第6話 会話に入るタイミング

  何故だろうか? 僕は家族との会話ではタイミングが分からないなんて事は無くすんなりと会話出来るのだ。思った事もとっさに口に出来る。

 その事をララに話すと

「波長かもしれないねです」

 と言った。波長か。なるほど。同じ時を多く過ごす事によって相手の波長を読みやすくなるし、大縄跳びに入る時みたいに一生懸命タイミングを見計らって、などと考えなくても会話に入れるのかもしれない。


「昔さ……」

 話しやすさついでに僕は、ララに会話に入るのが苦手だと意識するようになった理由を聞いてもらう事にした。


 小学生の頃、男子数人が自分たちがハマっているものだったか何かの話をしていた時、僕は最初は黙って聞いていた。

ふんふんと聞いている途中で、思わず僕も 意見を言いたくなり話し始めたところ、別の男子が喋ろうとしたところとかぶってしまったのだ。

 それと同じような事が、その後も他の子たちが話している時にまたまたあり。

 僕は意識した。“僕は会話に入るタイミングが下手”なんだと。


 それからというもの会話への入り方も分からなくなってしまったし、その延長で人と仲良くなる方法まで分からなくなってしまったのだ。


「周りを思いやるから。考えるから自分を萎縮する方へと考えたのかもねです。隆太は図々しくなれないから内に内にと入っちゃったのだと思うです」

「傷つきたくないという利己心だって強いよ」

「そんなの、皆あるよです。傷つきたくない思うの当たり前だよです」

「ありがとう」


 もっと頑張れと か、こうした方がいいとか言われるかもしれないと思っていたのにララは僕を肯定することばかりを言ってくれた。

 人との付き合いが分からず不安だったり怯えもあったはずの僕の心は、いつのまにか少しだけど勇気が湧いてくるようだった。

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