされて、綺麗に輝く花萌葱色の髪。


それは肩に掛かるくらい伸びていて、この世のものとは思えないほど美しいものだった。


ルビーの様に輝く、紅く大きな瞳。


まつ毛は長く、くっきりとした二重だった。


身長は、160cmよりちょっと小さいってとこかな?


遠目からじゃ分からなかっけど、確かに主張をしてくる胸。


まさに今、少女から大人の女になる途中ですよ〜と言う感じだった。


そんな彼女は、俺を興味深そうに見つめている。


「……な、なんすか?」


一様敬語を使うこの心配り。


だけど少しテンパった。


「ヌロア、トト?」


え? 今なんて?


英語じぁない、日本語でもない。


少しの「間」が彼女と俺の間に生まれる。


夜風が間をうめてくれた。


「トト?」


今度は少し声が大きかった。


とりあえずなんか言わないとな。


一応英語言っとく?


「は、はろー? はうあーゆー?」


やべ、変に緊張してカタコトになっちまった。


外人さんだったらめっちゃ恥ずかしい。


外人さんじゃあなくても同じだけど。


プルプル。


あれ?彼女の様子がおかしい。


「ハ、ハロー!?アガヨ!アガヨ、ネーヴ!!!」


彼女は自分の胸を押さえながら怒声?をあげている。


え? 何? 英語が伝わらないってことは分かった。


でも、何で俺怒られてんの?


じわじわと敵意が伝わってくる。


え? やらかした?


俺が全く状況をつかめないでいると、彼女が近ずいてくる。


後ずさる、だが後ろは、もうフェンス。


「……アザーニュ……」


彼女がそう小さく口ずさむ。


唇の動きが可愛いと思った俺は馬鹿だろうか?


おっと、そんなこと言ってられないんだった。


彼女の後ろには、どこから出てきたのか、俺のお腹なんて1発で風穴開けられそうな黒い槍のようなものが俺を狙っていた。だがそこへ…


「おい、君達! 危ないからそこから離れなさい!」


ナイスタイミングー!!


警察さん達が現れた。


気づけば道路には、パトカーが3台。


槍の矛先は警察官達に向いた。


と思ったら、声を出した警察官の腹に風穴が空いていた。


「は?」


バタッ。


警察官はわけもわからず倒れる。


「お、大原!!!」


その警察官達の足元には、もう血だまりができていた。


ぞっとした。


自分は果たして現実を見れているのだろうか?


そんな錯覚にさえ目を向けたくなる。


「ば、化け物ーー!!!」


残った警察官が震える声でそう言った。


パンッ。


警察官の1人が躊躇なく発砲する。


彼女は弾を弾く。


正確には槍が弾いたんだろう、たぶん。


槍は反撃しようとしたが、警察官の胸の手前で止まる。



どした?


「……」


そして彼女は、どこかへ走り去っていった。


逃げた。


その行動が俺は何も理解できなかった。


そして、一歩でさえ動くことが出来なかった。


なんだったんだろう?でも……


「た、助かった? のか?」


自分の鼓動がすごく速くなっていることに今やっと気づいた。


俺、近いうち死ぬんじゃね?


そんなことを思った…

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