第5話

短い旋律をつなぎ合わせていく。

いつの間にかKは一人部屋の中で作曲に没頭していた。

ドレミファソラシド

みたいな音階を刻んでいく。

「なぁB」

「何?」

「俺の曲」

「ん?」

「だから」

「何?」

「俺の曲聴いてよ」

「ん」

Kはピアノを弾く。見た目とは裏腹にすらすらと指が動く。

BはKのことを見ていた。

ゆっくりと旋律が刻まれていく。

部屋の空気を張り裂けんばかりに音が鳴る。

響き渡る。

「いい曲ね」

「ああ」

頭の中を旋律が突き抜ける。

遠くでKのことを呼ぶ声がした。

エドヴァルド・ムンクの叫びだった。

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