Ⅰ ②


世界は徐々に変化を遂げていった。

 50年前に突如として現れた黒い影。その影はふらりと現れては人を喰った。ほかの生物にはまったく興味を示さずにただ人だけを。

 その影には通常の銃や剣は効果がなかった。唯一、対抗できるのは超能力みたいな力を持った人間だけだった。

 その力は黒い影を消し飛ばし、駆逐していった。その物たちは唯一の力を持っていることから保有者、ホルダーと呼ばれるようになった。

 しかし、その影は世界中に現れていた。いくら、対抗できる力があるとは言え、能力を持った者がバラバラに行動していては、被害は広がるばかりだった。

 事態を重く見た国連は黒い影に対抗できるホルダーを集め、国際的に戦える組織として『バベル機関』を設立した。同時に黒い影を幽霊みたいに現れ消えることから『ゴースト』と呼称するようになった。

 バベル機関は本部をスイスのジュネーブに構え、アメリカ、ロシア、中国、イギリス、南アフリカ、イタリアに支部を設置し、国際的にゴーストに対抗できる力を身につけていった。

 これにより、ゴーストと同等に戦える力を得たが、奴らがどこから現れ、なぜ人を襲うのかは未だにわかっていない。そのため、後手に回ることが多く、すでに長い年月が経っていた。

 その戦いに少しでも早く終止符を打とうと、日本支部は支部内に教育部を新設した。これは早いうちにホルダーをゴーストと戦えるために訓練し、戦力向上のためという目的のためである。

 そのうちの一つ、高等教育機関として天月学園を設立した。15歳以下の保有者。つまり高校生の年齢の保有者は半強制的に入学し3年間、ここで過ごし、卒業後は日本支部に編入するということになっている。半強制的でありながら、あまり批判の声が上がらないのは卒業後の進路が確定している上にその国際組織が保障してくれるという破格の待遇があるからである。

 以来、天月学園からは優秀な保有者を排出し、日本国内におけるゴーストの被害は減少し、今や日本は世界の最も安全な地域の一つになっていた。

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