ぱーくへん

@ursus

???ちほー

 日が昇ったのかな、と思って、目を開けた。


 真っ暗な中に、何かが光っていた。でもそれは、お日様にしては小さくて、もっとやわらかい光で・・・


「・・・あなたは・・・なんのフレンズさんですか・・・?」


 大きくて、とてもきれいな金色の羽が、光って見える。鳥の子なら羽。サーバルちゃんが言ってたことを思い出す。


「鳥の・・・フレンズさん・・・ですか・・・?」


『私のことは、そう見えているのですね、では。』


 やさしい声、やわらかい光と同じくらいあたたかい声が聞こえた。


『不思議な場所です。』


 光が少し弱くなって、フレンズさんの姿が見えるようになった。羽と同じ金色の体、黒と赤の髪。変わった形の尾羽が四つ、体のまわりでふわふわしている。トキさん、ハカセさんやジョシュさん、アリツカゲラさんたちとは違うみたい。・・・あ。ここでぼくは思い出した。


「あの、今、大きいセルリアンが出て危ないですから、逃げてください。みんな、何とかしようとしてるけど、どうなるかわからないので・・・。」


 そうだ。あの黒いセルリアン。ハンターのヒグマさんやキンシコウさん、リカオンさんたちも困ってしまうような、大変な相手。このフレンズさんを危ない目に合わせちゃダメだ、とぼくは思って、そう言った。でも、そうしたら、そのフレンズさんは・・・


『かばん、あなたは最初に、自分ではない他の誰かを想うのですね。』


 とってもやさしい顔をして笑った。


『安心なさい、今、何が起こっているのかはわかっています。』


 フレンズさんがぼくの方に近付いて、話しかけてきた。羽の光がとてもあたたかい。


『今、あなたに起こっていることも。』


 フレンズさんが、少しだけ悲しそうな顔をした。・・・ぼくに、起こっていること?


『かばん。あなたは優しい。誰かを助ける為に、自分の身を危険に晒す事を厭わない程に。しかし、その優しさは今、確実にあなたを危機に追い込んでいます。このままなら、あなたは全てを失ってしまうかもしれません。』


 フレンズさんがじっとぼくを見る。悲しそうで、少し怒っているみたいに見える。でもぼくは、思ったことを言った。


「・・・サーバルちゃんや、フレンズのみなさんがいなかったら、ぼく、ここまで来られなかったです。みんながやさしくしてくれたから、ぼくはここにいるんだと思います。だから、ぼくも、みんなのために、やさしくしたいし、できることをしたいです。」


 そうしたら、フレンズさんはまた笑った。とってもやさしく、今度は、うれしそうに。


『自然にそう想えるというのがどれ程尊いか。そう想い、自らを失うことを恐れずに行動できることがどれ程尊いか。』


 フレンズさんが、すっと、ぼくの目の前まできた。やさしそうで、うれしそう。でも、ちょっと困ったような顔。


『でも、忘れないで。そんな優しいあなたを失った、皆の悲しみの事を。』


「あ・・・。」


 何も言えなくなってしまったぼくに、フレンズさんが声をかけてくれた。


『「パークの掟は自分の力で」。それならば、生きなさい、かばん。誰かを助ける為に、自らを危険に晒す事が悪いとは言いません。しかし、そこで自分を諦めるのはお止めなさい。どんな事があっても、生きるという事を決して諦めてはいけません。』


「・・・はい。」


『この場所と、この遣り取りの事は忘れてしまうけれど、あなたになら出来るでしょう。「頑張り屋さん」のあなたになら。』


 フレンズさんが笑った。今までで一番うれしそうな笑顔を見て、ぼくも笑ってしまう。


『さようなら、かばん。奇跡の「ひと」。他の時間、他の場所では生まれず、生まれても続かなかった幸せの可能性を持った、優しいあなた。』


 やさしい声と光が遠くなっていった。そして、その二つが消えそうになったに声が聞こえた。今までで一番やさしい声。


『お戻りなさい。あなたの優しさに、皆が答えてくれましたよ。』


 え・・・? どういうことですか、と、聞こうとしたけど、声が出なくて、体が動かなくて、すごく、眠くなって・・・

                    

                   ●


「あれ・・・サーバルちゃん・・・」


「あ・・・か・・・かばんちゃんだよね?! わかる?! いちばん最初に会ったときにしたお話覚えてる?!」


「あ・・・食べないでください。」


「食べないよ!」


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